第38話 ピッコラフェリ



アイリside


人々の悲鳴が辺りを支配する中、私はステラへ通信していた。


アイリ「こちらアイリ、護衛対象並びにリールは、無事だ。」

ステラ『こちらステラ、はい、確認してます。なにか怪しい影はありましたか?』

アイリ「あぁリールによると、先程感じた気配が2つ看板の近くで確認したそうだ。」

ステラ『了解です。それと、ラルクさんからですが、本日中に襲われる可能性があるそうです。』

アイリ「了解した、十分に注意しておく。」


通信を切ると、リールの元へまた戻る。


アイリ「リールって、まだ、抱きつかせていたのか?」

戻ると、ニーナはまだリールに抱きついていた。

リール『…えぇ、無理もないわ。』


そう答えながら、リールはニーナの頭を撫でながら、慰めている。


アイリ「リール聞いていたか?」

リール『えぇ、全部聞いていたわ。』

アイリ「どうする?」

リール『セレちゃん達次第だけど、続けるならまた買い物を再開するわ、ただ、襲われるかもしれないから、警戒は怠らないように、通達をお願い。』

アイリ「了解。」


私は返事をし、通信で伝える。


その間、セレスさんが不安そうにリールに近づき。


セレス「大丈夫かしら?これ以上は止めた方がいいかもしれないわ。」

リール『そうね…。』


リールはニーナとセレスさんを見ながら、眉を下げ返事をする。

すると、ニーナが顔を上げ。


ニーナ「あと1つだけ、行きたいところがあるんです。」

リール『行きたい所?』

ニーナ「はい、あそこだけは、絶対に行きたいんです。」

リール『…セレちゃん。』


意志の固い表情をしながらも、そう言うニーナに対し、リールは困ったように、セレスさんの方向を見た。


セレス「…リールちゃん、行かせてもらえるかしら?」

リール『それほど大事な場所なのね…?』

ニーナ「はい、今日行かないとダメなんです。」

リール『…分かったわ、貴女達は私達が守るから安心してね。』

ニーナ「ありがとうございます!リールさん!」


可愛らしい笑顔で、そう言うニーナにリールは安心させるように、笑顔で撫でた。


ニーナ「あの時と同じ顔だ…。」


ニーナのあの時とは、リールに助けられた時のことを言ってるのだろうか…。


リール『??』


リールはなんの事だろうという顔をしながらニーナを見ていた。


アイリ「通達は終わったぞ、とりあえずここから移動しないか?」

リール『そうね。セレちゃん、ニーナ行きましょうか。』

セレス「えぇ、そうね。」

ニーナ「はい、分かりました。」


リール『1台車を用意して、大至急よ、えぇ、よろしく。』


リールは車を出すように、携帯で電話をして。


リール『もうすぐ車が来るわ、私に着いてきて。』

リールを先頭に、ニーナとセレスさんが並び、私が後ろに付いた状態で、その場を後にした。


リールside


車に乗り込み、目的地に向かう所だが、その場所を知らないので、聞いてみることにした。


リール『それで、どこに行きたいの?』

ニーナ「ピッコラフェリです。」


ピッコラフェリ、たしか孤児院だったか…。


リール『分かったわ。』

セレス「お願いしますね。」

リール『家の運転手に任せて、聞いたわね?そこまでお願い。』

「かしこまりました。」

運転手はそう返事をすると、車を走らせた。


アイリ「ピッコラフェリには何かあるのか?」


アイリが疑問を口にする、どうやら知らないようだ。



リール『ピッコラフェリは孤児院の名前よ。』


ピッコラフェリ孤児院は、いちばん古い孤児院で、穏便派のマフィアが経営している場所だ。

教育施設など、充実していると聞く。


アイリ「なるほど、そこに何が目的で行くんだ?」

セレス「私の故郷なのです。」

リール『…セレちゃんは孤児院出身って事?』

セレス「えぇ、私はあそこで、捨てられ、育てられました。」

衝撃的な事実に、俺含めアイリも絶句した。


俺達も人の事は言えないが、孤児院で育って、マフィアの夫人になれるのは、早々ない事だ。


ニーナ「それの繋がりで、あそこの人達とは仲良くさせてもらってるんです。」

ニーナが一言加える。


私達に故郷を見て欲しいということなのだろうか。


セレス「リールちゃん達は孤児院の経営もしてるでしょ?」

リール『えぇ、しているわ。でも、ピッコラフェリほどの規模じゃないわよ?』


俺達クローバファミリーも孤児院を経営している。

小規模な為、参考にする事は沢山ありそうだとは思う。


セレス「えぇ、いいの、見てくれることに意味があるから。」

リール『分かったわ。』


20分後


とても大きな施設が見えてきた。


アイリ「…あれが、孤児院なのか?」

リール『えぇ、そうよ。』


アイリは孤児院を見て、目を見開いている、それもそのはず、ピッコラフェリはとにかく広く、建物自体も大きいのだ。


