第5話 生産ジョブ
魔法を覚えた私は、魔道具店を出て西の通りを奥へと向かった。東と中央の通りは商店が並んでいたが、西の通りも奥にくると趣はがらりと変わった。
東の商店街は庶民の店、中央通りに並ぶ商店は富裕層と貴族のための店が並んでいたけれど、西の商店街は職人たちの店舗兼アトリエが並んでいる。
《この大きな建物が生産ギルドなのです。グラーノの町の規模では個別にギルドハウスを建てられないので、各ギルドが協力して生産ギルドとして管理されているのです。アオイもこの中で手続きすれば生産職に就くことができるのですよ》
西の商店街の入口にある大きな建物の前でナビちゃんが言った。
生産職といってもいろいろあるはずなので、ここはナビちゃんの意見を参考にしたい。
(生産職かあ……何に就くのがいいの?)
《ハーフリングの適性からみると、彫金師、錬金術師、魔道具師がいいのです。》
(材料はどうすればいいのかな)
《金属は北湖ダンジョンで採掘できるのです。錬金術師の素材は主に採集と採掘で、魔道具師の素材は魔物を倒すことで手に入るものが多いのです》
今のところ、魔道具師の素材になるものは魔物からドロップしていないと思う。それっぽいアイテムといえばクマの人形だと思うけど、さすがにそれはないと思うんだよね。
(ふうん、じゃあダンジョンに行くことを考えると採掘者と採集者はとっておく方がいいのね。鍛冶師はしない方がいいの?)
《加護の力が影響しないだけなのです。ヒト族や各種の獣人族は加護がなくても職業に就けるのです。大事なのはDEXの値なのです》
(ふうん、鍛冶はやったほうがいいのね?)
《武器や道具の多くは鍛冶師がつくるのです。鍛冶師、革細工師、裁縫師が防具を作り、その素材は錬金術師が作るのです》
(じゃあ、いろいろと手がけないといけないんだね)
アルステラはただ魔物や獣を狩っていればいいというゲームではないということなんだろうね。私のように開始1日でレベル15を超えてしまうプレイヤーがいるんだから、レベルキャップが設定されていればすぐに到達してしまう。そんなプレイヤーが他に楽しむことができるコンテンツが必要で、そのひとつが生産職ということなんじゃないかな。
(そういえば、レベルキャップってあるの?)
《バージョン1.0の上限設定値は30なのです》
(生産職は全部でいくつあるのかな?)
《生産職はギャザラー職とクラフター職に分類できるのです。ギャザラー職は素材を集める仕事で農家、漁師、採掘家、採集家の4種なのです。クラフター職は素材を加工する仕事で、鍛冶師、彫金師、錬金術師、革細工師、魔道具師、木工師、裁縫師、調理師の8種があるのです》
(生産職にも冒険者のピアスの効果はあるのかな?)
《生産職でも経験値は2倍になるのです》
(そうなんだね、ありがとう)
すべての職業をマスターする必要はないから、始めるならギャザラー職、クラフター職の間で関係性の高い職業がいいよね。例えば、調理師なら食材になるものを集めるギャザラー職が関係性が高いはずでしょ。漁師や農家、採集家がそうなんじゃないかな。逆に採掘家は鉱石を採掘する仕事だから、あまり関係しないと思う。
まあ、私の場合は逆に料理をする気がないから違う職業かな。例えば、手持ちにある素材だったら、中綿を使えそうな裁縫師が最初はいいかな。あ、バトルウルフの素材もあるから他の職業でもいいかも。
考えてばかりいても進まないので、私はとりあえず生産ギルドに入ることにした。
扉を開くと正面に大きなカウンターがあり、そこに女性が1人立っていた。
<簡易鑑定>
名前:レンカ
種族:エルフ
職業:生産ギルド 総合受付
簡易鑑定をして、相手が確かにこの生産ギルドの受付嬢であることを確認した私は、レンカの前へと一直線に進んだ。
「こんにちは、生産職の登録にきたのだけど」
「ようこそ、生産者ギルドへ。取得したい職業をおっしゃっていただければご案内します」
「そうね、最初は採掘家ギルドと採集家ギルドのどちらか、かな」
「この先の廊下をまっすぐ進み、階段前の十字路を右に進んだところが採掘家ギルド、左に進んだ突き当りが採集家ギルドです」
「あ、そうだ。魔道具師ギルドと裁縫師ギルド、漁師ギルドの場所もお願いします」
「そちらはどういったご用件でしょう?」
私はクエスト「風に舞った手紙」で拾った手紙をアイテムボックスから出してレンカにみせた。
「お手紙の配達をしないといけなくて」
「承知しました。1階は一次生産職だけのフロアで、漁師ギルドは採掘家ギルドの手前右側にあります。2階と3階は二次生産職のフロアです。魔道具師ギルドと裁縫師ギルドは階段から2階に上がり、左の通路に並んでいます」
レンカさんは地図を取り出して丁寧に説明してくれた。ここはダンジョンじゃないけれどオートマッピングが働くと便利なんだけどな。
私はレンカさんに礼を述べると、早速生産ギルドの奥へと向かった。
階段前の十字路を右に進み、採掘家ギルドに向かった。
<簡易鑑定>
名前:アレン
種族:ドワーフ
職業:採掘家ギルド ギルドマスター
採掘家ギルドのギルドマスターはアレンという男性ドワーフだった。自己紹介を済ませると、アレンは私にたずねた。
「嬢ちゃんは採掘家になりたいのか?」
「はい、採掘家になりたいと思っています」
「採掘家の仕事は力仕事だ。それに、採掘の最中に魔物に襲われることだってある。それでも採掘家になりたいか?」
「はい、お願いします!」
私は元気よく返事をし、頭を下げた。
そういえば、外国には大きく頭を下げる文化というのはないって聞くけど、NPCはどう思ってるんだろうね。
「だったら、最初にこのビギナーマイニングキットと鉱物図鑑をやろう。これを装備して銅鉱石を10個、採掘して来なさい。採掘場所は北湖ダンジョンの第1層だ」
《採掘家クエスト「銅鉱はどこ?」が発生したのです。クエストを受けるのですか?》
クエスト番号:MN-001
クエスト種別:職業クエスト
クエスト名:銅鉱はどこ?
発注者:アレン
報告先:アレン
内 容:一人前の採掘家を目指すなら北湖ダンジョンの第1層で
銅鉱石を10個採掘してこい。
報 酬:経験値100×2 貨幣1000リーネ
ビギナーギャザラーボトム
(はい、お願いします)
《採掘家クエスト「銅鉱はどこ?」を受注したのです。北湖ダンジョンの第1層の採掘ポイントを見つけて採掘するのです》
報酬がビギナーギャザラーボトムということは、採掘家、採集家、漁師、農家の4つの職業でシャツや帽子などが揃う感じなんだろうね。ちょっと興味あるなあ。
私はアレンさんからビギナーマイニングキットを受け取ると、それをインベントリに収納した。
「ありがとうございます、では行ってきます」
「おう、気をつけるんだぞ」
私は再び頭を下げてから、採掘ギルドを後にした。
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