第36話 不穏な影



ニーナside


白銀の天使様、私の命の恩人で、私が憧れている人。

クローバファミリーのボスというのは、あの時初耳でしたけど、それでも、あの方のあの優しげな視線は何も変わっていなかった。

そんな彼女が、私の目の前で子供のように、クレープを食べている。


リール『こんな美味しくて甘い食べ物があっただなんて、これは革命だわ!アイリ!』

アイリ「リール、気持ちは分かるが、落ち着け。」

セレス「あらあら、本当に美味しそうに食べるわね。」

リール『本当に美味しいもの、アイリこれ食べてみて?』ヒョイ

アイリ「あ、あぁ。あーん…ふむ、たしかに美味しいな。」

こ、これは羨ましいです。


リール『…。』キラキラ


リールさんは、アイリさんの物をキラキラした目で見ている。

アイリ「…食べてみるか?」

リール『…!』コクコク

アイリ「しょうがないな、あーん。」

リール『ハムッ…んっ!?これもとても美味しいわ!ガトーショコラのほんのりとした苦味と甘みがまた生地に合ってるわね!』

アイリ「ふっ、そうか。」


何故か勝ち誇ったような、アイリさんの笑みに悔しさが出てくる。

わ、私だって…。


ニーナ「り、リールさん私のも食べてください!」

リール『本当に!』キラキラ

ニーナ「はい!あーんです。」

リール『ハムッ、これもいけるわ!いちごの酸味が甘みを更に際立たせているわね!これも革命だわ!ありがとうね、ニーナ。』

ニーナ「はい。」パァ

リール『私のもあげるわ。はい、あーん。』

ニーナ「で、では失礼して、あーん。」ハムッ

リール『どう?美味しいでしょ?』

ニーナ「…。」コクッコクッ


私は首を縦に振ることしかできなかった、味なんて分かりませんよぉぉ。


私はアイリさんに視線だけちらっと向けると少しムッとしている様子だ。


セレス「あらあら、じゃあ私のも食べる?」

リール『セレちゃん、いいの?』パァ

セレス「えぇ、もちろんですよ、はいあーん。」

リール『ハムッ…これは、また違う味わいだわ。一見合わなさそうなのに、食べてみるとこんなに合うと納得してしまう。抹茶といったかしら?これは、リピート確定ね!ありがとう、セレちゃん。』

セレス「うふふ、良かったわね。」

リール『セレちゃんもこれ食べる?』

セレス「じゃあ頂こうかしら。」

リール『あーん。』

セレス「あむ、うふふとても美味しいわ。」ニコッ

リール『でしょ?』ニコ


むぅ、お母様まで…。

まぁでも、ここまで幸せな表情を浮かべているリールさんを見ると、ここに一緒に来れて良かったと思えます。


「店員さん、あの方が今食べていた抹茶をくれるかしら?」

「俺は、いちごを…。」

「俺はガトーショコラがいいな。」


リール『3人が頼んだものを頼む人が多いのね。チョコバナナも美味しいのに…。』

アイリ「好みもあるから、たまたまそうだったんじゃないか?」

セレス「そうよ、チョコバナナもとても美味しいわ。」

リール『まぁそうね…。』


リールさんの食べる姿を見てだと思いますが、リールさんは気づいていない様子です。

その証拠に。


「チョコバナナも追加でいいですか?」

「あ、私も。」

「俺もチョコバナナ追加で。」


店員「え?え?」


レジではこうなっている、リールさんは気づいていない様子だ、店員さん、お疲れ様です…。


リール『美味しかったわ、アイリ、これは定期的にまた来たいわね。』

アイリ「そうだな、その時はお供しようか。」

リール『そうね、お願いしてもいいかしら?』

アイリ「あぁ、2で行こう。」


なんだか、やたらと2人を強調していたような?


リール『次はどこに行くの?』

セレス「私達がよく利用する下着のお店に行きましょう。」

リール『あ、あ、なるほど、わかったわ…。』

ニーナ「どうかされましたか?リールさん。」

リール『い、いえ何も無いわ。早く行きましょう。』

なにか困る事があるのでしょうか?

アイリ「リールは、普段そういう所に行かないんだ。全て私達に任せていてな、それで戸惑ったのだろう?」

リール『そうね、そういう事には疎いのよ…。』

セレス「じゃあ、私達が選んであげるわ。」

リール『え、でも…。』

ニーナ「そうですね、御遠慮なさらずに、私たちが素敵な奴を選んで差し上げます!」

リール『あ、はい…。』


よし素敵な下着を選んで差し上げなければ!

私は気合を入れて、目的のお店に向かうのだった…。


リールside


まずいまずいまずい!下着を選ぶ?いや、俺は男だ!つまり脱ぐって事だろ?バレる可能性が出てくる!もしバレたら…。


ニーナ『お、男…?変態ですか?』

セレス『リールちゃんいや、ドン・クローバ最低ですね。』

終わる!俺の人生が終わる!MIO直行コースというやつだ!

俺は助けを求めようと、アイリに視線を向けた。


アイリ「任せろ、リール。」グッ!


え?なんでそんな顔を輝かせてるんだ?今ピンチなんだぞ!?


