第15話 鉄鉱石
<お知らせ>
第2章28話「スニーク」では赤鉄鉱としていましたが、縞状鉄鉱床に変更しました。該当ページも修正済です。
ゴブリンメイジとゴブリンファイターの集団を倒したあと、何度か同じ組み合わせで会敵した。
一撃で倒すということは難しくなってきたけど、認識阻害(弱)のおかげで簡単にゴブリンたちに見つかることはなく、背後から1匹ずつ処理していくだけで難なく倒すことができている。
これが最も安定した狩り方だと思うんだけど、ひとつだけ不満があるんだよね。
それは、毎回、左手で口を塞ぐから、ゴブリンの涎やら、汗やら、垢なのか汚れなのかわからない黒いものがべったりと手袋にくっつくこと。
あとは上手く避けたつもりでも返り血が付着してしまうことかな。汗や垢がすえた匂いに、アンモニアやタマネギが腐ったような匂いが混ざった悪臭が左手に染みついてしまいそうで気持ち悪い。
私はナビちゃんに全身のウオッシュとドライをお願いしつつ、周囲を確認する。
坑道の中は下り坂になっていて、これまで続いていた石炭や砂岩、泥岩などで構成されていた地層の下に、まったく異なる色をした地層へと徐々に変化しているのが見てわかった。
(ナビちゃん、ここは?)
《地層が変化したのです。より深い層にやってきたのですよ》
(なんだか、とてもきれいだよね)
《そうなのです?》
とても優秀なAIが組み込まれたナビちゃんだけど、私の視界に映る美しいものを、私と同じように美しいと認識できるところまでは学習が進んでいないのかも知れない。
(……うん)
私の脳内に投影された景色は、赤と黒の世界。赤い岩の層、黒い岩の層が幾重にも重なっている。
地理のことはよく覚えていないけど、これまで掘ってきた砂岩や
でも、この赤と黒に混ざった岩って、現実世界のほうで見たことがある。
(ナビちゃん、採掘家に)
《はいなのです》
坂を下る途中、ちょうど視界中央の高さあたりに地層の境目がある場所まで移動して、装備を切り替えた。
同時にキラキラと光る採掘ポイントで辺りが一気に明るくなった。
<鑑定>
名前:鉄鉱石
説明:酸化した鉄を多く含む石。
鍛冶師であれば精錬し、鉄にすることができる。
品質:一般品質
やっぱり鉄鉱石だ。この地層は縞状鉄鉱床ってやつじゃないかな。海中に溶けていた鉄イオンが、光合成する生物が発生したことによって酸化して沈殿、堆積することで出来たんだよね。
泥岩の地層横にあったのは、なにかの原因で隆起した縞状鉄鉱床が……ゲームだからそこまで深く考えられてないかな。
とにかく、鉄鉱石を見つけたんだから採掘していこう!
私は手近にあった採掘ポイントに向けてツルハシを振り上げる。
《鉄鉱石を入手したのです。
採掘手帳No.16「鉄鉱石」が解放されたのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです》
金属同士を叩きつける甲高い音がして、赤と黒の縞模様の石が浮かび上がり、インベントリに吸いこまれていく。
《鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです。
鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです。
…………
鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです。
レベルが上がったのです。
採掘家レベルが17になったのです
鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです。
…………
鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです。
鉄鉱石(高)を入手したのです。
採掘経験値21×2を獲得したのです》
おおっ、黙々とツルハシを振り回していたら鉄鉱石(高)が採れたよ。
そういえば、鑑定したときに品質が表示されていた気がする。
一般品質の鉄鉱石と、高品質な鉄鉱石の両方をインベントリから取り出して見比べてみると、高品質な鉄鉱石は黒い部分が多くを占めている。
見た目は均等に近い感じで赤と黒の縞模様が入っている一般品質のほうがきれいだけど、溶かして精錬するときに採れる鉄の量は大いに越したことがないもんね。
ということは、より黒い部分が多い地層にある採掘ポイントで掘れば高品質鉄鉱石がたくさん採れる、ということじゃないかな。
キラキラと採掘ポイントが輝いていて見づらいんだけど、地層を舐めるように探していく。
より深いところへと坂道を下っていくと、黒い地層が厚く、赤い部分が薄いところを見つけた。
《鉄鉱石(高)を入手したのです。
採掘経験値21×2を獲得したのです。
鉄鉱石(高)を入手したのです。
採掘経験値21×2を獲得したのです。
鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです。
鉄鉱石(高)を入手したのです。
採掘経験値21×2を獲得したのです。
鉄鉱石を入手したのです。
採掘経験値20×2を獲得したのです》
どうやら、地層によって高品質な鉄鉱石の採掘確率が上がるみたいだね。
確か、アレンに言われた鉄鉱石の数は5つだったかな。採掘した数は十分だけど、これから戦狼の牙刀を凌ぐナイフを作るとしたら品質が良い鉄鉱石はたくさんほしいからね。
頑張って掘って行きますか。
「……ゴギャギャ」
遠くから、こちらに向かってくるゴブリンたちの声が聞こえてきた。
高品質な鉄鉱石の採掘方法を見つけたばかりだというのに、それを邪魔するように現れるゴブリンたちが本当に面倒くさい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます