第2話 厄介事が次々と


凛怜side


エリスとの婚約(偽装)を了承してから、俺は頭を抱えていた。婚約をしてくれと言われた時点で頭を抱えたが、更にとんでもない事を言われたからだ。


エリス「私たちの偽装婚約に関してなんだけど、私たちの秘密にして欲しいの。」

凛怜「…なぜだ?」

エリス「すぐバレないためよ。」

一理ある、分かってる。だが、妹たちに嘘をつく事になる。それは罪悪感が湧く。


凛怜「…紅葉達に言うのはいいんじゃないか?」

エリス「ダメよ、あの子たちの態度でバレるでしょう?」

…否定できないな。これでバレたら本末転倒だ。

凛怜「分かった…。」

エリス「凛怜ならそう言ってくれると信じてたわ♡」

と、正面から俺に抱きついてくる。それだけでなく…。


エリス「凛怜たん♡」クンカクンカ♡ハスハス♡

俺の胸に顔をうずめて、匂いを嗅いだりしてくる。


凛怜「おい、人の匂いを嗅ぐな変態!」

エリス「えぇ、なんでぇ?いいじゃない婚約者よ?それともバレちゃうわよ?バレないようにしてくれるのよね?」

凛怜「くっ、確かにそうだが…。」

こういうことも許さなければいけないのか?

地獄だ、地獄すぎる…!


エリス「凛怜たんが可愛すぎるからダメなのよ。」

凛怜「は、はぁ?んなわけねえだろ!」

エリス「照れてるの?ねえ照れてるの?可愛い♡」ハァハァ♡

凛怜「う、うるせえ!離せ!くそ、力が強い!?」


こいつこんな力、どこから出てるんだ!?

エリス「凛怜たぁぁぁん♡」スリスリ♡クンカクンカ♡


凛怜「はぁ、見た目は綺麗なのにな…。」

俺のつぶやきが聞こえたのか、エリスは顔を上げ。


エリス「こんな私と婚約するのはやっぱり嫌?」

と、言ってきた。

凛怜「はぁ、婚約はともかく、嫌だったら、こうしてお前と喋ったりしねえよ。」

エリス「…。」

俺がそう言うと、急に黙りこくり、心無しか顔が赤い気がする。

凛怜「…どうした?」

エリス「凛怜って変わらないわね。」

凛怜「そうか?」

エリス「うん、変わらないわ。初めて会った時からずっと。あなたは優しいままだわ。」

俺にそう言うエリスに、

なんだか気恥ずかしさを覚えてしまい。


凛怜「…俺は優しくねえよ。変わらず…な。」

と、照れ隠しのようなものを言ってしまう。

エリス「ふふ、そうね。あなたはそういう人だわ。」


相変わらず、匂いを嗅いだりしているが、まぁもういいかと思い。

はぁ…もうどうにでもなれ…と、

俺はもう色々諦めて、飽きるまでやらせようと力を抜いたのだった…。



1時間後


まだエリスは俺に抱きついていた、もういいだろうと声をかけようとすると。


コンコン

紅葉「凛怜?大丈夫?もう入っていいかしら?」

と、紅葉の声が聞こえたので、やばいと思い。


凛怜「エリス、そろそろ離れろ。」

エリス「えー、いいじゃない。見せつけてやりましょ♡」

凛怜「いや、あのなぁ…。」

エリス「いいじゃない、婚約者なのだから。」

凛怜「いやそういう問題じゃ…。」

と、やり取りをしていると。


紅葉「…何してるのかしら?」

紅葉のドスの効いた声が聞こえる。

俺は、壊れた機械のように頭を動かしながら、紅葉がいるであろう扉の方に顔を向けると、

右から紅葉、瑠衣、愛凛、一葉が殺気マシマシで、こちらを睨んでいる。


瑠衣「これはどういうことかな?」

愛凛「答えようによっては、容赦はせんぞ。」

一葉「凛怜が嫌がってる様子は…ないね。」


凛怜「」ダラダラ

紅葉「凛怜、もう一度言うわね?何してるのかしら?」

凛怜「あ、いやこれは…だな。えーと…。」ダラダラ


や、やばいこれは下手なことを言うと殺られる…。

どうする!これは、シャレにならないやつだ!

助けを求めようと、エリスに視線を向けると。


エリス「ムフフ♡」クンカクンカ

くっ、こいつ気づいてるはずなのに、なぜその状態を継続出来るんだよ!?

瑠衣「なんで、いつまでも抱きつかせているの?」

凛怜「いやこいつが離れないから…。」

愛凛「凛怜なら無理矢理はがすことも出来るんじゃないか?」

一葉「まさかとは思うけど、下心があって抱きつかせてる…なんてことは無いよね?」

凛怜「そ、それは断じてないぞ!?」

紅葉「なら、なんで抵抗してないのかしら?」

凛怜「こ、これは言うに言えない事情があってだな…。」

瑠衣「へー、もちろん話してくれるんだよね?」


あーやばい、これ本気で怒ってる奴だわ。

殺気がさっきよりも桁違いに大きくなってるもん。

今、蛇に睨まれてる時のカエルの気持ちを味わってるもん。


凛怜「と、とにかくその怒りを抑えろ!」

一葉「何言ってるんだい?私達が怒ってるわけないじゃないか。」ニコッ

愛凛「あぁ、全く怒っていないぞ。」ニコッ

瑠衣「僕も怒ってないよ。」ニコッ

紅葉「もちろん、私も怒っていないわよ。」ニコッ


凛怜「いやいや、目が笑ってないぞ…。」

いやほんと、目だけが器用か!って言うくらい笑っていない。こいつら美人だったり、可愛い顔してるからそれがさらに怖さを引き立てている。


業を煮やしたのか、紅葉がエリスに向かって言った。

紅葉「エリス!あなたもそろそろ離れなさい!」


そうするとエリスは紅葉達に視線を顔ごと向けて。


エリス「嫌よ、婚約者に抱きついて何が悪いの?」

紅葉/瑠衣/愛凛/一葉「「「「は?」」」」

と、最大級の爆弾を投げ込んだ。


俺は、まためんどくさいことになりそうだと、思い、頭を抱えながら、項垂れるしかなかった…。




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