第23話 冒険者手帳とスカウト装備
冒険者ギルドを出ると、私は先ず戦利品の内容を再確認することにした。
まずはこれ、冒険者手帳。
〈冒険者手帳〉
各エリアに棲息する魔物の生態などを記録するための
手帳。魔物別に討伐数が決まっており、達成すると
経験値が入る
簡易鑑定の結果を見てもよくわからないので、実際に開いてみた。
1ページ目は野兎に関するページだった。
〈野兎〉
草原に住む野生の兎。頭突き、後ろ蹴りなどの
攻撃をする。
討伐数 0/3 ボーナス経験値 100
空白行があるところをみると、討伐数をクリアすればそこに情報が追加されるのかな。挿絵のようなものがないけど、枠だけはあるのでそれも討伐数をクリアすれば埋まるのかも知れない。
次に、スカウター装備セットSだね。
スカウター装備セットS
スカウター用の装備のセット。以下の5つで構成される。
・スカウターキャップS
・スカウターシャツS
・スカウターボトムS
・スカウターブーツS
・スカウターグローブS
《スカウト装備セットSを使用するのです?》
(お願いします)
《インベントリにスカウター装備一式が展開されたのです。装備を変更するのです?》
(まずは試着モードで、最強セットにしてみてくれる?)
《武器、防具の最強設定を試着モードで展開します》
目の前にアオイのアバターが表示されると、そこに新しい装備を装着した姿に変わった。
(右手)戦狼の牙刀(攻撃力+50)
(左手)スチールダガー(攻撃力+30)
(頭)スカウターキャップS(INT+10 非表示)
(体)スカウターシャツS(MND+20)
+皮の胸当て(VIT+10)
(腰)レザーベルト(STR+5)
+スローイングナイフ(5)
(脚)スカウタースカートS(VIT+20)
(手)スカウターグローブS(DEX+20)
(足)スカウターブーツS(AGI+20)
(耳)冒険者のピアス(経験値2倍)
(首)なし
(腕)なし
(指)スカウトリング(AGI+10)
ホログラムで表示されたアオイの姿が少し大人っぽく見えた。
理由はスカウターシャツになって色が黒に変わったからかな。スカウタースカート、グローブ、ブーツもベージュから焦げ茶色になってシックな感じの装いだと思う。ブーツの重厚感が増して、グローブも厚めの皮を使っているのがわかる。
今までと比べてかなり強くなっているように見えるので、これでいいことにしよう。
(ナビちゃん、そのまま適用してください)
《試着内容を適用したのです。スカウター装備セットSの装着により、認識阻害(弱)が発動したのですよ》
(ありがとう。認識阻害ってことは、他の人に意識されにくくなるのかな?)
《そのとおりなのです。音を立てなければ気付かれないていどには、存在感を消すことができるのです》
一瞬で試着内容が反映された。実際に着替えてみるとスカウターシャツは思ったよりも身体にフィットするカットソーって感じね。襟元はクルーネック。まあ、魔物と戦うのにボタンとかついていると邪魔だからよく考えられていると思う。
スカートも生地の質が厚手なものに変わっているけど、柔らかくてゴワゴワしない。おそらくだけど、突貫羊の毛を使った素材なんじゃないかな。ということは、このブーツやグローブはなんだろう。
それにしても認識阻害はありがたいよね。まだ運用開始から半日も経っていないのでランキングは出ていないと思うけど、メインクエストのせいでたぶん私が先頭を走っている感じだから絡まれるのは間違いないじゃない。そこに明らかに皆と比べて違う服装で町の中やフィールドに出ると目立つのは間違いないもの。
それにローラさんのように情報だけ搾り取ろうと近づいてくる人もいるとは思うけど、ログインしたときにいた白い虎人族のように「自分は知識豊富だ」とか「自分は強い」とか思い込んでいるベータテスターもいる。
そういう人たちのプライドをクエストを進めるだけでバキバキに折っている私に妬みや嫉みが向くのは間違いないもんね。
下手すればチートだなんだと騒がれそうで、本当に考えただけでウザい。
(認識阻害、万歳!!)
《万能ではないので注意するのですよ》
(あ、はい……)
着替えを終えて、私は職業ギルドの方へと向かった。
職業ギルドにも人が溢れていた。そりゃそうだよね、パウルさんから最初のクエストを受けたら行くように言われる場所なんだし、そこで職業登録をしなきゃいけないもの。
私は「こんばんは」と、受付のエミリーさんに声を掛けた。周囲に20人くらいの人がいるが、頭上にカメラマークが出ているので私とは違うシーンを見ているということなんだろう。
私とNPCであるエミリーさんが話している姿を他の人も見ることができる。だけど、話していることを他のプレイヤーは聞くことができないようになっているようね。話をしている間のエミリーさんは私を見ているけれど、他のプレイヤーは自分に向かって話しているようにみえているみたい。
ということは、カメラマークが出ている人は話しかけても気付かないってことかな。
私の声を認識したのか、エミリーが柔らかな微笑みを浮かべて返事をした。
「こんばんは、アオイさん」
「急に人が増えたから、受付の仕事もたいへんですね」
「ええ、でも仕事ですから。バートさんなら自室にいらっしゃいますよ」
「ありがとう、行ってきますね」
「はい」
軽く手を振って、私は階段を上がってバートさんの部屋へと向かった。
バートさんの部屋の前には、何人か立っているが頭の上にカメラマークが出ている。
私もノックをし、返事を確認してから中に入った。
プレイヤーは私以外に誰もいなかった。
(あれ、あんなに人がいたのにここには誰もいない。スカウターって人気ないの?)
《ここは個室なのです。プレイヤー1人に1つの部屋が用意されているのですよ》
(それは、プレイヤーの数だけバートさんがいるってこと?)
《そのとおりなのですよ》
そういえば、バートさんと一緒に裏庭だとか、地下水路の入口まで行ったりするもんね。私がバートさんを連れ出してしまうと、他のプレイヤーが困るもの。
部屋に入り、重厚な仕事机の向こう側に座ったバートさんが話しかけてきた。
「やあ、どうやらレベル15になったようだね。では、卒業試験の課題を与える。静寂の森に住むフォレストウルフを倒し、牙を持ち帰ってきなさい」
《職業(スカウター)クエスト004が発生したのです。受注するのです?》
クエスト番号:SC004
クエスト種別:職業クエスト
クエスト名:フォレストウルフを倒せ
発注者:バート
報告先:バート
制 限:スカウター レベル15以上
内 容:職業ギルドのバートから課題。
静寂の森のフォレストウルフを倒し、
牙を持ち帰れ。
報 酬:経験値 1,500×2 4,000リーネ
スカウトベルト、罠解除
(もちろん)
《職業クエスト「フォレストウルフを倒せ」を開始しました。静寂の森でフォレストウルフを倒し、手に入れたフォレストウルフの牙を提出するのですよ》
「これですか?」
私はインベントリからフォレストウルフの牙を1個だけ取り出してみせた。
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