第20話 Eランク冒険者との模擬戦

次は冒険者ギルドに向かうか。

しかし、でかい街は移動に時間がかかるのがいかんな。

おっ、ここは飯屋か。この街をしばらく拠点にすることになるわけだし、うまい飯屋の1つや2つ知っておかねばなるまい。ここで昼飯にするか。

他の客が食べているものを見る。あれはピザじゃないか!今日のおすすめになっているフォレストバードとトマトソースのピザを注文することにした。

うむ、ピザがまずいわけがない。これはマジックバッグにストックが欲しい。持ち帰り用としていろんな種類のピザを大量に買っておいた。今後は気に入った料理はストックを買うことにしよう。旅の途中もうまい飯が食いたい。毎日、カツ丼は無理だ。


冒険者ギルドに到着。領都のギルドというだけあって立派な建物だ。きっと訓練場もさぞ立派なのだろう。

まずは依頼掲示板で情報収集、そして各施設を見学して回った。最後に少し体を動かしていくかと訓練場に向かった。レイクスの訓練場は利用者が少なかったが、ここの訓練場は割と利用者が多いようだ。

俺はいつものように隅っこでトレーニングしたり、案山子に打ち込みを行ったりした。

「おーい、そこの黒い人。よかったら一緒に模擬戦しないか」

黒い人って俺か。確かに防具は黒いからな。訓練場の主って呼ばれるよりましか。今更、冒険者に絡まれる展開がくるとはな。

「ん?俺か?武術は最近習い出したばかりだから俺は弱いぞ。」

「いやいや、さっきの打ち込みは見てたよ。綺麗な型だったよ。相当訓練してるだろう?打撃武器を使ってる人との模擬戦も経験してみたくてね。声をかけさせてもらったんだよ。」

「経験は確かに大事だな。ではお願いしよう。」

その後、彼のパーティメンバーを紹介された。全員十代後半くらいの若造だな。Eランクのパーティで近々昇格試験があるそうだ。それでみんなで訓練しているんだとか。訓練場の利用者が多いのは試験があるからか。

早速、さっき声をかけてきた彼と手合わせすることになった。彼は盾と訓練用の木剣を使うようだ。俺は訓練用の木の棒で挑んだ。もちろん、スキルはなしだ。

結果、割と普通に打ち合えた。他に、両手剣使いや槍使いの人とも模擬戦したが、拮抗した良い試合だった。つまり、武術面でいえば俺はEランクくらいの実力ということか。強者としか手合わせしたことがなかったから、自分の実力が分からなかったんだよな。でもスキルの数だけならCランク位の人と同じくらいあるんじゃないかと思っている。金に物を言わせてスクロールを買い漁ってるからな。役に立ってないスキルが多いけど。

最後に、盾と剣使いの彼がスキル有りで試合をしたいといってきた。こちらも試してみたいことがあったので了承した。

相手は開始と同時に「フィジカルブーストッ!」と叫んだ。すると薄っすらと赤い光に包まれた。

何で彼は技名を叫んだのだろうか?念じればスキルは発動するのだが。

フィジカルブーストというスキルは俺も知っている。スキル屋にもあったし、資料室でも確認している。一時的に身体能力を全体的に向上させるスキルだ。でも見るのは初めてだ。彼が技名を叫ばなければ、こちらはあの赤い光はなんだろう?と警戒するのだが、効果が分かっていれば恐れることはない。

彼は真っ直ぐこちらに走ってきた。

さっきまでの模擬戦のときより明らかに速い。脚力も向上しているようだ。

新しいスキルを試すのに丁度良い。俺は彼の足に手を向けて引力スキルを発動させた。

走っている時に1秒間だけとはいえ、足を引っ張られたらどうなるか。

彼は盛大に転倒した。彼の首元に棒を突きつけて試合終了だ。

相手は何をされたのかも分からないだろう。引力スキル思ったより使えるじゃないか。地味だけど。

「足元には注意しなよ。俺の勝ちだ」

何をしたのか尋ねられたが、俺は手札は明かしたくないと言って答えるのは控えた。彼は素直に納得して、とても良い勉強になったと礼を言ってきた。彼はもうスキル名を叫ぶことはないだろう。


その後は銭湯に行って汗を流し、普通に領都観光を楽しんだ。

夜はいつものように一人で部屋飲みだ。缶ビールを飲みながら今日の出来事を振り返る。

一人でする訓練も大事だが、実力の伯仲した相手との模擬戦も良い経験になるな。今後は実戦経験を積むことをメインにしていくか。スキルレベルももっと上げる必要がある。レイクスに帰ったら魔物狩りを頑張ろう。

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