第12話 採掘をやってみよう

「ゴギャッ!」「ゴギャギャッ!!」


 暗闇から2匹のゴブリンが現れ、私を目掛けてペタペタと駆け寄ってくる。


(ナビちゃん、スパークをゴブリンBに)

《了解なのです!》


 私が目を瞑って左手をゴブリンBに向けて翳すと、小さな魔法陣が現れて目の前が閃光がほとばしる。


 ――パアアアンッ


 空気を切り裂くような短い音が洞窟に鳴り響くと、ゴブリンBは高電圧の電流を受け「ゴギャッ!!」と声を上げ突っ伏すように倒れた。

 ゴブリンAも閃光で目が眩んで一瞬怯み、速度を落とす。そこへ駆け寄った私は左手のスチールダガーでゴブリンAの首筋を一閃、背後に回り込んで首筋に戦狼の牙刀を突き立てた。


〝Critical!!〟


 文字がゴブリンAの首筋から飛び出すと、戦狼の牙刀が突き刺さったゴブリンAはポリゴンと化して爆散した。

 続いて地面に這いつくばっているゴブリンBの首筋に狙いすまして戦狼の牙刀を突き刺して戦闘は終了した。


《ゴブリン2体を倒したのです。

 冒険者手帳「北湖ダンジョン」ゴブリン(5/5)を達成したのです。

 経験値3,000を入手したのです。

 冒険者手帳「北湖ダンジョン第1層」を達成したのです。

 経験値ボーナス1,500を入手したのです。

 240リーネを入手したのです。

 棍棒を1本入手したのです。

 ゴブリンの腰蓑×2を入手したのです。

 ゴブリンの魔石を2個入手したのですよ》

(スパーク、ありがとうね)

《ナビちゃんのおかげなのです》

「ふふ、そうだね」


 無い胸を反らすナビちゃんが可愛くて、つい笑みが漏れちゃう。なんだろう、少しずつナビちゃんとの距離が縮まってる気がするね。



 10分後、再び現れたゴブリン3匹との戦闘が終ったのを確認し、私は採掘家の装備に切り替えた。

 冒険者手帳の課題分済ませたから、私は今、採掘家クエストの「銅鉱はどこ?」をクリアすべく、鉱脈を探しているところだったりする。

 MOBであるゴブリンたちが現れたらスカウター装備にして倒し、倒してしまったら採掘用の装備に切り替えている感じね。


(ナビちゃん、あそこはどうかな?)


 私が指さしたところには、壁の一部が黄色く輝いている。まだ慣れていないから採掘ポイントなのかどうか、ナビちゃんに確認しておく。


《採掘ポイントなのです。道具を使って掘るのですよ》

(オッケー)


 私はビギナーマイニングセットからピックを取り出し、両手で振りかぶって先端を叩きつけた。


 カキーン、カキーン、カキーン……


 ピックの先端を叩きつけると、軽快な金属音と共にダンジョンの壁が削れてアイテムがインベントリの中に入っていく。


《鉱泉水を入手したのです。

 採掘手帳No.1「鉱泉水」が解放されたのです

 採掘経験値2×2を獲得したのです。

 鉱泉水を入手したのです。

 採掘経験値2×2を獲得したのです。

 鉱泉水を入手しました。

 採掘経験値2×2を獲得しました。

 レベルが上がったのです。

 採掘家レベルが2になったのです。

 鉱泉水を入手しました。

 採掘経験値2×2を獲得しました

 鉱泉水を入手しました。

 採掘経験値2×2を獲得しました》


 採掘手帳っていうのは、お魚図鑑みたいなものじゃないかな。たぶん経験値は関係ない感じだね。経験値が関係したらナビちゃんが教えてくれると思うし。

 とりあえずピックを5回振るっただけで採掘家レベルが1つ上がった。今までクエストをするだけでレベルが上がることが多くて、こうして作業をして経験値が上がるのがとても新鮮な感じがする。

