第26話 魔素溜まり調査隊

数日後、契約魔法の研究者ジャレッド先生から、魔素溜まり調査の件で至急来るようにと呼び出しを受けた。

すぐに研究所へ向かうと以前の応接室に通される。

「急で悪いね。よく来てくれた。」

「いえ、こちらがお願いしたことですから。魔素溜まりが見つかったんですね?」

「その通りだ。しかも今回のはかなり規模が大きいようだ。そのため、可能な限り早く調査に向かいたいのだ。明日の朝出発できるか?」

「いつでも構いませんよ。準備は整っています。」

「うむ、では7時に東門に来てくれ。私は同行者を集めねばならんのでな。資料を渡しておこう。目を通しておいてくれ。」

そう言ってジャレッド先生は足早に去っていった。


渡された資料を読んでみるか。


調査は先生の開発した魔素を取り込む魔道具を、雇った冒険者に貸し出して行っているようだ。

発見された魔素溜まりの場所は領都防衛戦のあった東の森の奥地。一般的に魔素溜まりのある場所では変異種と呼ばれる強力な魔物が発生することがあると言われている。今回の領都防衛戦では変異種は確認されていない。魔素溜まりが確認されたのは領都防衛戦の後であり、今回の魔物の氾濫とこの魔素溜まりとの因果関係は不明。

現在も冒険者による周辺の監視は継続中。変異種の発生の危険性があるため、魔素溜まりの外から監視を行っているが、魔素溜まりの規模が大きく全体の監視は不可能。魔道具の結果では魔素の濃度も通常の魔素溜まりより遥かに高い数値を記録している。・・・


俺、付いていったら足手まといになりそうな気がしてきた。

だが、もし本当に超自然的な存在の精霊というのがいて、契約魔法が成功すれば大きな力を得ることができるかもしれないのだ。どこまでが事実なのかは分からないが、伝説の勇者は精霊と契約して大きな力を得ていたと言われるわけだしな。

魔法のほとんどに適正がなかった俺は契約魔法に縋るしかないのだ。明日は気合いを入れていこう。

ロッドで殴る以外の攻撃手段を俺は手に入れるんだ!


翌朝、東門で待っているとジャレッド先生と同行者二名が到着した。

ちなみにジャレッド先生も戦闘員だ。魔法が使えるらしい。

今回の同行者の方々はジャレッド先生の知人でクレイグさんとカルバンさんという。もちろん戦闘員だ。

この四名でパーティを組み、調査地へ向かい監視中の冒険者と合流する。

四名のパーティでの役割は


ジャレッド先生:魔法使い(ドワーフのおっさん)

クレイグさん:両手斧使い(ドワーフのおっさん)

カルバンさん:盾・メイス使い(ドワーフのおっさん)

俺:斥候・契約魔法検証要員


初めて組むパーティがドワーフのおっさん三人と一緒か・・・

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今回は俺が斥候なので先導することになる。森の地図は受け取っているが、迷わずに先導できるだろうか。

先行して森を疾走しているとオークを発見したので、ドワーフトリオの元に戻る。

「オークが一体いますがどうします?」

「時間を優先したい。倒したほうが早いなら倒してくれ。時間がかかるような敵なら可能な限り迂回してくれ。」

「了解。倒しますのでこのまま進みましょう。」

サクッとオークを撲殺して、魔石だけ取り出して後は捨て置いた。

昼過ぎには開けた場所に出たので休憩しつつ、進行状況の確認をする。今のところは予定より早く進めれているようだ。防衛戦後で魔物の数が減っているからだろう。

この日はその後も順調に進むことができた。夕方には川がある地点まで辿り着き、川を越えた所で今日は野営をすることになった。食事は俺のマジックバッグにあるもので済ませて早めに休むことにする。夜の見張り番は順番に行う。俺の順番は最後だったので、さっさと寝ることにしよう。


いよいよ明日は調査地点に辿り着く。契約魔法がついに役に立つ時が来るかもしれないと思うと、わくわくしてきた。今日寝れるだろうか。

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ぐっすり眠れました。

見張り番を交代して、周囲を警戒する。そろそろみんなの朝飯の準備をしておくかな、と考えていると危険察知が反応する。気配察知にはまだ反応はない。距離は遠い、敵もまだこちらに気付いていないはずだ。このまま通り過ぎてくれれば良いが・・・駄目だな。こちらに向かってきている。

急いでドワーフトリオを起こして戦闘準備に入る。

気配察知の範囲に入った。

「敵確認。数は一匹。オーガです。」

「厄介なのが出たな。足止めしてくれ。魔法で仕留めよう。」

前衛三人が前に出る。まずは俺が空中移動でオーガの頭上を飛び越える。

俺に気を取られたオーガにカルバンさんが一気に詰め寄り、メイスで一撃を入れる。しかし、オーガは硬いので、怯まずに反撃をしてくる。俺が頭上から、クレイグさんが背後を取るように動き、隙を見て攻撃を加えていく。

カルバンさんがオーガの攻撃を盾で弾いて、飛び退いて距離をとる。そのタイミングで俺とクレイグさんもオーガから距離をとる。

そこにジャレッド先生の魔法が飛んできて直撃!


飛んできたのはドリルだった。高速回転しながら飛んできたドリルが、オーガの強靭な皮膚を貫いた。

すかさずクレイグさんが斧を勢いよく振り下ろし、首を刎ねて戦闘は終了した。


刺さっていたドリルは霧散して消えた。

あれがドリル魔法か。魔力でドリルを作り高速回転させて射出する。強力な魔法のように見えるが、ジャレッド先生のスキルレベルが高いからこそ為せる技である。スキルレベルが低いうちは戦闘では何の役にも立たない魔法だ。発動にすごく時間がかかるのと射程が短いのだ。さっきジャレッド先生もオーガに走り寄って、三メートル位の位置で撃っていた。使い所の難しそうな魔法だ。そもそも物作りをする職人の人が主に習得する魔法なのだ。資材に穴を空ける時に使うんだとか。

しかし、ドリルは男のロマンだ。俺もあの魔法使ってみたい。スクロールはまだ見たことがないので、適正があることを祈っておこう。

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