第5話 アバター作成
《種族、ハーフリング(女)を選択したのです。次はキャラクターの外見を設定するのですよ》
機械精霊がくるくると回って返事をした。
直前まで視界いっぱいに表示されていた種族説明画面が消えると、キャラクターの外見を決める画面に変わった。
設定できる項目は、身長、手足、胸囲、髪色、髪型、眉、目、瞳、光彩、鼻、口、歯並び、ほくろ、入れ墨、化粧、声……20ほどの項目が並んでいる。
《最初は身長を決めるのです》
「最大でお願いします」
《140㎝にしたのです。次に体型を決めるのですよ》
「体型と筋力って関係するの?」
《外見は全く関係ないのです》
「だったら、標準体型より少し細めで」
《80%にしたのです。調整するのです?》
「90%で」
《90%にしたのです。次は輪郭を決めるのです》
「華奢な身体だからね、これでいいよ」
私は一番
《次は顔の設定に入るのです。写真をアップロードすればそこから顔を作ることもできるのですよ?》
VRMMORPGでも、VRFPSゲームでもキャラの見た目とかどうでもいいって人が一定数いる。ゲーム内で鏡になるようなものが無い限り自分の顔なんて見えないからね。
結果的に、「双子か、いや三つ子か!?」って思って見ていたら、どんどん同じ顔の人がログインしてくる、なんてこともよくある話なんだよね。顔を変えるなら自分以外の人が変えればいい、という考え方のプレイヤーが多いからどうしようもない。
それとは別に、PUTに登録されている自分の顔写真をベースに自動でそっくりに作らせたりする人もいる。友人知人の間でプレイするならその方が見つけやすいというメリットがあるよね。
で、肝心の私はというと、自分で作ったキャラクターを愛でたいから、絶対に手動で作る主義だったりする。
「手動でお願いします」
《手動で顔をつくるのです。髪色と髪型を選ぶのですよ》
「うーん、どうしようかなあ」
私は他のゲームでは現実世界の自分と同じ髪色を選んでいる。XRDを使用するために体内に取り込んだナノマシンの副作用のせいで、小学校の頃から私の髪色は少しずつ変化してきた。アルビノではないので白髪に近いんだけど、今では見事な銀髪になっている。今回も現実の自分と同じ髪色にすればいいでしょう。髪型は一旦はデフォルトのストレートロングでいいかな。
「うん、一旦はこれで」
《次は眉の形と色を選ぶのです》
アバターの顔が近づいてきて、まるで正対しているかのような位置で止まった。カメラのズームを使ったような感じだね。
眉もいろんな形が用意されている。吊り上がった感じのものから、えらく離れた場所にチョンチョンと描かれただけのもの、M-16を使わせたら右に出るものがいない感じになれそうなものまであった。
ネタ系キャラを作るのにはいいけど、普通でいいのよ、普通で。
「一旦はこれでお願い」
《次は目の形と瞳を選ぶのですよ》
次は目ね、目は口程に物を言うというから真剣に選ばないといけない。
もちろん、選択肢にはネタキャラなのかまん丸の目や、閉じたままの目が設定されていたりする。
「キャラの目は閉じたままでも大丈夫なんだよね?」
《アバターの外見に関係なく、アルステラの中で五感を通して得られる刺激はプレイヤーに正しく伝えられるのですよ》
ふうん。でもまあ、これかな。いや、こっちかも。
一方は二重でぱっちりと丸く開いた目。長い睫毛も相まってとても目が大きく見える。もう一方は、同じ二重だけど少し大人びたクールな印象を受ける目。決して眠そうな感じではなく、キリッとした雰囲気があってかっこいい。
ハーフリングは全体に大人の女性を小さくした感じの印象だけど、目を丸く大きくしちゃうと子どもっぽくて、可愛い感じに見える。逆に、もう一方は大人っぽいというか、美形という言葉がぴったりくる感じ。
「とりあえずこっちで」
《次は瞳の色を決めるのです》
「アクアマリンあるかな?」
《あるのです。アクアマリンにするのです?》
「うん、お願い」
こうして私は機械精霊と話をしながらキャラの外見をひとつずつ決めていった。
まずパーツを決めていって、全体のバランスを見ながら調整。気に入らなかったらそのパーツを違うものに変えて、また調整。それぞれのパーツに位置調整や角度調整、形の調整など設定できるようになっているから結構時間が掛かった。
「うーん、見た目はこれでいいかも。気に食わなければ課金アイテム買って調整すればいいし」
髪型は変更して前下がりボブの銀髪に、目はクールな感じのアクアマリンのような青い瞳。眉の色と形、目の形や大きさ、形のいい唇などかなり拘って作った。出来上がりをひと言で表現するなら「とても可愛らしいお人形」ってところかな。
「うん、可愛い! パーフェクト! もう決定しかないっしょ! 決定!」
《最後に声を決めるのです。自分の声を登録することもできるのですよ》
「一つずつサンプルを聞かせてくれる?」
《もちろんなのです》
声は人気声優さんが吹き込んだ声を人工合成したものを選ぶことができる。マイクを通した自分の声を加工してゲーム内に出力する機能もあって、写真を取り込んでアバターを作る人が好んで使う。
私は自分の声よりもアバターのハーフリングのイメージに合う透明感のある声を選んだ。
「できたっ!」
出来栄えに満足した私は、少し興奮気味にキャラメイクの終了を告げた。
《次はキャラクター名を決めてほしいのです》
自分の中では完璧に近い少女を作り上げた興奮で満たされているところに、とても冷静な機械音が響いた。
「アオイで!」
自分の名前から一字とって、キャラクターの特徴に合わせたネーミング。我ながら気に入ってるんだよね。
《キャラクター名をアオイで登録するのです。よろしいのです?》
「おねがいします」
《誕生日を決めてほしいのです》
「あ、5月15日でお願い」
京都で行われる葵祭の日だからね。アオイにぴったり。
《職業を選択してほしいのです。条件を満たせば派生する二次職業に転職できるのです》
選べる職業は戦闘職のみで、ファイター、アタッカー、ウィザード、僧侶、スカウター、ハンターの6つが表示された。
私は迷わず「スカウター」で、と言った。
《以上の内容でキャラクターを作成するのです。よろしいのです?》
「お願いします」
機械精霊に返事をすると、初期ステータスの値に従ってパラメータが決まった。この値は合計が165になるようになっているらしい。
キャラクター名:アオイ
種族:ハーフリング(女)
職業:スカウター
レベル:1
ステータス:
HP:40
MP:48
STR:5
VIT:14
AGI:50
DEX:37
INT:36
MND:23
加護:火精霊の加護、風精霊の加護
スキル:簡易鑑定、インベントリ、マップ
索敵
一時間弱をかけて作ったキャラクターを前にして、ようやく肩の力が抜けた気がする。
《続けて、チュートリアルを受けることができるのです。是非楽しんでほしいのです!》
まあ、頭をいっぱい使ったからね。このあとは体をいっぱい動かすとしますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます