第3話 ウォーリーを探そう

 とはいえ、済ませられるクエストを済ませるために私はナビちゃんに従ってクエストの報告を済ませた。


《クエスト「風に舞った手紙」を達成したのです。

 初級治療薬×2を入手したのです。

 4,500リーネを入手したのですよ》 


 …………


《クエスト「町の地図更新」を達成したのです。

 初級治療薬×2を入手したのです。

 3,000リーネを入手したのですよ》 


 …………


《クエスト「やっぱり肉でしょう」を達成したのです。

 5,000リーネを入手したのです》 


 三つのクエストを完了させたけれど、レベルは上がらなかった。

 だんだんレベルが上がるのが厳しくなってきたけれど、私は経験値が2倍になる冒険者のピアスをしているからね。他のプレイヤーたちはもっとたくさんMOBを狩ってるはず。贅沢は言えないよね。


(残ってるサブクエストは、013番のウォーリーを探せっていうのと、未受注の017番だね)

《他にも漁師クエストの004番「海釣りを楽しもう」と、採集家の003番「蜂に刺されないように」の報告ができるのです》

(ありがとう。生産ギルドにも行かないとだめだね)


 とはいえ、今は生産ギルドは人でいっぱいだろうね。

 ローラさんの配信を介してたくさんの人に、ビギナーギャザラーシリーズを揃えるとスニークという効果があることを教えたんだもん。スニークがあれば採集、採掘、釣りの3つの職業はかなり楽になるはず。

 そういえば忘れていたけど、農家っていう職業もあったよね。


 とにかく、今のタイミングは生産ギルド――特にギャザラー系は混みあっていると思うから、まずはウォーリーを探して、ついでに残りの017番のクエストを探すとしますか。


 意気揚々と私は漁師のアンガーの家を出た。

 考えてみると、こんな山のなかで漁師をしているのだから彼も第三層で魚をとって商売にしているのだろう。

 その割には地図を埋めようと家に入ったときも、肉を持ってきたときも家の中にいたなあ。いつ仕事をしているんだろうね。

 まあ、ゲームのNPCなんてそんなものだと思うけどね。


 アンガーの家からテツコの家までは、結構な距離がある。途中で猫の集会をしていないか……と探しながら歩いてみるが、猫たちも常に集まっているわけではないからね。そう簡単に見つかるわけがない。


 結局、テツコの家の前に着いても、ウォーリーを見つけることができなかった。


《なかなか見つからないのです》

(そうだね。017番のクエストも見つからないし、どうしようかなあ)

《採掘家のクエストがまだ進んでいないのです。ダンジョン第4層で鉄鉱石を掘りにいくのです》

(いや、それって第三層をクリアしないといけない、ということだよね)

《そんなに強いMOBはいないから大丈夫なのです》

(そうなのかなあ……)


 ビーチサンドワームとまた会敵することを思うと少し憂鬱になってくる。でも、振動や匂いでプレイヤーを見つけて襲ってくるはずだけど、既にホバーボードを手に入れてるので、安心なのかな。


《テレポで町のポータルコアに飛んで、そこからブランチポートに跳ぶと早いのです!》

(じゃあ、それでお願いします)


 すぐにナビちゃんがテレポを起動してグラーノのポータルコアに移動した私は、そのままポータルコアに触れてブランチポートへの移動を念じた。

 町の間を移動するように、あっという間に北湖ダンジョンの入口に私は移動していた。


 北湖のダンジョン入口はたくさんの人たちでごった返している。

 ギャザラー系各職業のレベルを5にすれば、スニーク付きの装備が手に入る。そのためには、採集家と採掘家はどうしてもダンジョンに潜る必要があるからね。

 まあ、私のようにクリア済の人はそれぞれのギルマスから買うことができるらいしいんだけども……。


 などと考えていると、ブランチポートの前に10歳くらいだろうか。猫耳をつけた女の子が本物の猫を抱えてやってきた。


「あの、冒険者さんですよね。お願いがあるんです」


 まっすぐに私に向かってやってきて話しかけられた。

 私は少し身構えたけれど、相手の女の子がまだ子どもだからすぐに話を聞くことにした。


「ええ、Dランク冒険者のアオイといいます」

「あ、わたしはリリアです」

「か、可愛らしい猫ちゃんですね……」

「この子は野良猫のね、メガネちゃん。ほら、顔の毛の模様が眼鏡をかけているように見えるでしょう? だからメガネちゃんってつけたんだよ」


 メガネ模様がついた顔の毛に、白と赤の虎柄という珍しい組み合わせ。

 私は急いで簡易鑑定をかけた。


  <簡易鑑定>

  名前:メガネちゃん(ウォーリー、ベティ、ボスなど)

  種族:癒し猫


 私が顔を近づけて簡易鑑定をすると、メガネちゃんは不機嫌そうに横を向いた。それでも鑑定結果はすぐに表示される。

 どうやら、リリアの言うとおり本来は野良猫で、あちこちで違う名前を付けられているようだね。それよりも気になるのは。


(ん、癒し猫とは?)

《寂しがっている人、悲しんでいる人、怒っている人のところに現れては人々を癒す習性がある猫なのです》


 普通の猫と同じように撫でるような可愛らしい声をあげてウォーリーは鳴き、ナビちゃんに向かって猫パンチをくりだした。

 現実世界の猫も赤外線や紫外線が見えるとか聞いたことがあるから、普通には見ることができないナビちゃんに興味を持ったのかな。

 もちろん、ナビちゃんは華麗にそれを躱していた。


 それにしても、確かテツコは「ウォーリーはテツコが夫を亡くしたその日から現れた」って言ってたよね。テツコに寄り添って、癒しを与えていたんだね。

 ということは、このリリアって子も何か問題を抱えてるのかな。


「それで、私に声をかけたのはメガネちゃんを紹介するためなのかな?」


 私がそう話しかけると、リリアの目に一気に涙が溢れ出した。





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