第14話 紅銀の鬼


瑠衣side


凛怜「あぁ、お前達の兄ちゃんだ。お疲れさん。あとは任せろ。」


…まだ信じられない。2発の銃弾を食らって、まだ生きていられるなんて。ましてや、立って紅葉姉さんの一撃を片手で受け止められるなんてありえない。

でも、姿は凛怜だ。血のような紅色の目も、白銀の綺麗な長髪も、所々に血がついてるけど綺麗な白い肌も、頼もしい背中も、優しい声も、全て僕達が愛している本物の凛怜だ。

気づけば、僕の目にからは涙がでていた。


瑠衣「遅い…よ、凛怜。」

そう言うと、凛怜は、僕の頭に手を乗せ。

凛怜「あぁ、すまない。愛凛を連れて下がってろ。」

瑠衣「凛怜、1人だなんて、無茶だよ!」

立っているとはいえ、銃弾を食らったのだ。無事でいられるはずもない。なのに、凛怜は安心させるように、笑みを浮かべて。


凛怜「出来るさ。相手は紅葉だぞ。お前達の兄ちゃんが、妹に負ける訳ねえだろ?」


納得してしまった。

そうだった、この人は、僕達の凛怜は、誰であろうと負ける訳がないんだ。

僕はもう言葉はいらないとばかりに、気絶している愛凛を背負い、安全なところまで下がっていく。


そして、凛怜は紅葉姉さんに向き直り。


凛怜「さぁ、お説教タイムだ。俺の愛ある拳は、少し痛えぞ?紅葉。」


その言葉が合図になり、凛怜と紅葉姉さんの戦いが始まった。


凛怜side


紅葉「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

紅葉は今も尚、苦しそうに泣いてるように、叫んでいる。

紅葉の実力は相当なものだ。伊達にうちの実力No.2ではない。

それが暴走したとなれば、いつもより数倍強くなっていると見ていいだろう。


凛怜「さぁ、紅葉!殴るだけの説教はただの暴力だ。ならば、お前の主張攻撃から聞こうじゃないか!」

俺は、腕を胸の前でクロスさせ、ガードの構えをとる。

凛怜「さぁ、来い!紅葉!」

そういうと、紅葉は俺めがけてものすごい速さで移動し、拳で殴ってきた。

紅葉「うああああああああおおおおおお。」

凛怜「ぐっ。」

紅葉の拳が、クロスした俺の腕に当たる。

紅葉「あああああああああああああ。」

1発だけじゃ終わらず、何回も何回も両手の拳で打撃を俺に与えてくる。

…こりゃ、ちとキツいな。


はぁ、アレは正直使いたくねえが、まぁしゃーねえか。

そう思い、殴られていたが、それを受け止めそのまま前方へと紅葉を投げた。

投げられた紅葉はバランスを崩さずに、着地をしていたが、警戒しているようだ。

そして、俺は自分の能力を使う。


凛怜「吸血鬼の王ロード・オブ・ヴァンパイア

その瞬間、俺の身体は赤と白銀が合わさった、オーラを纏っていた。

目の色は変わらなかったが、獣のような瞳孔の目になっており、歯には犬歯が左右合わせて2つ。首から左の頬までにかけて、不思議な形のタトゥーのような模様が浮き出ている。

まさしく、吸血鬼のような姿になっている。

ちなみに、この能力の名付け親は、紅葉だ。


そして、これが【紅銀の鬼べにがねのおに】と、俺が呼ばれた所以であり、紅葉しか知らない俺の能力なのだ。瑠衣も驚きの表情をしている。


凛怜『…紅葉、正座。』

その一言で、先程まで、叫んでいた紅葉が正座をした。

これはこの姿の時でしか、使えない能力の1つで【王の支配】ヴァルテン・オブ・ロードという。簡単に話すと、俺が命令したことは例外なく、従うといったものだ。


俺は黙って、正座をしている紅葉の前に行き。


凛怜「さて、愛ある拳だ。」

と、言いながら角に向かって拳を叩き込み、角を叩き割る。

そして、紅葉の身体に纏っていたオーラは次第に薄くなっていき、やがて消えるのだった。

紅葉「り…ら…。そのす…が…た、ひ…さし…ぶりね。」バタッ

紅葉はそれだけを言い、気絶した。

俺はすぐに、紅葉を抱き抱えて、紅葉の耳元で。


凛怜「遅くなってすまない。---。」((ボソッ…

と、誰にも聞こえないように、言ったのだった。


凛怜「…瑠衣、お前も愛凛も大丈夫か?」

瑠衣「え?あ、うん大丈夫だよ。愛凛も大丈夫。」

凛怜「そうか、良かった。」

俺をひとまず安堵した。


瑠衣「…その能力について、後できっちり話してもらうからね?」

凛怜「…あぁ、分かってる。」


もう隠し通すことも出来ないだろうと、諦めた。

はぁ、説明めんどくさいなぁ…。


瑠衣「…めんどくさいとか思ってるでしょ。」

凛怜「いえ!思ってないです!はい!」

こ、こいつ俺の心を読みやがった。瑠衣恐ろしい子!と、こんな茶番はやめて。


俺は周りを見渡す。そして瑠衣に聞いた。


凛怜「なぁ、瑠衣?ドン・ルードと黒ローブの女は?」

瑠衣「あ、そういえば…!?いない!」

今気づきましたと言わんばかりに、周りを見渡している。取り逃したって事か、まぁしょうがねえか。


凛怜「とりあえず、落ち着け。あの状況だ、逃がすのも無理はない。」

瑠衣「とりあえず、治療班を呼ぼっか。凛怜も怪我人でしょ?」

凛怜「そうだな、瑠衣呼んでくれ。」

瑠衣「了解だよ。」


そして、この戦いは終わった。

はぁ、にしてもドン・ルードの奴どこに行きやがった…?気になることは沢山ある。早く情報も仕入れないとな。と、紅葉を抱き抱えながら、思う俺だった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る