第32話 解体ショー
「よ、洋介!」
元倉淳一郎はわかりやすいくらいに恐怖で震えている。岡田健一は元倉淳一郎に見せつけるようにゆっくりとストレッチャーを押して、ベッドまで移動した。ストレッチャーをベッドの横に並列し、岡田健一とルーシーでブルーのシートの四隅を持ち上げた。元倉洋介の体をシートごとステンレス製ベッドへ移す。
画面にブルーの塊がフレームインした。ルーシーが丁寧にシートを腰の辺りまで捲った。画面に元倉洋介の裸の胴体が映し出される。
ここで今回の布陣を紹介しておく。
謎の男A・・・ダンゴムシ
謎の男B・・・俺
謎の医者・・・岡田健一
謎の看護師・・・ルーシー
キャストは以上だ。
裏方には、ロイホとドクターと野口くんが別室でこちらの様子を監視している。
ドクターと野口くんは、今回の執行終了時の対象者の治療のために裏に控えてもらっている。岡田健一の初めての仕事というだけあり、彼がどこまでの安全な拷問をするかが定かではないので、彼の監視のために裏で控えてもらっている。
ロイホは遠隔で、画面に映るモニターをCGで操作する。実際に行っている拷問ではなく、父親の元倉淳一郎に見せる拷問はより内容を酷い映像を映す。遠隔操作で映すダミーの映像を見せてもらったが、吐き気が堪えられず最後まで見れなかった。
以上が、これから行うこの親子に対しての『執行プラン』だ。あとは岡田健一の演技力にかかっている。ダンゴムシが演技指導をしていたが、はたして上手くやってくれるだろうか。念のためロイホが映像に合わせて指示できるようイヤホンを装着させている。
ダンゴムシは、万が一このやり方で元倉淳一郎に通じなかった場合の第2案を考えてあると言っていた。自分に置き換えて考えたら、目の前で自分の子供の拷問なんて耐えられない。この擬似拷問から自分達の罪を悔い改めてもらいたい。目的は、この親子の謝罪動画を撮ることだ。俺たちの目的は、拷問や殺人ではない。
「できれば第2案は使いたくない」とダンゴムシは言っていた。できれば素直に罪を認めてもらいたいところだ。
「息子をどうするつもりだ」
元倉淳一郎は先程と比べ、やや落ち着いた口調で言った。相良亜衣の名前を出した時、あまりピンときていないようだったが、息子の姿が現れ、腑に落ちた点があるのだろう。
岡田健一は、トレイの上の手術道具をガシャガシャと音を立てて並べていた。
「そんなことをしても、暗証番号を言わんぞ」
また訳の分からない威厳を取り戻しつつある。そんなに金が惜しいのか。息子よりも金の方が大事なのか。なぜそんなことを言うのか。ハッタリなのか。俺には少し理解できない言葉だった。
「俺たちの目的は金じゃねえよ。まあ、相良さんにはそれなりの慰謝料をくれてやろうと思ってたけど、アンタが暗証番号教えてくれない場合も考えてんだよ」
「何をするつもりだ。金なら出すと言っているじゃないか。幾ら欲しい?」
この堂々巡りには、ダンゴムシも些かウンザリしているようだ。
「お前が暗証番号言わなきゃ、コイツの内臓でも売ろうとかと思って。それでこの闇医者呼んできたんだよ」
ダンゴムシは、そう言って岡田健一を指差した。
「こんなどうしようもねえ奴の臓器でも、世界じゃ高い金出しても欲しいって人間はいくらでもいるんだよ。暗証番号を言うか?それとも息子を切り刻むか?」
元倉淳一郎は奥歯をギリギリと噛んで、唸っていた。今、息子の命と自分の全財産が、彼の中で天秤にかけられている。
「暗証番号は......言わん」
岡田健一は手術用の手袋を嵌めて、両手を膝から上にあげた。こちら側に手の甲を見せている。医療ドラマで外科医がよくやるポーズだ。
「それでは、今から元倉洋介の解体ショーを始めます」
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