第35話 グローリー母娘と外出


ステラside


ここはゼニアルの大都市であるブレアス、ここでは、表の者と裏の者、関係なく、買い物をする者や、観光で来ている者が多い。

そこで、買い物をしようと、グローリー夫人に言われたらしい、フリーエリアとはいえ、用心するに越したことはないと思うが、今心配なのは、あの二人が異様に目立っている事だ。


集合場所に、早い時間で来ているせいか、グローリー母娘はまだ来ていない。


先程から、近くを通る人が皆、男女関係なく、リールさん達に視線を向けている。


リール『なんだか、視線が痛いわ…。アイリ?私、似合ってないんじゃないかしら…?』

アイリ「いや、似合ってるから大丈夫だ。」

リール『そう…?じゃあ、アイリを狙ってるんだわ。』

アイリ「どういう事だ?」

リール『アイリは綺麗だもの、当然といえば当然だけれど、卑猥な目で見てくる奴もいるわ…殺る?』


いや、怖いですよリールさん、そういえば、昔、紅葉さんが、そういう目で見られた時、睨みを効かせてましたね…。それと同じ顔してますよ?


アイリ「おちつけ、姉さん、思ってくれるのは嬉しいが、ここはフリーエリアだ。この前みたいにMIOに捕まってしまうぞ。」

リール『もう、そんなヘマはしないわよ。』

アイリ「はぁ、心配だ…。」


アイリさん、そういう割には、顔が嬉しそうだ。


というか、この前みたいに?リールさんってまさか…。


「うひょー、刀挿してる、何コスプレ?ねえ、そこのお姉さん達?」

「今、暇でしょ?俺達と遊び行かない?」



考えを巡らせていると、リールさん達に近づく、若い男が2人。

リール『アイリ、あなたは綺麗なんだから、もうちょっと自覚というものを持ちなさいな。』

アイリ「いや、それはどちらかと言うと姉さんの方なんだが…。」

リール『何を言っているの?私なんかよりアイリの方が数千倍、いえ、数万倍綺麗だわ。』

アイリ「そ、そうか?」


…えーと、もしかして気づいてない?


「お、お姉さん達?おーい?」

「あの、無視ですか?」


若い男2人の顔は本気で泣きそうだ、さすがにこれは、少し同情してしまいますね…。


リール『それにしても少し来るの早かったかしら?』

アイリ「そうかもしれないな、姉さん。」


「あの、無視しないでくれない?」

「いや、ほんとこっち向いて…。」

と、男2人がアイリさんの肩に触れようとした瞬間。


リール『ねえ、生ゴミさん達、何、私の愛しい妹の肩に触れようとしているの?』

「「」」ヒッ

リール『さっきから、私達に声をかけてたのね、気付かなかったわ、ごめんなさい。けれどね、私の可愛くて綺麗なアイリになんの断りもなく、触れないでちょうだい?穢れちゃうから、分かった?分かってなくても、即刻、立ち去りなさい、ほら早く、視界から消えろ。』

「「は、はい!すみませんでしたぁぁぁぁ!」」ビューーーン


り、リールさんのあんな早口、初めて見ました。

鬼気迫る表情に、若い男2人は恐怖を感じ、すぐに逃げ去っていった。ていうか、最後、素でしたよね?


アイリ「…姉さん。」

リール『…何?』

アイリ「やり過ぎだ。」

リール『…はい。』

リールさんは、しゅんとしてしまったが、アイリさんの表情は何故か恍惚としているような気がする。


そんなこんなで、待っていると。


武美「こちら武美でござる、グローリー母娘を乗せた車が見えたでござる。」

リール『了解、その車から目を離さないように。全通信に通達、ここからは一切気を抜いてはだめよ。なにか異常を見つけたら、知らせるように。』

全員「了解。」


集合場所に、1台の黒い車が止まると。


ニーナ「天使様、アイリ様!こんにちは!その服とてもお似合いですね。」ニコニコ

セレス「こんにちは、リールちゃん、アイリ様。本当に素敵だわ。」ニコニコ

リール『セレちゃん、グローリー嬢、こんにちは。ありがとう、セレちゃん達もとても素敵だわ。』

アイリ「グローリー夫人、ニーナ、こんにちはだ、リールの言う通り、とても綺麗な服装だな。」


さすが、グローリー夫人だ、とても気品溢れる格好で、大人の女性の魅力を全面に押し出したような服装だ。

グローリー嬢は年相応と言った感じの爽やかな格好をしている。


というか、せ、セレちゃん…?なんでそんなフレンドリーなんですか!?


ニーナ「むぅ、天使様!なんで私だけ、そんな呼び方なんですか?ニーナとお呼び下さい!」

リール『ご、ごめんなさいね?ニーナ、これでいいかしら?それと、私の事は天使様じゃなくて、リールと呼んでね?天使様だと流石にむず痒いわ…。』

ニーナ「は、はい、リールさん!」エヘヘ

セレス「アイリ様、私のことはセレちゃんと呼んでもらってもいいのよ?」

アイリ「さ、さすがにそれは…。セレスさんでお願いしたいのだが…。出来れば私にも様付けはやめて欲しい。」

リール『セレちゃん、さすがにうちのアイリも尻込みすると思うわ。』

セレス「もう、仕方がありませんね。では、アイリちゃんと呼ばせてもらいますね。」


リールさんが異常なんですよ?なんでそんなに仲良くなってるんですか?

なんだか、親子なんだなぁと思います。


リール『そういえば、お出かけと言ってたけど、どこに行くの?』

ニーナ「それはですね、お買い物です!」


そう言って、リールさん達は車を下がらせ、繁華街を歩き出した。



リールside


inアイルス繁華街


ニーナ「リールさん、その、その首に巻いているものは何ですか?」

リール『…あー、これね、そのチョーカーなんだけど、似合って…ないかしら?』

ニーナ「い、いえ!とても良くお似合いです!」

リール『ありがとうね、ニーナ。』

アイリ「…。」

そうお礼を言って、ニーナの頭を撫でる。ニーナは、とても気持ちよさそうに目を細め、受け入れてくれていた。

その間、何故かアイリからの視線が痛い気がするが…。

それにしても、あ、あぶねぇ…。さすが一葉、ファッション性もばっちりだな。


セレス「あらあら、アイリちゃんは、リールちゃんの事大好きなのね。」ウフフ

アイリ「あ、いや、まぁはい…。」モジモジ

セレス「…あら、なるほど…ね?」


そんな会話が行われてるとは露知らず。


リール『おーい、2人ともあまり離れちゃだめよ?』

アイリ「あ、あぁ。」

セレス「はいはい、今行きますよ。」ウフフ


何か意味ありげな、セレちゃんの笑みに首をかしげたが、気にせずに、繁華街を歩いていると。


ニーナ「あ、まずはあそこです。」

ニーナが指を指す方向へ、目を向けると。


【フェリーチェクレーペ】という、お店だった。


アイリ「このお店は…?」

リール『さ、さぁ…?』

セレス「その様子だと、クレープを知らないの?」

リール『…くれーぷ?アイリ知ってる?』

アイリ「いや、知らないな…。」


くれーぷ、というのは、私もアイリも知らないものだ。

甘い匂いが漂ってくるので、お菓子の類である事は分かってはいるのだが…。


ニーナ「そ、そうなのですか!?」

セレス「あらあら、そうなの…?」

2人とも目を見開いて私たちを見ている。


リール『え、えぇ、有名な物なの?』

ニーナ「はい!とても甘くて、美味しいのですよ!」


甘い食べ物…。なんて魅力的なんだ!


リール『さぁ!皆!行くわよ!』キラキラ

セレス「あらあら、そう急がないの、リールちゃん。」


俺は意気揚々と、セレちゃんの腕に自分の腕を回している事も気付かずに、そのお店に突撃したのだった…。


アイリside



リールがセレスさんの腕を組んだ瞬間、嫉妬を含んだ殺気のような視線が、ニーナから、いや遠くから護衛しているメンバーから出ていた。

もちろん、私もそうだ、少しムッとする。

いくら甘いものに目がないから周りが見えなくなっているとはいえ、普通、腕を組んでいいのは、私じゃないのか?


ステラ『リールさん、ハレンチです…。』

武美『むぅ、逢引みたいで、ずるいでござる…。』

ラルク『…任務だってこと忘れてるのかも。』

通信機からはそんな声が聞こえてくる。


ニーナ「お母様だけ、ずるいです…。」

アイリ「ニーナ、私達も行くぞ。」


私達も急いで、そのお店に入っていった。



「いらっしゃいませ!」


お店の中は、とてもオシャレで、ホットケーキのような、とても甘くていい匂いが、お店中に漂っていた。賑わいを見せているところを見ると、人気のお店のようだ。


リール『セレちゃん!たくさん種類があるわ!』

セレス「そうね、何がいいかしら?」

その中で一際騒がしいリールに視線が集中していた。


「綺麗な人…。」

「お、おい、あの人達やばくねえか?」

「こ、声掛けてみようかな。」

「バカヤロ、お前なんか相手にされねえって。」


…目立ちすぎてないか?


店員「あ、あのお客様?」

リール『はい?』キラキラ

店員「うっ…そ、その声量を抑えてもらえると…。」

リール『あ、ごめんなさい…。』シュン

店員「あ、その、大丈夫ですので…。」アタフタ


店員は、しゅんとしたリールに対して慌て始め、すぐにフォローをする。

別に店員さんは悪くないだろうと、思うから、アタフタしている姿は、少しいや大分滑稽に見えた。


セレス「うふふ、店員さん?オススメは何かしら?」

店員「あ、はい、おすすめはこちらのチョコバナナクレープです。当店の1番人気でございますよ。」

リール『セレちゃん、私、チョコバナナにするわ。』ジュルリ

チョコ好きのリールはチョコバナナを選択する。


セレス「そう?他に何かおすすめは無いかしら?」

店員「えーと、でしたら、抹茶のクレープはいかがでしょうか?」

リール『抹茶…。』

セレス「…では、私はそれにします。」

セレスさんは、抹茶に反応する、リールを一瞥すると、それを選択した。

リール『アイリ達はどうするの?』

アイリ「そ、そうだな…。」

メニュー表を見てみると、たくさんの種類がある、フルーツ系からツナなどを使ったものまで、何にでも合うという事なのだろうか。


ニーナ「私はいちごクレープがいいです!」

先に決まっていたようで、ニーナは迷わずそれを選ぶ。

私も早く決めねば。あ、これは…。


アイリ「では、私はガトーショコラクリームを。」



しばらくして。


店員「お待たせ致しました、ありがとうございました!」

商品を受け取り、空いている席に座る。


セレス「はい、これはリールちゃん、これは、アイリちゃん、これはニーナのよ。」

リール『ありがとう、セレちゃん。』

アイリ「あぁ、申し訳ない、ありがとう。」

ニーナ「お母様、ありがとうございます。」

セレス「うふふ、いいのよ、さぁ食べましょうか。」


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