第13話 鬼姫の慟哭

瑠衣side


紅葉「あぁああああああああああああああぁぁぁ!」


まるで泣いているかのような、叫びが辺りに響いている。そして、姉さんの身体が紅色に光りだした。

僕達は眩しさで、思わず目をつぶってしまう。


しばらくして、目を開けると光は止んでいた。

そして目を見張った、全身に紅色のオーラを纏い、紅色の髪にオレンジ色の目をして、額に鬼のような角を1本生やした【紅血あっけつ鬼姫おにひめ】と呼ばれるにふさわしい姿の紅葉姉さんがそこにはいた。


ジェ「な、なんだよこれ…。まさか異常種か!?」

復讐者「…。」

そう言って、ドン・ルードは怯えていた。

反対に、黒ローブの女は黙って見ているだけだったが、少なからず驚いている様子だった。


愛凛「こ、これは紅葉姉さんの鬼神化きじんかか…。だが、いつもより力が強い…!」


愛凛も勘づいているようだ、これは僕達が何とかしなければ…。と思っていると。

紅葉「」シュッ

紅葉姉さんが消えた。

「」バタッ

ジェ「な、なんだ?何が起こってる!?」

音がした方向にむくと、敵が急に倒れていた。

次々に敵だけが倒れるのだ。そして、敵はドン・ルードと黒ローブの女以外全滅した。ドン・ルードは腰を抜かしていて、黒ローブの女も動いていない。

だけれど、今は構っていられる暇はない。


敵しかやられていないという事実に僕はある仮説を立てて、僕の能力の1つ絶対感知オールセンスを発動して、紅葉姉さんの感情を読み取ると。


紅葉『リラ…ドコ…リラ…リラ…。トメテ。イモウトタチヲ、オソウマエニ…。』

こんな声が頭の中に響いてくる。それなら!


瑠衣「愛凛、まだ姉さんは若干理性があると見ていい!まだ、僕達で戻せるかもしれない。」

愛凛「そうか、ならば力の源を破壊する!兄さん少しの間、我慢しててくれ…。」

紅葉姉さんの力の源、それは角だ。あれを壊せば暴走は確実に止まる。ならばやることはひとつ!

そして僕達は能力を解放する。


瑠衣「神狼化フェンリル!」

自分の愛銃を腰から抜き、そう僕が叫ぶと、僕の頭から狼の耳が生え、お尻から銀色の毛並みのしっぽが生える。そして身体全体に雪のような白銀のオーラを纏っている。

愛凛「九尾化きゅうびか!」

愛凛も刀を出し、叫ぶと身体に火を纏って、狐の耳と9本の尻尾が生やし、構えていた。


愛凛「せいやぁぁぁぁぁ!」

愛凛が紅葉姉さんに斬りかかる。それを姉さんは腕でガードをする。

愛凛「なに!?そうか、鬼神化と同時に硬化も使ったか。さすが、クローバファミリーの実力No.2と言った所か…。」

今、愛凛が言った、硬化アーマーは身体全体又は一部分を鋼鉄のように硬く出来る。紅葉姉さんの能力の1つだ。能力を複数持っているのはクローバファミリーの幹部では普通なのだが、それ以外は違う。


能力は1人1つだけというのが、セオリーだ。

それを無理に2つ同時に使おうとすると、能力の暴走はもちろんのこと、理性を失い、やがて死に至る危険性がある為、それをリスクなく出来るのは、僕達の中でも紅葉姉さんと愛凛位のものだろう。


紅葉「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

紅葉姉さんは叫びながら、愛凛の刀を振り払い、拳を振りあげる。

愛凛「くっ、うおおおおお!」

それを愛凛は何とか刀で防ぎ、バックステップで下がり、体勢を整える。

瑠衣「愛凛、なんとか紅葉姉さんの隙を作って。」

愛凛「了解だ、瑠衣姉さん!はぁぁぁぁぁ!」

僕は白狼を構えながら、愛凛に提案をし、愛凛は隙を作ろうと、技をくり出す。

愛凛「狐火きつねび!」

青色の炎がけたたましく、紅葉姉さんに向かっていく。

紅葉「ああぁああぁぁぁぁぁ!」

しかし、紅葉姉さんは腕を思い切り振り上げ。地面に拳を振り下ろすと、衝撃波が生まれ、狐火を相殺する。


愛凛「くっ、ダメか。ならばこれはどうだ!」

刀に青い炎を纏わせ、大きく振りかぶる。

愛凛「狐火波斬きつねびはざん!」

先程とは比べ物にならない青い炎が斬撃のような形となり、紅葉姉さんに向かっていく、

紅葉「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

紅葉姉さんは青い炎に包まれ、苦しそうにしていた。そして愛凛が叫ぶ。


愛凛「瑠衣姉さん!今だ!」

そう聞こえた瞬間、白狼にオーラを纏わせ。

瑠衣「氷結狼牙弾ひょうけつろうがだん!」

銃弾が白狼から放たれ、周りを凍らせながら、紅葉姉さんの足元へ当たると。

紅葉「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

紅葉姉さんの腰から下が氷に覆われ、動けていない状態になっていた。よし!


瑠衣「愛凛!今だ!」

愛凛「うおあああああああ!」

愛凛が、紅葉姉さんの角に向かって、刀を振り下ろそうとする。これで終わるのだと、確信していた。だけど…。


紅葉「うおおおおおおおおおああああ!」パリーン


紅色のオーラがさっきよりも凄まじく、姉さんを覆っていた氷が全て砕け散ってしまったのだ。


瑠衣・愛凛「「!?」」

ドゴーン

愛凛「」グハッ

紅葉は愛凛を殴り、吹き飛ばす。

瑠衣「愛凛!」

私は愛凛の安否を確認する為、愛凛に駆け寄り、抱き抱える。

…どうやら気を失っているだけのようだ。

ホッと安心をするが、僕の顔に影がかかる。

僕の目の前には、拳に紅色のオーラを纏わせ、打撃を僕に食らわせようとしている紅葉姉さんだった。

拳がもうそこまで迫ってきている。


もうダメだと、僕は目を閉じ、来るであろう衝撃に備えた…。


「おい、瑠衣。諦めるのはまだ早いんじゃねえか?」


この優しい声を僕は知っている。だって、この声は…。目を開け、確認する。

紅葉姉さんの拳を片手で、受け止めているその人を、誰よりも愛しい人の背中を…。


瑠衣「に…い…さん?」

凛怜「あぁ、お前達の兄ちゃんだ。お疲れさん。あとは任せろ。」


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