第2話 現状確認
まずは情報が必要だ。ステータスをもう一度表示させて確認してみる。
ステータス
名前:ルノ
性別:男
年齢:26歳
職業:商人
種族:人間
スキル:忍び足Lv1、気配希薄Lv1、精神耐性Lv1
固有スキル:潜影Lv1、障壁Lv1
称号:次元の狭間を超えし者
改めて見ると・・・しょぼいなステータス。それに職業商人って・・・まあ営業職だったから商人なのか。
スキルに精神耐性というものがある。この異常な状況でパニックに陥らずに割と落ち着いていられるのは、このスキルのお陰なのだろうか。
気配希薄なんて存在感ないってか。確かに目立たないように生きてきた自覚はあるが・・・。いや、深く考えるのはやめよう。それより、固有スキルはなんかすごそうじゃないか!しかし、スキルはどうやって使うのか。じっとスキル名を見ていると詳細が表示された。
固有スキル:潜影Lv1・自身の影に潜れる。影空間の大きさはスキルレベルに影響する。
試しに潜影スキル使用と念じてみる。自分の影を見てみるが特に変化はない。地面に手を当ててみる。すると手が地面にすっと消えた。
おおお、中に入れる!でも狭い!
深さは1メートル位だろうか。しゃがめば何とか全身入る。
影に潜ったまま移動とかは無理っぽいな。入ったらその場から動けん。かくれんぼしたら絶対見つからないな。
とりあえず外に出る。他のスキルも確認してみるが、忍び足と気配希薄は効果がよく分からなかった。
障壁はイメージした形、大きさの透き通った薄紫色の板が出現した。これで身を守れということか。
しかし、攻撃手段がない。スキル構成が地味すぎる。逃げるか身を守るかの2択だもんな。異世界転移したらチートスキルがもらえるんじゃなかったのか。
気を取り直して称号の確認をしてみる。スキルと同じように詳細が表示された。
称号:次元の狭間を超えし者・次元の狭間を超えて、生存した者の証
生存した者・・・ということは死ぬ可能性があったということなのか。生きてこの世界に来れた事は幸運だったようだ。記憶の一部をなくしたことは些細なことだったと思うことにしよう。
そういえば、俺は日本語を喋ってるつもりだったが、普通に現地住人と会話ができてたな。それらしいスキルはないのだが、この称号の効果だったりするのかな。まあ、会話ができてるならいいか。
ステータスから読み取れる情報はこの程度か。次は所持品の確認をしよう。
着ているのはスーツ。ポケットには財布と自宅のアパートの鍵があった。スマホもあったはずだが、失くなっている。免許証などを入れていたカードケースもない。盗られたのか・・・?いや、財布はあるからその可能性はないか。落としたのかな?
出張用のビジネスバッグを確認してみた。バッグを覗いてみると真っ暗だった。
なんだこれ・・・どうなってんだ俺のバッグ。
バッグの中身を確認しようと思ったのだが、このバッグに手を入れても大丈夫なのだろうか。正直怖い。すごく怖い。エレベーターに落ちたときの真っ暗なあの場所のような雰囲気なのだ。しかし確認はせねばとひっくり返してみる。何も出てこない。やはり手を入れてみることにした。緊張しつつおそるおそる手を入れてみる。
おっ!これは・・・バッグの中身の情報か?
手を入れた瞬間に脳裏に中身の内容が浮かんだのだ。ボールペンやら着替えの下着やら・・・もともと出張用にバッグに入っていたもののようだ。さらにコンビニで購入したものも中に入っていた。そこで腹が減っていることを思い出す。晩飯用に買ったカツ丼を食べることにする。熱々の状態で出てきた。そしてバッグにほとんど重量を感じないことに気付く。
よくある異世界転移もののマジックバッグとか、アイテムボックスってやつか。
カツ丼が温まっているのは時間経過がないということか。
どれくらい入るのか容量の検証もしたいところだが、今は飯だ。
カツ丼を食べていると、部屋のドアがノックされた。返事をして出てみると、さっきのフィデルさんという人だった。
「ルノさん、一階で夕食が食べれますがどうします?」
「ああ、私の分は結構です。手持ちがありましたので。お気遣い有難うございます。」
「そうでしたか。では今日は早目に休んでくださいね。」
フィデルさんは立ち去って行った。この世界の食事も気になるな。やっぱりご馳走になった方が良かったかな。だが、必要以上に世話になるのも悪い気がするな。
カツ丼の続きを食べ終えて、お茶を飲む。そしてゴミをどうするか迷ったがバッグに入れた。その際に、妙なことが起きていることに気付く。バッグの中身一覧の中に食べたはずのカツ丼があったのだ。もちろん今入れたゴミも一覧の中にある。飲んだお茶も2種ある。
緑茶(500ml入ペットボトル)
緑茶(500ml入ペットボトル)開封済
こんな感じで2種類になっている。
新品のお茶を取り出してみる。しかし表示は変わらず2種類ある。取り出した新品のお茶をバッグにしまってみる。
緑茶(500ml入ペットボトル)×2
緑茶(500ml入ペットボトル)開封済
何度か新品のお茶を取り出してみたが、どんどん増えていく。しかし開封済みの方は増えなかった。カツ丼も同様に新品は無限にでてくる。ボールペンなども試してみると何本でも取り出せた。
これは増殖バグってやつか・・・。
俺の出張用ビジネスバッグは無限増殖バグ付きマジッグバッグに進化を遂げたわけだ。
俺自身にはチートスキルはなかったのに、バッグがチートを得たのか・・・。しかしこれで食糧・飲水問題は解決だ。
そのバッグの中身はこんな感じだ。
カツ丼(熱々)
コンビニの割り箸
コンビニのおしぼり
ミネラルウォーター(500mlペットボトル)
緑茶(500mlペットボトル)
野菜ジュース(紙パック)
缶ビール(350ml)
焼き鳥の缶詰2種(たれと柚子胡椒)
カマンベールチーズ
チョコクロワッサン
アンパン
ジャージ(上下)
下着(上下)
靴下
旅行用小型シャンプー・リンス(各50ml入)
整腸薬
ファイルに閉じてある書類
ボールペン(黒・赤)
歯ブラシセット
ポケットティッシュ
ハンドタオル
他にさっきのゴミも入れてあるが省略する。短期の出張予定だったので、ほとんど荷物を持ってきていない。しかし、タブレットや充電器なんかも入れてあったはずなのだが失くなっている。うーん、次元を超えることができるものに何か条件でもあるのだろうか。まあ、失くなったものは仕方がない。有るものでなんとかするしかない。とりあえず、スーツを脱いでジャージに着替える。脱いだスーツをバッグに入れる。入れたり出したりしてみたが、増殖はしなかった。つまり、増殖するのは次元を超える際にバッグに入っていた物だけということになる。ジャージは無限増殖するがスーツは1着。スーツは大事にしなければ。明日はジャージで過ごそう。
室内でできる範囲でスキルの検証も行った。
障壁スキルを小さく水平に作り、片足をのせてみた。2つ目の障壁を作り、もう片方の足をのせてみた。
しかし3つ目の障壁をさらに高い所に作ろうとするが、作れなかった。片足立ちで1つ目の障壁を解除すると3つ目の障壁を作ることができた。
同時に出せる障壁は2箇所までか。スキルレベルがあがればもっと出せるのかな。
自分の近くにしか出せないようだが、応用の効くスキルのようだ。
最後に障壁を出したまま寝ることはできるか試しつつ眠りについた。
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