第29話 クローバとグローリー
アイリside
ドン・グローリーの意図が分からない。
わざわざ、凛怜いやリールを引き止める理由はなんだ?
念の為、警戒をしておこう。
リール『それで、ドン・グローリー、私を引き止めた訳を教えていただいても?』
ボル「そうですね、実は、リール=フィオーリ殿、いや、ドン・クローバ殿にご助力をお願いしたいのです。」
やはり、バレていたのか!
私は、戦闘態勢に入ろうとすると。
アイリ「っ!?」
リールは、私を手で制する。
リール『ドン・グローリー殿、まずお聞きしたい、なぜ私が、クローバファミリーのボスだと?』
セレ「私が言ったからですよ、ドンナ・クローバ殿。」
リール『…グローリー夫人とは、面識がございませんが。』
セレ「クロリデルファミリー、これで分かりませんか…?」
クロリデルファミリー、確か、凛怜がMIOに所属してた時に、ラミ達を助ける為、1人で潰した所…だったか?
セレ「あの時の御恩を、忘れた事はございません。あの頃から成長は、なされているようですが、その白銀の髪と紅色の瞳は全く変わっておりませんから。」
リール『…はぁ、グローリー嬢、申し訳ないが、このアイリと共に、一旦席を外して頂けませんか?』
アイリ「な!?リール!何故だ!」
リール『後で、事情は説明するから、とりあえずはグローリー嬢を連れて行ってくれないかしら?
ドン・グローリー、よろしいですか?』
ボル「余程のことだと、お見受けする。ニーナ、一旦、この方と一緒に、外に出ていなさい。」
ドン・グローリーがそう言うと、ニーナ=グローリーは、リールの方をちらっと見て。
ニーナ「…分かりました、お父様。」
リール『アイリ、グローリー嬢を頼んだわよ。』
アイリ「…了解した。」
私はグローリー嬢を連れて、渋々、部屋から出ていくのだった…。
リールside
リール『これで、心置き無くお話することが出来るでしょう。』
セレ「では、やはり、私達を救ってくださったのは…。」
リール『えぇ、私です。』
回想シーン
10年前のある夜の事(セレスティアside)
クロリデルファミリー本部
私達は、誘拐された。
この人達の目的は、グローリーファミリーの崩壊。
そして、過激派と穏便派の争いの火種を作るつもりなのだろう。
「ぎゃはははは!グローリーの奴らは今頃、お前らを取り戻す為に、必死になってる頃だろうよ!」
目の前の男はとても下品な笑いと共に、私にそう告げてくる。
セレ「くっ…。」
「無事に返すわけもねえのに、躍起になって、笑えて、腹がよじれるくらいだ。」
ニーナ「お、おかあさま…。」
セレ「大丈夫よ、ニーナ。きっと、助けに来てくれますよ。」
ニーナ「うぅ…。」
「希望を持つだけ無駄と知らないとは、お気楽なものだな!」
セレ「私達は貴女方に屈しません!マフィアのボスの妻を舐めないで!」
「気丈な事だ、まぁどちらにせよ、殺すんだけどな、悪く思わないでくれよ?じゃあな!」
そういうと、目の前の男は、私達を殺すため、持っている剣を私たちに向けてきた。
セレ(この子だけは守らないと。)ギュッ
私は目を瞑り、ニーナを抱きしめ、身体を張って守る。
しかし、しばらくしても来るであろう、痛みの感覚が来ない。
ザシュッ
「」グハッ
その代わり聞こえてきたのは、男のやられた声だけだった。
思い切って、目を開けると…。
セレ「っ!?」
血溜まりの上で、もう息をしていない男と、刀を持ちながらも、私達を見下ろす、白銀色の髪と冷たくも綺麗な紅い瞳をした、娘より少し年上と思われる、子供が立っていた。
セレ「あ、あなたは…?」
凛怜「…怪我、ない?」
セレ「え、えぇ、ない…です。」
凛怜「…じゃあ。」
その子は私達が無事な事を確認すると、早々に奥に進もうとした。
セレ「あ、あの!どなたかは分かりませんが、助けていただき、感謝します。」
凛怜「…別に。」
セレ「あ、あなたは、逃げないのですか?」
凛怜「やること…ある。」
当時は驚きました、こんなに小さい子がここに1人でいる?娘を持つ母親として、許せるはずがありません。
セレ「あなたはまだ子供です、1人なんて危ないに決まっているでしょう?!」
凛怜「俺は強い、問題無い。」
そう言ったその子の顔は、月の光に照らされ、決して子供とは呼べるものの顔をしていませんでしたが、全身を白い服に身を包んでいたからかどうか分からないが、それはまるで…。
ニーナ「…天使様?」
私の腕の中でニーナがそう呟く。
ニーナ「天使様が助けてくれたの?」キラキラ
子供特有の無邪気な表情で、白銀の子供へ近づく、ニーナ。
セレ「こ、こら、ニーナ!」
ニーナ「て、天使様、ありがとう!」
凛怜「…ん、もう安心。」
ニーナ「は、はい!えへへ。」
天使と呼ばれた、その子供は、相変わらず無表情だが、その声には温かさを感じさせるものがあった。
凛怜「外に出れば、安全、早く行け。」スタスタ
セレ「お、お待ちください、せめてお名前を…。」
白銀の子供は、私が言い終わる前に奥に消えていってしまった。
回想シーン終了
