第5話 レイクスの街到着

レイクスの街に到着する。身分証の提示などは求められなかった。

馬車に揺られながら街の様子を観察する。『綺麗な町』この一言に尽きる。絵本にでも出てきそうな町並みだ。多種族国家のようでこの街にもドワーフ・エルフといったいろんな種族の人がいる。俺と同じような黒髪の人もいるので、目立つことはないだろう。

今、走行中の道はメインストリートといったところか。お店が立ち並び活気がある。治安の良い地域だと聞いていたので薄々気付いてはいたが、この地域の統治者は有能なのだろう。途中に広場があり、そこには露天も多数並んでいた。夕方前なので半数くらいは店仕舞い中だったが。


ローレンス商会のお店に到着する。話で聞いていたよりも立派なお店ではないか。レイクスでは中堅規模の商会と聞いていたが、これで中堅規模かと疑ってしまった。明らかに周辺の店よりも建物がでかい。

護衛の『赤の羽根』パーティとはここでお別れだ。

「では、これにて護衛依頼完了となります。おかげさまで今回も無事帰ってくることができました。皆様、本当にお疲れさまでした。」

「こちらこそ!またいつでも指名依頼をお待ちしていますよ!」

『赤の羽根』パーティはギルドへ報告後、打ち上げのようだ。この4人を見ていると冒険者としての生き方も憧れるな。冒険者ギルドもそのうち見に行ってみるか。


「フィデルさん。お店を見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんですとも。どうぞ、ごゆっくりと見ていってください。」


道中の話で聞いていたのだが、フィデルさんのお店は雑貨屋だ。特に革製品をメインに扱っている。ちなみにローレンス商会の『ローレンス』はお祖父様のお名前らしい。フィデルさんで3代目だ。

雑貨屋というだけあって品目が多い。今回はバッグとフード付きコートを買いたいと思っている。マジックバッグがあるのだが、引ったくりとかに遭うかもしれないし、何より片手がふさがってしまうのだ。肩掛けタイプのバッグで両手をフリーにしたい。マジックバッグは潜影スキルで影の中に入れておくことにする。それが可能なのは昨日検証済だ。

予算1金貨のつもりだが、買えるかな・・・。

フィデルさんにおすすめを聞いて、バッグはすぐに決まった。ヒュージライノスのという魔物の革のバッグだ。うん、丈夫そうだし大きさも丁度いい。大銀貨7枚也。既に予算オーバーの予感がするが、一応コートも見せてもらう。なんでも新作のイチオシがあるそうだ。

「こちらです!キラークロコダイルのコートです。希少な革が入手できたのですが、加工できる職人を探すのに苦労しました。耐水性はもちろん、軽くて丈夫なので実用性バッチリです!」

クロコダイル?ワニ革にしてはただの真っ黒い生地にしか見えないが。触ってみると確かに軽いし、防水性能も高そうだ。

「おいくらです?」

「金貨3枚です!」

ふざけんなよ。あんたこっちの財布事情知ってるだろ。ボールペンの売上の金貨2枚しかないんだよ。生活費も残しとかないといけないんだよ。ああ、ボールペンをもっと寄越せってことか?

「生憎手持ちがないのですが・・・」

「何か珍しいものでもお持ちでしたら買取いたしますよ?」

「ふむ・・・珍しいものですか。」

やはり、それが狙いか。しかし、無限に取り出せるといってもあまりボールペンは流通させたくない。何が良いだろうか。ポケットティッシュか、シャンプーとリンスか。焼き鳥の缶詰も保存食として売れそうだが、ゴミのポイ捨てが問題になりそうだ。単価的にもシャンプー・リンスの方が高く売れそうだしこれでいくか。

「この国では毛髪用の石鹸というものはありますか?」

「毛髪用?普通の石鹸ならございますが、毛髪用というのは聞いたことがありませんね。」

旅行用小型シャンプー・リンス(各50ml入)を1本ずつ取り出す。乾燥性敏感肌用のちょっといいやつだ。携帯用のものなので量は少ないが、ちょっとしか入ってないからこそなんか高級感が感じられる!

「ほう、これはきれいな容器ですね」

「でも使ってみないと分かりませんよね。それはサンプルとして差し上げますので今日お風呂に入るときに使ってみてください。」

そう、お風呂があるのだ。フィデルさん宅にもあるらしい。一般の庶民宅にはないようだが、銭湯のような施設があるらしいのだ。自分も早く行きたい。

使い方を説明して、女性の方にも使ってもらって感想を聞くといいですよと付け加える。

「今日のところはバッグだけ購入いたしますよ。」

大銀貨7枚支払ってバッグを受け取った。会計は美人な店員さんが応対してくれた。そして明日の午前中にまた来店することを伝えて店を後にする。

宿屋はフィデルさんおすすめの宿屋が近所にあるようなので、そこに泊まることにした。既に暗くなり始めており、先に宿を確保すべきだったと後悔したが、なんと店内を見ている間に御者のチャールズさんが予約してくれていた。近所なのでチャールズさんの案内のもと徒歩で向かう。


宿屋『静寂のひととき』に到着した。1泊8銀貨、朝・夜食事付きで1泊大銀貨1枚だ。その都度、料金を払えば食事は食べれるとのことだったので、食事はなしにした。とりあえず10泊分お願いする。フィデルさんの紹介ということで大銀貨7枚にまけてもらった。財布が軽くなってきたので有り難い。


部屋は203号室だ。シンプルだが清潔感の有る部屋だ。『静寂のひととき』という名前の宿屋だけあって、しっかりした造りの建物のようだ。壁もきっと厚いのだろう。

宿泊場は確保したが、ようやくスタートラインに立ったというところだ。いつまでも無限物資を売っての生活ではつまらない。ちゃんと働いてお金は稼げるようになりたい。そのためにはまず情報収集と準備だ。明日は、フィデルさんのお店に行って商談。そして生活に必要な物を購入する。次は服屋で服を購入する。いつまでもジャージ姿で歩きまわりたくない。そしてギルドを見て回って情報収集・仕事探しだ。


今日は旅で疲れているので早く寝たい。さっとカツ丼を食べて、体を拭いて就寝だ。あ、ビールがあるんだった。今日は飲もう。しかし、異世界生活2日目でもうカツ丼に飽きてきたな。

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