第16話 違反者の末路


凛怜side


俺は紅葉を抱きながら、ある所に電話をかけていた。

凛怜「」トゥルル

一葉『やぁ、凛怜かい?』

凛怜「あぁ、俺だ。」

一葉『オレオレ詐欺はお断りだよ?』

凛怜「いやちげえよ、凛怜本人だ!」

一葉『詐欺師はみんなそう言うんだよ!』

凛怜「…一葉、お前が俺の声を見分けられないなんて、ことはありえねえだろ。」

一葉『…そうだね。凛怜はそういう所があるよね。』

凛怜「ん?なんの事だ?」

一葉『いや、なんでもないよ。

それよりも、私に電話したって事は当たったんだね。』

凛怜「あぁ、相変わらず察しが良くて助かるよ。」

いつものふざけたやり取りをした後に、急に真面目になった一葉に俺は言った。


凛怜「既にあいつに発信機を付けてある、追跡してくれ。」

俺がいった発信機とは一葉特製のカメレオン型発信機だ。

俺が撃たれる前に、放っておいたのだ。

スイッチを押すと、対象にオートで近づき、対象の人間の身体の見つかりにくいポイントへ張り付く、そしてその色に変化することが可能なので、ステルス性も抜群という。

オーバーテクノロジーも真っ青な性能を誇っている。一部の激しい恋愛属性を持っている方が歓喜しそうな代物だ。これを紹介していた一葉の表情は少し、いや大分怖かったのを思い出した。



一葉『了解、まぁもうやってるけどね…。』

凛怜「早いな、助かる。」

一葉『見つけたよ、そっちに位置情報送るからそれを参考にしてね。』

凛怜「ん、分かった。」

一葉『あ、そうそう。後でその能力についても含めて色々聞かせてもらうからね。覚悟しておくように。』

…え?一葉は確かここにいないはずなんだけど、え?

凛怜「ち、ちなみに確認だが…一葉は今どこにいるんだ?」

一葉『え?情報管理室だよ?』

…どうやって知ったの?いや聞くのやめとこ怖いし。

凛怜「そ、そうか。それじゃまた!」

一葉『え、うんまたね。』ブツップープー

思わず自分の服を目で確認した。


瑠衣「…何してるの?位置情報送られてきたから早く行くんでしょ?」

凛怜「あ、あぁそうだな。行くか」

俺は冷や汗をかきながら返事をして、目的の場所に向かおうとした時。


愛凛「私も行くぞ。」

愛凛が目を覚ましていた。

凛怜「もう大丈夫なのか?」

愛凛「あぁ、実は前から目は覚めてた。」

と、いうことは…。

紅葉「ばっちり、見られてたわね凛怜。」

いつの間にか、紅葉も目覚めていた。

おいおい、勘弁してくれよ…。


凛怜「はぁ、やれやれ…。」

頭を抱えたくなる、全員に説明した方が良さそうだな…。まぁ今はとにかくだ、

凛怜「紅葉、立てるか?」

紅葉「ええ、問題ないわ。」

と言いつつも、少し危なげな紅葉に手を貸し、立ち上がりやすいようにする。


紅葉「ありがとう、凛怜。」

凛怜「あぁ、構わんよ。」

と、紅葉が立ち上がったところで。

瑠衣「ほら、イチャイチャしないの。」

凛怜「いやしてねえから、はぁ行くぞお前ら。」

幹部「「「了解。」」」

と、追跡を始めたのだった。


20分後


凛怜「と、まぁこんな気はしてたが。口封じってとこだろうな…。」

紅葉「そうみたいね。」

割と早く見つかったのは良いのだが、ナイフで一突きされ、死んでいるドン・ルードを見て、そう言わざるを得なかった。

凛怜「あんたもそう思うだろ?セグレット、いるんだろ?出てきな。」

と、俺が言うと

セグ「やはり、バレてましたか。」

と、セグレットが姿を現しながら言ってきた。


凛怜「あんなにも気配が出てりゃ、気づくっての。」

セグ「そうですか。それより、どうやら穏やかじゃないようですね。」

凛怜「あぁ、恐らくやったのはあの黒ローブの奴だろうな。」

セグ「なぜ、そう言い切れるのですか?」

凛怜「勘。」

俺がそう簡潔に答える。

セグ「勘ですか…あなたは変わりませんね。」

と、呆れて返された。


凛怜「心外だな、これでも結構当たるんだぞ。」

セグ「ええ、分かってますよ。あの黒ローブの女性は一体何者なのでしょう?」

凛怜「さてな、分からない。だが、穏便派ではないのは確かだ。相当な実力者ってのもあるしな。」

セグ「これは、私達も追う必要があるみたいですね。」

凛怜「はは、MIOが直々に動くのか?こりゃ、いよいよ、おおごとだな。」

と、笑い混じりで言うと。


セグ「貴方が言わないでください。あなたはいつも厄介事の中心にいるんですから。」

瑠衣「というよりは、厄介事に突っ込んでることの方が多いと思うけどね。」

紅葉「そうね、これじゃ、命がいくつあっても足りないわ。」

愛凛「まったくだ。」

凛怜「いや、元々この世界はそんなもんだろう!?」

セグ「ともかく、この方の処理はお任せ下さい。」


…ナチュラルに無視された?こんにゃろ。

凛怜「はぁ、あぁ頼むよ。セグレット殿。」

セグ「おぇ、凛怜様の口から敬称が出てくると気持ち悪いですね。」

凛怜「お前、ほんと嫌い。」

セグ「それで結構です。…お気をつけくださいね。」


何故か心配そうな表情で、そう言ってくる。

俺は、検討は付いていたが、少し意外だと思ったので、聞いてみることにした。

凛怜「何がだ?」

セグ「気付いているのでしょう?凛怜様、貴方が狙われている事に。」

凛怜「…。」

薄々は勘づいていた。今回の1件でそれが確信へと変わっている。


凛怜「ん、ありがとな。セグレット。」

セグ「いえ、私は私の勤めを果たすまでです。」

凛怜「相変わらず、堅えなぁお前。」

セグ「貴方が適当すぎるだけです。」


凛怜「まぁ、とりあえずこいつの処理頼んだわ。またなセグレット。」

と、俺は左手を上に上げて、帰っていく。

そんな俺に続いて、他の3人も俺の後に続く。


セグ「凛怜様、本当に気をつけて下さいね…。」


セグレットの声は凛怜に届いたのか、後ろを振り返り、笑みを浮かべていた。


その笑みが太陽ではなく、静かに夜を照らす月のような笑みで、少し影はあったが、きっと大丈夫だろうと、そう思わせてくれるような安心感を抱いてしまう。


セグ「不思議な人だ…。」


と、セグレットは人知れず、呟くのだった…。

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