第4話 まれ

あの出会いから数日、司はあの少女の笑顔が頭から離れなかった。それは美しいとか、可愛いとか、そういう単純で視覚的なもののためではなくて、なんだかあの少女から異質な感じがしたためだった。

「水上まれ、、、」

近くからみても黒子ひとつない、透けてしまいそうなほどの白肌。対照的に真っ黒で光を放つ黒髪。何より最後にみせた笑顔。

そんな子が私のことを羨ましいだなんて、、と司は少し心の中がもやっとした。

「また、会えるかな。」

そのもやっとしたものも、不思議と嫌な感じはしなくて、むしろ司は、あんなことを言ったまれがどんな人物なのかということを知りたくて仕方がなかった。


司はまた早起きをして、朝の5時30分に家を出た。外ははまだ少し明るいくらいで、場所によっては日が赤くなっているのが綺麗に見える。公園に着くと、司は震えを止め、辺りを見回した。まれは来ていないようだった。

ガランとしたベンチの背もたれの上で、小鳥たちが鳴いている。司にとって今までの当たり前だった光景がなんだか今日は物足りなく感じた。鼻をツンと刺すような空気のなか、司はベンチに一人、座ってしばらくただ遠くの方を見つめていた。


その日から毎朝公園に通っても、まれが現れることはなかった。

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