セレ「あの時、助けて頂けなかったら、死んでいました。改めて感謝致します。」ペコ
ボル「私から礼を言わせて欲しい。妻と娘を助けていただき、本当にありがとう。」ペコ
リール『…いえ、偶然通りかかっただけです、頭を上げてください。』
俺は顔を背けながら、そう言う。
俺はあの時、身体を張ってでも守ろうとしたこの人を、見捨てる事が、何故か出来なかった、それだけだ…。
セレ「ふふ、そうですか、それでも私達は助かったのです。貴女様がいなければ、確実に死んでいましたから。」
リール『いえ、それで、どのようにして私を見つけられたのですか?』
なんだか、気まづくなりそうだったので、話を本題に戻す。
ボル「…妻と娘の話を聞き、私は、銀髪と紅色の瞳をした子供という言葉を元に部下と一緒に助けてくれた人を見つけ出そうと、調査しました。しかし、見つけることが出来なかった。」
それはそうだろう、俺と紅葉の存在は零番隊にしか知られていないし、もし迂闊に俺と紅葉の存在を漏らせば、消されてもおかしくはなかった。
ボル「私は、諦め切れずに、レギンス総督に、直接交渉し、あの時の礼を言いたいから、誰なのか教えて欲しいと頼み込みましたが、時は既に遅く、貴女は抜けた後でした。また1からのやり直しだと、項垂れたものです。」
相当な苦労をしたのだろうと、窺える。
ボル「そして、諦めずに調査を続けていく内に、ある噂を耳にしました。【紅銀の鬼】という顔をフードで隠した、最強の殺し屋がいるという噂です。私と妻は、思いました、この方だと。そして、紅銀の鬼について、徹底的に情報を集め、名前までは不明でしたが、髪の色と瞳の色が完全に一致し、確信に至りました。」
リール『…確かに、紅銀の鬼は私の事です。それで、なぜ、私がドンナ・クローバだと?』
ボル「失礼ながら、カマをかけてみました。アイリさんでしたかな、あの方の反応で、というわけです。クローバファミリーは最強のファミリーと言われております、ですので、もしかしたら…と。」
なるほど、さすが伊達にボスをやっていないか。
これは、白状するしかないようだ。
リール『どうやら、全てバレているようですね…。お察しの通り、私はクローバファミリーのボスです。』
ボル「ひとつお聞きしても?」
リール『何ですか?』
ボル「なぜ、マフィアを立ち上げたのですか?貴女の実力なら、殺し屋でも十分やっていけるはずですが…。」
リール『羨ましかったから…ですね。』
ボル「…それはどういう?」
リール『すみませんが、これ以上は答えられません。』
ボル「そうですか、分かりました。」
セレ「では、私からも1つよろしいですか?」
リール『お答えできる範囲でなら。』
セレ「それが、貴女の素ですか?助けて貰った時と随分と、印象が違うので…。」
リール『なんと言ったらいいか…。』
セレ「もう少し崩していただいて、かまいませんよ。」
そう、グローリー夫人は俺に笑顔で言う。
ボル「そうですね、私にもそれで構いませんよ。」
リール『は、はぁ。』
なんで、こんな笑顔なの?いやまぁ確かにこういう喋り方は苦手だけどさ…。そんな期待した目で見られても…。
リール『では、公共の場では、丁寧に話しますが、プライベートの場は、崩します。それでよろしいですか?グローリー夫妻も崩していただいて、かまいませんから。』
セレ「えぇ、是非そうしてちょうだい。ねえ、あなた?」
ボル「あぁ!そうだな、それがいい。」
だいぶ砕けた感じになったが、これはこれで嬉しい。
ボル「そうだ、貴女の事は、他言はしないので、安心してくれていいからね。」
リール『それは、ありがたいわ。あ、それと、私の事はリールと呼んでちょうだい。』
セレ「では、リールちゃんと呼ぶわ!良かったら、娘とも仲良くしてちょうだいね?」
ボル「うんうん、私もリールちゃんと呼ぼう。」
ちゃん付けかぁ、中身は20代の男ですって言ったら、殺されそう…。
リール『え、えぇ、それでいいわ。』
セレ「私のことは、リールちゃんが呼び方を決めてちょうだい。」
ボル「私もリールちゃんに決めて欲しいなぁ。」
リール『えぇ!?』
何言ってんの、この人達!?名前…名前…。
リール『んー、そうね…。セレちゃんとボル君…とか?』
ボル「あははは、まさかこの歳でそんな呼び方をされるとは思わなかったよ、うん気に入った!」
セレ「うふふ、、セレちゃん、いいわ!なんだか、若返った気分よ!」
気に入ってくれたようだ。
リール『これからよろしくね。セレちゃん、ボル君。』
ボル「あぁ、何かあったら、必ず手を貸すとしよう!」
セレ「えぇ、私も手を貸すわ。」
リール『ありがとう。あ、そうだ、今回は表向きはただの護衛として、立ち回るから、そのつもりでいて欲しいわ。』
ボル「わかったよ、リールちゃん、娘をよろしく頼むよ。」
リール『えぇ、もちろんよ。』
なんやかんやあって、固い握手を交わしたが、フレンドリー過ぎたかな?と少し思ってしまった、俺なのだった…。
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