第10話 クエスト・クエスト・クエスト(2)

 スザンネの店の隣は人が住んでいるみたいだけど、誰もいなかった。仕方がないので更に隣の建物に入ることにした。

 その建物は屋根の上にたくさんの鳥を飼っていた。


「ごめんください。テオさんに頼まれて白地図に住民を書き込むお手伝いをしているんですが」

「いらっしゃい。僕はペーターだ。伝書鳥が運んでくる手紙を配達する仕事をしている」

「ありがとうございます。次いでで申し訳ないのですが、お隣は留守のようなんです。どなたがお住まいかご存じですか?」

「お隣はステラさんのおうちだよ」

「ありがとうございます。助かりました」

「ふむ、君は冒険者なのかな。だったらお願いしたいことがあるんだ。この手紙を配達してきて欲しいんだよ。今日の配達は終ったんだけど、袋の底に5通の手紙が紛れ込んでいたのがわかったんだ。今から伝書鳥を隣町に飛ばす準備をしないといけなくて、僕は行けないんだよ。褒美は出すからどうかな?」


《クエスト「隠れていた配達物」が発生したのです。クエストを受けるのです?》


  クエスト番号:004

  受注条件:冒険者レベル1以上

  クエスト種別:サブクエスト

  クエスト名:隠れていた郵便物

  発注者:ペーター

  報告先:ペーター

  内 容:パウル、リジー、アグネス、テオ、スザンネに

      手紙を届ける

  報 酬:経験値50×2 貨幣300リーネ レザーベルト


 パウルさん、スザンネさん、テオさんにはそれぞれ報告するときに渡せばいいかな。リジーはレオボルドさんに会うときに渡せるから、知らないのはアグネスさんくらいね。

 レザーベルトを貰えるみたいだし、受けちゃおう!


「はい、地図書きのついででよければ受けます」

《クエスト「隠れていた配達物」を受注したのです。パウル、リジー、アグネス、テオ、スザンネの5名に手紙を届けるのです》


 話を聞くと、アグネスさんというのは職業ギルドのウィザードの訓練員をしているらしい。すぐ斜め前なのに、と思ったけれど、報酬のために行くことにした。無事、アグネスさんには手紙を届けることができたよ。