 だけど、すべてが鉱泉水っていうのもなんだか寂しいね。


 インベントリを確認すると、瓶に入った状態で鉱泉水が保管されていた。

 瓶はどこから出てきたのだろう、と気になって鑑定を掛けてみる。


  <鑑定>

  名前:鉱泉水

  説明:ミネラルウォーターとも呼ばれる良質な水。飲用可能。

     硬度が高いため、治療薬には向いていない。

     料理、錬金術で使用する。

  品質:標準


 瓶の方はスルーされ、中身だけが鑑定された。


《瓶は、中身を使用すると霧散するのですよ》

(へえ、そうなんだ)


 ゲームの謎システムのことを考えたところで仕様がないよね。とっとと違う採掘ポイントを探すことにしよう。


 念のために装備をスカウターに戻し、しばらく歩いていると直径10ⅿほどの丸い部屋のような場所に出た。

 ダンジョン入口からずっと一本道だったので、ゴブリンたちはここにいたのかも知れないね。それで遠くで聞こえた私の声を聞いてやってきた感じなのかな。

 辺りを警戒しながら歩いていると、足元に落ちていた石が爪先に当たって転がって行った。あまり大きな音は出なかったから問題はない。でも、また蹴ったりすると音がしてゴブリンがやってくるよね。隅の方に転がしておこうと思って拾い上げてみると、緑色や黄色の混じった綺麗な石だった。


《小さな孔雀石なのです。近くに銅の鉱脈がある証拠なのですよ》

(へえ、じゃあこの辺りで探してみますか)


 拾った石を丸い部屋の隅に置くと、念のために索敵をかけて周囲にMOBがいないことを確認してから採掘家用の装備に切り替えた。

 一瞬で服装がビギナーシャツとビギナーパンツ、ビギナーブーツ姿になり、壁の一部が更に黄色く輝いて、視界に採掘ポイントであることを示しているのがわかった。


 ピックを振りかぶり、採掘ポイントに狙いをつけて振り下ろす。


 ――ガキンッ


 と、音を立ててピックが壁の一部を削り取った。だが、ナビちゃんが黙っているということは、何も採れなかったということだ。


(今のは失敗?)


 表面を削ったていどで、鉱石らしきものは採れなかった。


《採掘家の熟練度が足りていないので、未だ失敗率が高いのですよ》

(へえ、そんなものなのね)

《今、アオイはレベル2なのです。鉱泉水は95%の確率、銅鉱石は65%の確率で成功するのです。1つ銅鉱石を採掘できればレベルが上がり、銅鉱石の確率は75%になるのです》

(なるほど、成功率は採掘家レベルに依存するということね)


 確率が65%なら、3回に2回は成功するはずだから、気長に掘っていくことにしましょうか。


 カキーン、カキーン、カキーン……


 再び軽快な金属音と共に、インベントリに採掘した鉱石が吸い込まれていく。


《銅鉱石を入手したのです。

 採掘手帳No.4「銅鉱石」が解放されたのです。

 採掘経験値8×2を獲得したのです。

 レベルが上がったのです。

 採掘家レベルが3になったのです。

 採掘に失敗しました。

 銅鉱石を入手したのです。

 採掘経験値8×2を獲得したのです

 レベルが上がったのです。

 採掘家レベルが4になったのです。

 銅鉱石を入手しました。

 採掘経験値8×2を獲得しました。

 銅鉱石を入手しました。

 採掘経験値8×2を獲得しました

 レベルが上がったのです。

 採掘家レベルが5になったのです。

 銅鉱石を入手しました。

 採掘経験値8×2を獲得しました》


 おお、いい感じに採掘家のレベルが上がったね。ここまでくれば成功率は85%かあ。鍛冶や彫金などをするにも銅鉱石は使うのは間違いないと思うし、もう少し採掘したいな。それに、クエストで納める銅鉱石の数はたしか10個だったはず。

 でも、今まで採掘していた鉱脈らしきものの光が消えた。鉱泉水のときはは5回だったけど、この銅鉱石は失敗も含めると6回。採掘ポイントで採掘できる回数が違うのかな。


 周囲を見渡すと、あと3つくらい採掘ポイントらしき光が見えたので、そこで銅鉱石を掘れるだけ掘ってみた。合計で銅鉱石23個取れて、採掘家レベルが8になっちゃったよ。





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