第15話 メインクエストがやってきた
食事を待つ間にエレナの話を聞こうと思っていたが、リジーがレオポルドさんを連れてやってきた。
「もうっ、こんなところにいたんですね。アオイさん、実績を登録するので冒険者カードをお預かりしてもいいですか?」
「ちょっと待て、リジー。なあ、アオイ、俺の依頼も済ませたのか?」
「はい、こちらにありますよ。どうぞ」
《クエスト「レオポルドの悩み事」を達成したのです。
500リーネを入手したのです。
初級治療薬×2を入手したのです。
皮の胸当てを入手したのです》
おおっ、これで皮の装備が揃ったかな。
でもレベルが上がらなくて少し残念。
「おおっ、すまんな。これで合計9つの依頼を済ませたことになるか。ランクEからDは9つの依頼をこなす必要がある。アオイはDランクに上がる要件を満たしたってことだ。おい、リジー、ランクはDにしてやれ」
「いいんですか?」
「ああ、ギルマスの権限でDにする。さっさとカードを作ってやれ」
リジーは慌てていつものカウンターへと戻っていった。
結構、強引な感じがするんだけど、ゲームの中の労働環境なんてこんなものだよね。
「アオイ、この町の北にグラーノという町があるのは知っているだろ。そのグラーノから商人が来なくなったんだ」
「あ、はい。そんな話は何度か聞いています」
「そこで、Dランクにするかわりに、アオイにはグラーノとの間にある静寂の森という場所に行って原因を調べてきて欲しい」
《メインクエスト「静寂の森にいる商人を探せ!」が発生したのです。クエストを受けるのです?》
クエスト番号:M-001
クエスト種別:メインクエスト
クエスト名:静寂の森にいる商人を探せ!
発注者:レオポルド
報告先:商人オスカー
内 容:グラーノの商人たちが突然来なくなった。
静寂の森に行って、商人たちの無事を確認して欲しい。
報 酬:経験値800×2 貨幣5,000リーネ
(やっとメインクエストが出たよ! もちろん受けます!)
《メインクエスト「徹底調査、静寂の森!」を受注したのです。レオポルドの話を聞いて、調査に出かけるのですよ》
メインクエストはあるていどの実績を積まないと出てこない……そういう仕組みになっているのかな。Dランクになることが条件だったりするのかもね。
「で、具体的に何をすればいいの?」
「この地図を見て欲しい。静寂の森の中にいるフォレストウルフ、レッサーボア、タイニーエイプがいる。この三種の魔物たちにはバトルウルフ、マッドボア、エルダーエイプに進化することがある」
地図を見ると、静寂の森の中を街道が通り抜け、途中で二つに道が分かれていた。
一方はグラーノへ繋がり、一方は何かの遺跡のような絵が描かれた場所に繋がっていた。
「進化していたらどうなるの?」
「三種の魔物間で縄張り争いが発生するのだが、街道を通る者を襲うようにもなるんだ。もし街道を通る商人たちが襲われたら、この幽寂の祠の方に逃げているはずだ。この祠のあたりに行って、商人たちを見つけて欲しい。商人の代表者はオスカーという男だ」
「わかった。早速行ってくるわ」
「おう、頼んだぜ。ちょうど、冒険者カードも出来上がったようだ」
「アオイさん、ランクアップおめでとうございます」
「ありがとう」
差し出されたカードは大きくDの文字が書かれていた。他の情報は私の名前、職業くらいしかない。登録時にそれ以外の情報を書いてないからね。書かれているはずもない。
「エレナちゃん、私はお父さんとお母さんを探しに行くから、ごはんを食べたら家に帰って待ってるんだよ、いいかな?」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん」
エレナちゃんは見た感じ私と身長があまり変わらない。ヒト族だと9歳、10歳くらいの年齢だと思う。
ゲームの中は現実世界の子どもが生まれ育つ環境が日本とは大きく違う。それが原因なのか、ゲーム内の子どもたちはかなりしっかりしているように見えた。
給仕の職員に料金を先払いし、私は急いで冒険者ギルドを出た。
もう少しでレベル10というところまできて、町の外でのクエスト、しかも、隣町との境界辺りまで行かないといけないらしい。
であれば、先に職業クエストを受けてレベルを上げてしまう方がいいと思ったからね。
職業ギルドに入った私は、そのままバートさんがいる部屋に向かった。
「こんにちは。もう<罠察知>のスキルは身についたのかな?」
「こんにちは。はい、覚えましたよ」
「では、早速だが課題を出そうと思う。ついてきなさい」
バートさんに導かれ、部屋を出て階段を下りる。正面入り口から裏庭のような場所に出ると、バートさんが言った。
「ここに罠が3つ仕掛けてある。その場所を<罠察知>で見つけて報告して欲しい」
《職業(スカウター)クエスト002が発生しました。引き受けますか?》
クエスト番号:SC002
クエスト種別:職業クエスト
クエスト名:罠を探せ
発注者:バート
報告先:バート
制 限:スカウター レベル5以上
内 容:訓練場に仕掛けた罠を発見し、報告せよ
報 酬:経験値 250×2 500リーネ アイアンナイフ
「わかりました」
私のひと言で、クエストの受注が決まった。とはいえ、<罠察知>を用いて仕掛けられた罠の場所を見つけるだけだ。
(ナビちゃん、罠察知をお願い)
《スキル<罠察知>を実行するのです!》
視界の中央にホログラムのように円筒状のものが映し出され、底全体が白く光ると、3か所だけに赤い丸印がついた。おそらくこの丸印の部分が罠なのだが、何の罠なのかまではわからない。
とりあえず、バートさんを連れて歩き、罠がある場所の近くから罠を指さして歩いた。どうやら、3つともトラバサミのような罠で、草の中に埋もれていて簡単にはわからないようになっていた。
「ブラボー! また一発合格だね。これは合格祝いだ、受け取るといい」
バートさんから報酬を受け取ると、ナビちゃんのアナウンスが脳内に響く。
《経験値の上昇を確認したのです。
レベルが上がったのです。
レベル10になったのです。
スキル<マッピング>を覚えたのです。
500リーネを入手したのです。
アイアンナイフを入手したのですよ》
おおっ、レベル上がったよ。それに、また次のスキルを覚えたみたい。これは、このまま次の職業クエストも受けちゃいたいな。
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