セレス「うふふ、私がいた時はまだ小さな所でしたよ。」

リール『本当、凄いわね。教育施設、あそこは運動場かしら?まるで学園のようだわ。』

セレス「人によっては、ピッコラフェリ学園なんて、呼んでいる人もいるそうですよ?」


セレちゃんの説明を聞きながら、孤児院の様子を見ると、子供達が笑顔で駆け回っていた。

そのような光景を微笑ましく見ていると。


ニーナ「リールさん、ここは良い所ですよね。」

リール『えぇ、そうね。』

ニーナが俺に話しかけた、その顔には、俺と同じ微笑ましいといった表情が浮かんでいた。


「あ!ニーナお姉ちゃんだ!」

「セレスお母さんもいる!」

「お姉ちゃんだ!遊んで!遊んで!」

「知らない人もいる!」


話していると、孤児院の子供達がこちらに走ってきた。

2人とも姉として母として慕われているようだ。


「」チョンチョン

リール『ん?』

微笑ましく見ていると、男の子が俺の足をつついていた。

俺はその子に目線を合わせるように、しゃがみ。

リール『どうしたの?』

「お姉さん達も遊んでくれるの…?」

その子は、俺とアイリを見てそう言う。

リール『わ、私達?』チラッ

アイリ「私も…?」

セレス「遊んであげてください。」ニコッ

リール『え、えぇ。じゃあ少し遊びましょうか。アイリも良いわね?』

アイリ「あ、あぁ、分かった。」

「やったぁ!」


リール『私は、リールっていうの、よろしくね?』

アイリ「私はアイリだ、よろしく頼む。」

「うん、リール姉ちゃんとアイリ姉ちゃん!」


子供は無邪気にそう返事をした、可愛いな。


「お姉ちゃん達こっちだよ!」

リール『わ、わかったから、そんなに引っ張らないの。』

アイリ「げ、元気だな。」


「みんな!このお姉ちゃん達も遊んでくれるって!」

「本当!」

「やったぁ!」


俺たちは思う存分遊んだが、正直子供の体力を舐めてた。

疲れ知らずとは、この子達の事を言うのだろう。

元気なのはいい事なのだが、未だにみんな疲れている様子がない。

俺とアイリは、まだいけるんだが、ニーナが疲れ果てていた。

ニーナ「」ハァハァ

リール『ニーナ、大丈夫?』

アイリ「無理をしてはダメだぞ。」

ニーナ「大丈夫…です、でも少し休ませて貰います…。」ハァハァ

リール『それがいいわ、あなた達、あそこで遊んでらっしゃい。』

「「「「はーい!」」」」

セレス「リールちゃん、ちょっといいかしら?」

リール『えぇ、いいわよ。アイリ、ニーナをお願い。』

アイリ「分かった。手を貸してあげよう、ニーナ大丈夫か?」

ニーナ「はい、ありがとうございます…。」ハァハァ


俺は2人を見送り、セレちゃんに向き直った。


リール『どうしたの?』

セレス「ちょっと付いてきてくださらない?」

リール『えぇ、 わかったわ。』

セレス「今から会って欲しい人がいるの。」

リール『…誰に会うの?』

セレス「会った時に紹介するわ。」


会って欲しい人?誰なのだろうか。


セレちゃんに付いて行くと、ある部屋の前に来た。

ネームプレートがあり、そこには施設長室と書かれている。


コンコン

??「どうぞ。」


とても優しげな声が聞こえた。


セレス「失礼します。」

リール『失礼するわ。』

??「セレスさん、よく来てくれました。」

セレス「えぇ、フローラさんもお元気そうで。」


とても優しげな雰囲気を纏っているのだが何処か違和感のある、修道服の女性が笑顔で立っていた。


以下ではフローラを、フロと表記します。


フロ「そちらも元気そうで…この方は?」

セレス「あ、こちらの方は、リールちゃんです。」

リール『初めまして、リール=フィオーリです。』

フロ「あなたが噂の…。私は、フローラ=ナース。ここで施設長をしております。」

セレス「私が大変お世話になった方です。」


リール『なるほどね、フローラ施設長、私のことはリールとお呼びください。それで噂というのは…?』

フロ「セレスさんから連絡が来て、リールさんというとても素敵な方と一緒に行くからと聞いておりました。」ニコニコ

少し照れくさいな…。


セレス「うふふ、リールちゃんは素敵な方でしょう?」

フロ「えぇ、とても澄んだ目をしていますね。」

リール『ありがとうございます…。』

フロ「貴女は、とても多くの修羅場を経験しているようですね。」

リール『なぜ、そう思われたのです?』

フロ「目を見れば分かりますよ、私は多くの人を見てきましたから、言葉を崩していただいて構いませんよ。喋りにくいでしょう?」


この人は見た目によらず只者ではないようだ。


リール『えぇ、じゃあこれでいかせてもらうわ。それで、フローラ施設長、貴女は何者なのかしら?』


この違和感の正体は、一体…。

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