第37話 影はもうすぐそこに



ステラside


うらやmこほん失礼。

リールさん達の買い物を尾行している間に分かったことがある。


リールさん達の気配察知能力のおかげなのだが。


さすがと言うべきか、ただ楽しんでいるだけなのではなく、常に周りに蜘蛛の糸を張っているように、気配を常に探っていたようだ。

そこに、悪意ある気配を2つ感じたとの事で、通信が入ってきた。

只者じゃないそうで、異常種の可能性があるらしい。

早速、武美さんとラルクさんは、それぞれの行動を開始したようだ。


武美『怪しい人影はなかったでござる。ただ、一瞬殺気の様なものは感じ取ったでござる。』

ラルク『僕も感じた、警戒度を上げる。』

ステラ「了解です、引き続きお願いします。」


通信が入ってきたので、そう返事をし、見守る。


とりあえず、グローリー母娘の直接的な護衛はリールさん達に任せることにしよう。



しばらくして、リールさん達の様子を見ると、楽しそうだ。

リールさんのあんな表情、見たこともないなと感じる。

あの人がMIO時代、戦いが全てという感じだったのに、こういう娯楽に身を投じる姿は、とても新鮮に見える。

ただ、持ち前の鈍感さは、変わらないようで、自分が向けられている視線の意味を分かっていない様子だ。

アイリさんが牽制しているようだが、それが無ければ、恐らく色んな人が、リールさんに寄ってくるだろう。


リール『…2時の方向、不穏な気配を感じたわ、数は2つ、今は手を出してこないとみていいとは思うけど、一応警戒しておいて。』


ステラ「了解。」


リールさんから見て、2時の方向へ顔を向けると、ローブをまとった2人が一瞬見えた。


武美『不審な人影2つ確認でござる。』

ラルク『僕も確認した、追う?』

ステラ「1人は、見つからないように尾行してください、ラルクさんお願いできますか?ただ、深追いはダメですよ?」

ラルク『了解。』


ここは隠密行動が、1番得意なラルクさんが適任だろう。


さて、私たちはそのまま護衛を続行しよう。


今は下着のお店に行っているようだ…って、リールさんは大丈夫なのだろうか?と心配になったが。


通信を聞いている限り、大丈夫そうだ。

少し拝見できない事に残念さがあるが、これも任務だと思い、我慢した。

私達とも、一緒に行ってくれるよう、頼んでみるのも良いのかもしれない。


そんな事を考えつつ、護衛という名の尾行は続いていったのだった…。




ラルクside


僕、ラルク=ランバードは不審な2人組を、距離を保ちながら、追っていた。

動きから察するに只者では無い、だから慎重に追跡する。

ふと、路地裏の誰もいない所で、止まった。


二ー「それで、お前の考えを教えてくれ、ワン。」

ワン「簡単に言うと、ここはフリーエリアだから、事故死に見せかける。ボスは妻子を殺すよう命令してたし、これが最善。」


会話から、2人の男女だということは分かる。あとは、見た感じ、10代前半か?ワンという名を覚えておこう。


二ー「…そうか、でもタイミングはあるのか?」

ワン「ある、最終手段として、顔を隠して襲撃すれば、誰かわからないから、フリーエリアでも対応可能。」


なるほど、そう来るかもっと情報が欲しいと思っていると、油断をしたのか。


ラルク「…っ。」カタッ

石ころを蹴ってしまった。


二ー「誰だ!」

その音に気付いた1人がこちらに警戒しながらやってくる。

くっ、不味い…仕方がない能力を使うか…。


ラルク「【擬態ミミカ】。」(ボソッ)


