第21話 スキルレベル向上計画

領都に到着して数日経過した頃、フィデルさんから呼び出しがあった。フィデルさんは既に新しい新居に滞在しており、そちらに向かうことになった。新しいローレンス商会本社の裏に新居はあった。出社までの時間を気にしなくても良いのは羨ましい。

新居にお邪魔してフィデルさんの書斎に案内される。途中の部屋でチャールズさんが書類に向かって仕事をしているのが見えた。この人、事務仕事もするんだな。本当に有能な人だな。御者という肩書はおかしいんじゃないかな。でももう驚かないよ。だってチャールズさんだからね。

フィデルさんからの話はレイクスに戻る日が決まったという話だった。領都の店で働く人の面接が大体目処がついたらしい。3日後に出発ということになった。書斎まで案内された理由は、新しい従業員用にシャンプー・リンスの追加を寄越せという話があったからだ。既に一般市民の間でもシャンプー・リンスは噂になっているらしく、出処を隠すのをより慎重にする必要があるそうだ。噂のシャンプー・リンスを新しい従業員に与えることで仕事を頑張ってもらうというわけだな。さすが商会長、人心掌握を分かっていらっしゃる。いや、最初は仕事じゃなくて新人教育という名の過酷なトレーニングだったか、この商会の場合は。


領都観光と訓練所で時間を潰しつつ出発を待つことにした。

訓練所で模擬戦をしたあのパーティは全員、無事Dランクに昇格したらしい。あの実力でDランクになれるのかと正直驚いた。Cランクの『赤い羽根』パーティと比べると実力の差は歴然なのだ。DランクとCランクの間には隔絶した差があると思っておいてよさそうだ。

夜は焼き鳥の缶詰の空き缶を金属魔法スキルで変形させたりしている。すごくゆっくりと変形していく。この魔法の使い道は今の所思いつかない。

魔道具作製スキルも試している。光の魔道具は明かりが弱いが一応成功したといっていいだろう。このスキルには割と期待している。今考えているのは、魔晶石に浮遊効果を付与したものをたくさん作って、飛行する乗り物が作れないだろうかという案だ。まだまだスキルレベルが足りないので、できることは限られている。やはり魔物討伐に力を入れて、スキルレベル向上を図る必要がありそうだ。

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レイクスに戻る日がやってきた。

やり残したことはなかったかなと思ったが、一ヶ月後位には戻ってきてここを拠点にするのだ。特に思い残すこともなかった。そして、何事もなくレイクスに戻ってこれた。


俺は早速、スキルレベル上げ計画を始動することにした。そろそろ森の奥にも入ってみようと思う。今回はオークの討伐を目標にしている。冒険者の間ではオークを単独で討伐できて一人前みたいに見られるらしい。要は強さの指標になるわけだ。

いつものように気配を消して慎重に進んでいると、気配察知に何かひっかかった。

これはブラッドバイパーだな。今回の狩りで特に警戒していた魔物だ。

こいつの接近に気付かず、負傷する冒険者は多いと聞いている。確かに気配察知に反応はあるが、結構分かりにくい。多分、気配を消すタイプのスキルを持っていると思われる。こいつに噛まれると出血が止まらないらしい。出血毒というものを持っているそうだ。そのため、今回は毒消しポーションも準備してきている。藍色の液体だ。できれば飲みたくない。

隠密勝負ならヘビごときに負ける気はない。いつもの頭上からの一撃で先手を打たせてもらおう。

木の上にいるのを目視できた。結構でかいヘビだ。地面に叩き落として、すぐさま追撃して頭を狙って殴り続けた。最後は頭を叩き潰した。解体ナイフで頭を切り落とし、マジックバッグに放り込んで先に進む。


歩みを進めていると鹿を発見したが、今回は無視した。今回はあくまでも魔物討伐が目的なのだ。


更に進み、木の上で少し休憩していると、気配察知の範囲の端に何か飛び込んでくるのを確認。身の危険を感じ、すぐにその場を蹴って地上に飛び降りる。俺が立っていたあたりに何かがぶつかる音がした。空からの襲撃。おそらくフォレストバード。こいつの厄介なのは、大した威力ではないが風魔法を使うことだ。さっきの攻撃も多分それだ。再度、気配察知の範囲に入ってくる。その方向に障壁を出しておくと、風魔法と思われるものがぶつかる。そのやり取りが何度か続いた。

うーむ、このままだと防戦一方だ。そう思っていると、フォレストバード本体が空から突っ込んできた。そして障壁にぶつかって倒れた。頭を潰してあっけなく戦いの幕が下りた。どうやら知能はあまり高くないようだ。

首を落として木に吊るし、血抜きをする。

もうオークの生息圏内に入っているはずだ。血の匂いでおびき出す作戦に変更だ。

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