ニーナ「ここです!」

俺が焦燥し切っている内に着いてしまったようだ。

どうする?俺、どうすれば…。


店員「いらっしゃいませ。あ、セレスティア様、いつもご利用していただき、ありがとございます。」

セレス「えぇ、今日はこの方達に似合う下着を用意して欲しいの。」

店員「かしこまりました。それでは採寸致しますので、こちらへどうぞ。」


リール『アイリ、大丈夫なのか?』ヒソヒソ

アイリ「大丈夫だ、今のリールならバレない。」ヒソヒソ


本当なのか?少し複雑だが、アイリがそう言うなら信じてみるとしようか…。


俺は緊張しながらも、アイリと共に、採寸場へと足を運んだ。頼むバレないでくれ…。


そして…。


店員「採寸が完了致しました。今からサイズの合う物をお持ちしますね。」


バレなかった。うん、なんで?


アイリ「言っただろ?大丈夫だって。」

リール『…えぇ、そうね。』


なんだろう、バレなくて良かったと思う反面、だいぶ複雑な気持ちだ…。


店員「こちらなんてどうでしょう?」


店員さんが持ってきたのは、黒のフリルが付いた下着だった。


それを見たアイリ達は。


アイリ「なかなか、大人っぽい色だな。姉さんにピッタリだ!」

ニーナ「はわわ、リールさんって大きいんですね…!」

セレス「あら、大胆ね。」


店員「お客様はとても大人っぽいので、こういう色合いの方がお似合いだと思います。試着されますか?」

アイリ「是非、お願いする。」

いやいや、なぜお前が答える?

リール『ちょっと、アイリ?』

アイリ「私に見せてくれないのか…?」


ぐっ、断れない。

リール『はぁ、分かったわよ。』

アイリ「ありがとう、姉さん。」


店員「そちらのお客様の分もございますので、ご一緒に試着されては?」

アイリ「こ、これは私に似合うのか…?」

アイリに渡されたのは、紫色の下着だった。


セレス「あらあら、アイリちゃんのも似合うんじゃないかしら?」

ニーナ「はい、似合うと思います!」

アイリ「そ、そうだろうか?」チラッ


俺を見ないでくれ…アイリ。


リール『に、似合うんじゃないかしら?』

アイリ「そ、そうか、ならば着てみよう。」

そして、俺たち2人は試着室に入る。

いや待て、俺は、着方なんて分からないぞ。

こんな時は、素直に店員を呼ぶべきなのか?

んー、背に腹はかえられんか…。



リール『ごめんなさい、下着の付け方が分からないの、手伝ってくれるかしら?』

店員「あ、はい、分かりました。」


あえて、堂々と言うことで、え?私?女性ですけど?をアピールする。下着の付け方を知らないなんて、ありえないことかもしれないが、そこはスルーしてもらおう。


店員「…出来ました。」

リール『ありがとう。』

店員「いえ、とんでもございません。」


ば、バレてないよな…?

にしても、これ恥ずかしすぎるだろ!世の女性は皆これを下に着ていると思うと、素直に尊敬出来る。


リール『ど、どうかしら?』

ニーナ「と、とてもお似合いですね!」

セレス「まぁ!ほんとね、似合っているわ!」


2人が褒めてくれてるのに素直に喜べないのは何故だろう…。

アイリ「私も着れたのだが…。」

そう言って、試着室のカーテンを開けると。

アイリ「ど、どうだろうか…?」

リール『綺麗だ…。』

アイリ「そ、そうか。」エヘヘ


今まで見た事がない、アイリの姿だ、妹の違う姿を見るのは、とても新鮮というか、つい口に出してしまう程綺麗なのだ。

これは兄としていや今は姉として、悪い虫が来ないか心配になってくるな…。


ニーナ「わぁ、アイリさんもすごく似合ってます。」

セレス「うふふ、ほんと、ここに来てよかったわ。」


アイリ「リールの下着、とても似合ってるぞ。」ハァハァ


なんでそんなに息が荒いの?なんだか食われそうな感じなんだけど…?


リール『あ、ありがとうアイリ?』


セレス「さぁ、まだまだあるから、じゃんじゃん着替えちゃってね。」

リール『え、まだやるの?』

セレス「当然よ、始まったばかりなんだから…ね?」

リール『あ、あ、いやぁぁぁぁぁぁ。』


この後めちゃくちゃ着替えた…。





??side


これはグローリー母娘とリール達が集合した時までに遡る。

MIOの面々の他に、2つの怪しい影が物陰から見ていた。


??「グローリー母娘の姿を確認、その他に見知らぬ女が2人。恐らく護衛だろう、どうする?」

??「私達の目的は、あくまでグローリー母娘を殺す事、その2人も死んでもらう、能力の使用も認められているから、なるべく早めに終わらせたい。」

??「なら、人の目に付かない方が良さそうだ。」

??「それならいい考えがある、早速準備に取り掛かろう。」

??「準備しながらその考えを言ってくれよ?ワン」

ワン「分かった、それじゃ行くよ。二ー」

二ー「はいはい。」


ローブを着込んだ2人は、最初から何もその場には無かったかのように消えたのだった…。

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