第2章 グラーノ編
第1話 グラーノ
《パペットベアを倒したのです。
50リーネを入手したのです。
中綿を入手したのです。
クマの人形を入手したのです。
レベルが上がったのです。
レベル18になったのですよ》
なぜかパペットベアに絡まれるので、戦っているとレベルがあがった。
たぶん、これまでに30匹くらいのパペットベアを倒しているし、レインボーベアも3回は倒していると思う。
パペットベアというだけあって、稀にクマの人形を落とすことがあったんだけど、いったい何に使うというのだろう。
街道に戻るとパペットベアが絡んでくることはなくなった。
(街道って意外に安全なのね)
《そうでもないのです。パペットベアは小麦の中に隠れるのが好きなのです。魔物の生態によって、違うのですよ》
(そんなことまで考えてあるんだ……)
確かにバトルウルフとフォレストウルフの関係のように、MOBの生態も含めてよく考えて実装されているよね。他のゲームなら安全地帯以外ならどこにでも魔物がいるってことも多いのに。
《グラーノの町が見えてきたのですよ》
(わあ、大きいね。こんなに離れていても城壁が見えるなんてすごい!)
1㎞ほど続いたかな、緩やかに上っていた丘の頂上に到着すると、眼下にには広大な農地が広がっていた。その真ん中に続く街道は二つに分かれ、中央に大きな壁で囲まれた町があった。
《どちらの道もグラーノに繋がっているのです》
(なんで分かれてるの?)
《町を街道が迂回するように作られているのです。町に入れない者、入らない者は街道を通れば行き来できるのですよ》
(なるほどお)
あれかな、門を潜るのにお金を取られたりするからかな。
それだと積み荷を降ろしたりする予定がない商人たちは困るものね。迂回して通りたいってなるよね。
(それで、グラーノに入らず右に行くとどこに出るの?)
《黒の森を抜け、ヴァイスブルクの町に出るのです。左に行くと、嘆きの海岸から海を渡ってポルータの町に行けるのです》
嘆きの海岸って、すごい名前だなあ。なんでこんな名前なのか気になるけど、とにかくグラーノの町へ急ぎましょう。
《プチデビルを倒したのです。
冒険者手帳「グラーノ農業地帯」プチデビル(5/5)を達成したのです。
経験値3,200を入手したのです。
70リーネを入手したのです。
MP回復薬(小)を入手したのですよ》
《コドモドラゴンを倒したのです。
冒険者手帳「グラーノ農業地帯」コドモドラゴン(5/5)を達成したのです。
冒険者手帳「グラーノ農業地帯」ボーナスポイント 「3種類のMOBを討伐する」を達成したのです。
経験値の上昇を確認しました。
レベルが上がったのです。
レベルが19になったのです。
100リーネを入手したのです。
トカゲの皮を入手したのですよ》
丘を越えたあたりからプチデビル、街道が分岐する場所からコドモドラゴンという魔物が出てくるようになった。
プチデビルはダークボール、ファイアボールなどの魔法を使う三叉の槍を手にした悪魔系のモンスターなんだけど、魔法が飛んでくる速度はそんなに速くもないし、詠唱した後に魔法が飛んでくるので容易に躱すことができた。
続くコドモドラゴンはコモドオオトカゲに似た、でも角がある魔物だった。動き出すとなかなか素早いけれど、フォレストウルフの方がスピードが速かったので苦も無く倒すことができた。とはいえ、戦狼の牙刀の攻撃力なしでは簡単に倒せないかな。
プチデビル、コドモドラゴン合わせて25匹くらい倒したところで、ようやくグラーノの町の入口に到着した。
門の入口から三台ほど荷馬車が並んでいて、その周辺を立派な装備を装着した冒険者らしきNPCが護衛している。
「すみません、後ろに並んで入ればいいですか?」
私は最後尾に並ぶ馬車の護衛らしき男性に声を掛けた。
「うおっ、な、なんだ君は」
「なんだ君はと言われても……ちょっと影の薄い冒険者です」
「なんだ、スカウターか。荷物がある場合はこちら、荷物のないものは向うの行列に並ぶんだ」
「そうですか、ありがとうございます」
門の入口近くに10人ほど並ぶ人たちが見える。あれが荷物のない人達の入口ということだろう。
礼を言った私は、早速門の前に続く行列の最後尾に並んだ。
ほどなくして私の番になった。
「こんにちは、身分証明書をみせてくれるかい?」
軽鎧を纏った門番らしき男性から声を掛けられた。左手には立派な長槍を手にしている。
<簡易鑑定>
名前:グッドマン
種族:犬人族
職業:門番
簡易鑑定をすると、やはりグラーノの町の門番をしている男性だった。名前を見ても思ったが、とても人のよさそうな笑顔で、ニコニコと私へと視線を向けている。
「はい、私の冒険者カードです」
「へえ、まだ若いだろうに、もうDランクなんだね。町へは何をしに?」
「ナツィオではもう成長が見込めないだろうから、グラーノに行けとレオポルドさんから言われたんです」
私はインベントリからグラーノギルド紹介状を取り出してグッドマンさんにみせた。
「それだけ期待されているんだな。じゃあ、忘れないように俺からも一つお願いを聞いてもらおう」
「なんですか?」
「簡単なことだ、門を入ってすぐの広場にあるポータルコアに触れて、登録することさ」
《サブクエスト「忘れてはいけない」が発生したのです。クエストを受けるのですか?》
クエスト番号:010
クエスト種別:サブクエスト
クエスト名:忘れてはいけない
発注者:グッドマン
報告先:グッドマン
内 容:新しい町に着いたらまずはポータルコアの登録。
それを忘れないためにグッドマンがクエストを
出してくれた
報 酬:経験値1500×2 貨幣100リーネ
「わかりました」
《クエスト「忘れてはいけない」を受注したのです》
でも、ポータルコアを登録したかどうかまでグッドマンさんにわかるはずがないんだけど、どうやって証明するんだろう。
「気持ちいい返事だね。でも、ポータルコアの登録を確認するためには、どこかの町に移動してもらわないといけない。ナツィオの門番をしているパウルにサインをもらってきてくれ」
なるほど、パウルさんに事情を話してサインを貰ってくれば証明になるよね。グッドマンさん、賢いなあ。
「わかりました。ではすぐに行ってきますね」
「土産はいらんぞ」
「はい、わかりました」
なんだか催促されているようだけど……そこまで親密じゃないから、本当にいらないよね。
私は駆けだすと、北側正面にある広場の中央に設置されたポータルコアに触れた。前回同様、ポータルコアから何本もの細かい糸のようなものが伸びてきて、私の指先に絡みついてくる。相変わらず光る糸が触手のようで気持ち悪いんだけど、ポカポカと暖かい感じがしてとても心地いい。
(ナビちゃん、ナツィオの町にテレポして)
《了解なのです!》
ナビちゃんが返事をすると同時に、足下に魔法陣のようなものが現れ、瞬きするほどの時間で私はナツィオの町の中にあるポータルコアの前に移動していた。
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