第6話 友達

「ねぇ、私たち友達にならない?」

あの再会から2週間がたった日の昼休み。

希は急に真剣な顔をして、弁当を食べていた手を止めて、司にそう言った。

それは、司にとって予想外な発言だった。

「私は、もう友達なんだと思ってた。」

毎日一緒に特別教室まで来て弁当を食べ、

昼休みの間中、他愛ない話をする。

司は他の友達との交流をほとんどなくしてまで、希と一緒にいた。

「友達になるのって、明確な申し出が必要なことなんじゃないの?」

司はその言葉を聞いて少し安心した。

希は司にとってのあたりまえを知らない。

日本の国民食であるラーメンだって食べたことがないと言うから、この間一緒に食べに行ったばかりだ。

『こんなに美味しい食べ物があるなんて驚きね!!』

初めてのことや物に、まるで小さな子供のようにはしゃぐ希を見ることは司にとってひとつの楽しみになりつつあった。

「大体はなろうって言わないで、

自然と友達になっていくって感じかな。」

少なくとも今までの司の友達はそうだった。

でも、希は司にとって他の友達とは違う存在であることもまた事実だった。

「友達になろうか。」

司は一呼吸おいてそう言った。

普通の友達は定義がふわふわしていて、自分が相手を友達だと思っていても相手からはそう思われていないなんてことがざらにある。

なんとなく司は、自分と希との間にただの友達よりも近しい存在に感じるような安心感を感じていた。

だからこそ、そういうふわふわした関係性でいたくなかったのかもしれない。

「私たちは普通の友達の作り方の例外ってことになるけどいいの?」

希が司にそう聞いた。

司はその次の言葉を言うか少し迷ってから、思いきってこういった。

「いいの、希は私の特別だから。」


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