その瞬間、僕の身体の色がいる所の壁の色と同色になった。

そして、気配を殺した。

僕の能力は、様々な物に擬態が出来る。よって、隠密行動に最も適した能力を持っている。


二ー「…いない?逃げるにしても不可能か、見えるはずだ、気のせいだったか…。」

ワン「二ー、誰かいたの?」

二ー「いや、気のせいだったみたいだ、すまない。」

ワン「任務中だから、しょうがない事。」

二ー「あぁ、一応警戒度は上げておく。」

ワン「そう、私も上げておく、二ーとりあえず行くよ。」

二ー「あぁ。」


そして、2つの気配は遠ざかって行った。

これ以上は深追いしないでおこう、警戒度を上げられてしまったし、次、怪しまれたら、先程話した作戦が漏れていると危惧しかねない。

僕はそっと、能力を切り、気配を断ちつつ2人の所へ戻るのだった。




アイリside


ニーナ「リールさん、次はこちらです!」

リール『はいはい、そんなに慌てないの。』


目をキラキラさせながら、そういうニーナの勢いに押されつつ、リールは返事をする。


それを見た、セレスさんは。


セレス「うふふ、あの子のあんなはしゃいでいる姿は、久しぶりに見ます。」

アイリ「そうなのか、いつもどんな感じなのだ?」

セレス「そうね、笑顔は笑顔なんですけど、何処か陰があったんです。今は、とても嬉しそう。」


マフィアのボスの一人娘だ、色々見たくないものも見てしまう、それに加えて、次期ボスという重責がいつもその小さな両肩に乗っているのだろう。


今はそれを忘れて、思い切り1人の少女として楽しんでいる、それを見た、セレスさんの表情はマフィアのボスの妻ではなく、1人の母親の顔をしていた。


セレス「改めて、お礼を言います、本当にありがとう。」

アイリ「いや、礼を言うのは私の方だ、リールのあんな表情を見れたんだから。」

セレス「リールちゃんは、普段笑わないの?」

アイリ「いや、笑うんだが、私達以外の前で、あんなにも楽しそうにしてるのはあまり見た事がないんだ。」


リールのあの表情は、私の脳内にしっかりと保存されている。

正直、写真を撮りたい位だ。


セレス「ふふ、でも、リールちゃんはアイリちゃんの事大好きなのは伝わってきますよ。」

アイリ「な、なんでだ?」

セレス「私達を見る時と、アイリちゃんを見る時では明らかに違いがありますから。」

アイリ「そうか、それは嬉しいものだ。」

セレス「本当よ?なんというか、愛しい人を見る目と言った方がいいのかしら。」

アイリ「う、うむ…。」


そう言われると、なんだか気恥ずかしい、愛しい人を見る目…か、えへへ。


セレス「本当に大事なんですね?」

アイリ「ま、まぁそうだ。」

セレス「うふふ、照れなくてもいいのに。」

アイリ「は、早く行かないと。」

セレス「そうね。」


そう話していると。


ガシャーーーーーン


大きな音が私の鼓膜を刺激した。


アイリ「なんだ?!」

大きな音の方向見ると、そこには倒れた看板と、ニーナを抱き締めたリールの姿があった。



リールside


あ、あぶねぇ…。

看板が急に落ちてきた、重さがあるであろうそれがニーナに直撃したと考えると、無事では済まなかっただろう。


リール『ニーナ?大丈夫?』

俺は直ぐに、ニーナの無事を確認した。

ニーナ「は、はい。」

見たところ、外傷もなく安心した。


リール『そう、良かった…。』

ニーナ「あ、あの、少しこのままでいいですか…?」

今、俺はニーナを抱き寄せている状態だ。

さすがに、怖かったのだろう、震えた声でそういうニーナに。


リール『えぇ、良いわよ。』

ニーナ「ありがとう…ございます。」


と、返事をした。


アイリ「大丈夫か!リール!ニーナ!」

セレス「ニーナ!リールちゃん!」


そして、抱きしめていると、2人が切羽詰まったような顔をして、走りよってきた。


リール『無事よ、ニーナは少し震えているけど、何も怪我は無いわ、安心して。』

アイリ「そ、そうか。」

セレス「あぁ、ニーナ、本当に良かった…。」

リール『ニーナ、セレちゃんのとこに行ける?』

ニーナ「…いえ、まだこのままで…。」

リール『に、ニーナ…?』

セレス「そのままでいてあげてください、お願いします。」


セレちゃんがそういうので、俺もそれに賛同し、アイリからの視線は痛いが、そのままでいる事にした。


アイリ「リール、看板が落ちる前、何か感じたか?」

リール『えぇ、だから警戒してたのだけれど、看板を落としてくるとは…ね。』

アイリ「こちらから通信で伝えておくことにしよう。」

リール『えぇ、お願いね。』

アイリ「あぁ。」


アイリは連絡しながら、どこかへ歩いていった、それを見送り。


リール『え、えーと、ニーナ?』

ニーナ「…もう少しだけ。」

リール『…分かったわ。』

セレス「ごめんなさいね、リールちゃん。」

リール『良いわよ、セレちゃん。』


とは言ったものの、全く離れる気配が無い。

それほど怖かったということなのだろう。

ニーナを抱きしめつつ、看板に目を向ける。


あの2つの気配は、先程いた奴らと同じ気配だった。

アイツらが送り込まれた奴らだと見て、間違いはない。

そして、明らかに脅しではなく、本気でセレちゃん達を殺す気なのだろうと判断できた。


リール『大丈夫、必ず守るから。』


そう、ニーナの頭を撫でながら、言うのだった…。


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