第11話 北湖ダンジョン第4層
《コリアンダーシードを入手したのです。
採集経験値60×2を獲得したのです。
レベルが上がったのです。
採集家レベルが21になったのです。
コリアンダーシードを入手したのです》
そこらじゅうに花を咲かせている各種のハーブ、スパイスを集めていくとレベルが一気に6つも上がった。
私は採集する手を止めて、インベントリを眺めて唸る。
「うーん、これだとレベルが上がるのも当然かなあ」
そこには、火山島ハーブ園で採集したアイテムがずらりと並んでいる。
真麻×30
綿花×30
ラベンダー×20
カモミール×20
マスタード×20
クミン×40
バジル×20
パクチー×20
ウコン×20
カルダモン×20
バジルシード×10
コリアンダーシード×20
ゲームの中だから植生などは完全に無視されているんだろうけど、綿花や真麻を除くと、生えているのはカレーのスパイスが多い気がする。肝心な唐辛子や胡椒なんかがないからカレー作りは無理だね。運営もきちんと考えているようで、そんなに都合よくすべての材料が揃うというわけではないみたい。
《たくさん集めたのです》
(うん、真麻や綿花は裁縫師でたぶん使うだろうし、ハーブ類は調理師で使うと思うからね)
《アオイは賢いのです》
(いや、これくらいは誰でも考えると思うよ)
完全に調理師という生産職を諦めているなら必要がないものかもしれないけどね。
(じゃあ、第4層に向かうよ。スカウターに変更してくれる?)
《もちろんなのです》
いつものようにナビちゃんが返事すると同時、私の装備がスカウトセットSに変更された。
キラキラと輝いていた採集ポイントが消滅すると、辺りは一面の花畑に戻る。様々な色の花を咲かせた草原を進み、私は火山島ハーブ園の中央にある第3層の出口に向かった。
第3層の出口は火山の噴火口跡にあるけど、石造りになっていて少し違和感があるんだよね。とはいえ、火口があってそこに飛び込まないといけない、なんてことを考えると、階段があるのはありたがいことなのかも……。
そういえば、北湖ダンジョンの入口も石造りの階段を20段ほど下りた先が洞窟になっていたし、第2層から第3層も同じようになっていたよね。
と、いうことはダンジョンの各層は階段で繋がっている、というものなんだろうなあ。
20段ほど階段を下りた先で、再び洞窟の中に出た。
いや、これは洞窟というよりも坑道に近いのかな。木で作った枠が嵌めこまれていて、壁が崩れないようになっている。レールとトロッコがあれば、もっとそれらしい世界なんだろうけど、さすがにそこまで文明的に進んでいる世界じゃないみたい。
第3層から続く階段の隣には、フロアポートが佇んでいる。
いつものように手をかざすと、魔力が吸い取られてフロアポートが青く光った。
《ちゃんと登録して偉いのです》
(うん、次もまた断崖絶壁を登るなんてしたくないからね)
別に高所恐怖症じゃないし、しっかりと硬くて重い玄武岩の柱状節理を登っているとはいえ、100mくらいある断崖を何度も上りたくない。
でも、高所恐怖症のプレイヤーだったら足が竦んで動けなくなるかもしれないね。
それに、火山島に到着するまでの間、何もない海の上を移動するのも退屈だからね。
改めて周囲を確認しながら、私は歩きはじめた。
ダンジョンらしくぼんやりと壁が光っているが、第1層から第3層までの壁とは異なり、ところどころに人が削ったような跡が残っている。
(ナビちゃん、ここは洞窟というより坑道なのかな?)
《そうなのです。採掘家になれば採掘ポイントが見えるのです。採掘家になるのです?》
(うん、お願いします)
第3層にあった入口のところで装備を変えてもらったばかりなのに、なんだか申し訳ないと思いつつナビちゃんに返事をした。
瞬きをするていどの時間で、装備がビギナーギャザラーセットへと変わった。
装備が入れ替わると同時、私の視界は一気に変化する。
木枠で補強された坑道らしき道のあちこちに、採掘ポイントがキラキラと光っている。
「さっきまで薄暗い坑道だなあって思っていたのに……」
今は、照明器具があるのかと感じてしまうほど、明るくなっていた。
気を取り直し、近くにある採掘ポイントを眺めてみる。
<鑑定>
名前:石炭
説明:遠い昔の植物が地中に埋もれ、変質化したもの。
植物の化石の一種。
採掘:採掘家レベル15以上
へえ、こんなものが採れるんだね。
歴史の教科書などでは黒いダイヤモンドと呼ばれていたって書いてあった気がする。現実世界では石炭を使用した発電に用いたり、熱分解してつくったコークスで製鉄をしたりしていたって書いてあった記憶があるなあ。
学生時代のことを思い出しながら、私はツルハシを振るう。
《石炭を入手したのです。
採掘手帳No.15「石炭」が解放されたのです
採掘経験値17×2を獲得したのです
…………
……
レベルが上がったのです。
採掘家レベルが16になったのです。
石炭を入手したのです》
そこらじゅうに石炭を掘り出せる採掘ポイントがあるので、夢中で掘り返していたらレベルが上がった。合計で25個も石炭が手に入った。
「ゴギャギャッ」
「ゴギャッ、ゴギャゴギャ」
これくらい集めればいいかな、なんて考えていると坑道の奥のほうから何だか懐かしい声が聞こえてきた。
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