 その後、数軒の家を回って歩き、私はナツィオの町の中で一番大きな家の前にやってきた。

 ちょうど家の前で恰幅のよい男性と、少し神経質そうな女の人が話をしていた。


「ん、何か用かね?」


 男性の方が私に気付き、声をかけてくれた。結構、紳士的な方のようだ。


「テオさんに依頼されて、地図に住民を書き込む仕事をしているんです。こちらの家主さんですか?」

「いかにも。この町の代官をしているハリーだ」

「あ、ハリーさんですね。スザンネさんからお弁当を預かっているんです、どうぞ受け取ってください」

「おおっ、すまないね。配達を忘れたのはスザンネさんの方だというのに。ところで、他の雑用もやっているのかい?」

「ええ、ついでなので」

「だったら、うちの娘を探してきてくれないか。いつも抜け出してどこかに行ってしまうんだよ。報酬はこれでどうかな」


《クエスト「おてんば娘ネーナ」が発生したのです。クエストを受けるのです?》


  クエスト番号:002

  受注条件:冒険者レベル1以上

  クエスト種別:サブクエスト

  クエスト名:おてんば娘ネーナ

  発注者:ハリー

  報告先:ハリー

  内 容:ハリーの娘、ネーナを見つけて家に帰るように言う

  報 酬:経験値25×2 貨幣100リーネ レザーグローブ


 なんか、代官だっていうのにすごくケチな気がする。でもレザーグローブを貰えるならいいかな。


「わかりました」

《クエスト「おてんば娘ネーナ」を受注したのです。町のどこかにいるネーナを見つけ、家に帰るように言うのです》

「あと、こちらのお方は?」


 隣にいる女性について、ハリーにたずねてみた。だって、神経質そうで話しかけにくいんだもん。


「こちらはステラさんだ。ステラさんも飼い猫が姿を消して探しておられるんだよ」

「ステラです。あなた、ネーナちゃん探しを請け負うのに、うちの大事なタマを探すのは手伝ってくれませんの?」


《クエスト「うちのタマ知りませんか」が発生したのです。クエストを受けるのです?》


  クエスト番号:003

  受注条件:冒険者レベル1以上

  クエスト種別:サブクエスト

  クエスト名:うちのタマ知りませんか

  発注者:ステラ

  報告先:ステラ

  内 容:ステラの愛猫、タマを見つけて連れて帰ろう

  報 酬:経験値50×2 貨幣300リーネ レザーブーツ


 なんか、感じ悪い人なんだけど……とりあえず、レザーブーツを貰えるっていうし、代官のハリーよりも報酬がいいから受けちゃおう。


「どんな猫ですか?」

「三毛猫でね、とってもかわいいのよ。大きさはこれくらいで、顔はこれくらい。三毛猫はこの町にはタマしかいないからすぐにわかるわよ」

「わかりました」

《クエスト「うちのタマ知りませんか」を受注したのです。町のどこかにいるタマを探し、ステラさんに届けるのです》


 なんだか、クエストが続いて発生するんだけど、大丈夫かな。

 とりあえず、少しでも減らしていかないと何がなんだかわからなくなりそう。町を一周してギルドの方に戻る道に来たから、ギルドの方に戻ることにしようかな。


 代官の家から数軒訪ねては、住民の名前を地図に書き込んでいく。結構たいへんなクエストだなあ、と思いながら私は隣の建物に入った。

 家の中に入ると、トンテンカントンテンカンと槌を振るう音が聞こえた。


「こんにちは!!」


 ここは鍛冶屋だな、と思った私はわざと大きめの声を出した。槌の音がかなり大きかったからね。

 槌を振るう音が止み、奥から髭を生やしたドワーフの男性がやってきた。


「すみません、手を止めさせてしまって。テオさんの依頼で、街の地図に住民の名前を書き込むお手伝いをしている者です」

「なんだ、客じゃねえのか……まあいい、俺はロビン。見てのとおり鍛冶屋をやってる。あんた、冒険者だろ?」

「ええ、まあ、そうです」

「職業はなんだ?」

「スカウターです」

「じゃあ、スローイングナイフとかどうだ? 便利だぞ」

「いえ、お金がないので」

「今なら1本100リーネにまけてやる。5本セットで500リーネだ。どうだ?」

「いや、本当にお金がないの」


 このドワーフのおじさん、かなり強引だね。


 でも、まだクエスト達成しているのが職業ギルドのレベル1のクエストだけだから、本当に1,300リーネしかない。ここで500リーネも使ったらこのあとどうなるかすごく心配になっちゃう。


「ならよ、このスローイングナイフを貸してやるから、野兎を3羽捕まえてきてくれよ。グラーノから商人が来なくて困ってんだ、な、いいだろ?」


《クエスト「お肉を食べたい」が発生したのです。クエストを受けるのです?》


  クエスト番号:008

  受注条件:冒険者レベル3以上

  クエスト種別:サブクエスト

  クエスト名:お肉を食べたい

  発注者:ロビン

  報告先:ロビン

  内 容:最近、商人が来ないので肉が手に入らない

      野兎の肉を3羽分取って来てほしい

  報 酬:経験値75×2 貨幣600リーネ

      スローイングナイフ(5) 魔法書(生)イグニッション


 あ、報酬を見ると悪くないわ。代官のハリーがケチだっただけかな。

 魔法書とスローイングナイフまで貰えるなら、やっちゃいましょう。まだフィールドには出ていなかったし、門の前まで行くならパウルさんにお手紙とお弁当も渡しちゃえばいいしね。






*⑅୨୧┈┈┈┈┈ あとがき ┈┈┈┈┈୨୧⑅*


本作品は週一回とはいえ継続連載中で、話数が多い作品です。今回で10話目ですが、区切りの良いところで結構ですので★レビューを入れていただけますと幸いです。

カクヨムの仕様で作品ページに戻るか、最新話まで進まないと★レビューを入れられないのでお手間をおかけしますが、よろしくお願いします。



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