近代世界システム論
「近代世界システム論」というものがあります。近代以降の世界史を、経済の面から巨視的に捉える歴史観です。
ざっくり言うと、「近代以後、世界は一つの資本主義体制に支配されており、先進諸国には後進諸国から富が流れ込む構図になっている」という意見です。簡単ですね。
もう少し詳しく見ていきます。
近代世界システム論では、世界の国々は以下の三つに分かれます。
搾取する側であり先進的な技術を持つ「中心」、搾取される側であり後進的な「周縁」、その中間に位置する「半周縁」。
何故このように分かれるのかというと、国際的な分業体制があるからです。「中心」は「周縁」から材料を安く買って、工業製品を高く売り、どんどん発展します。一方「周縁」は「中心」に売るための産物を作り、工業製品を買うばかりで、なかなか発展できません。
もっとも、各国は「中心」「半周縁」「周縁」それぞれに永遠に居座っているわけではなく、別の位置に移動することがあります。
ただ、この三つの枠組み自体は、資本主義が世界を支配している限りは、存在し続けるそうです。
世知辛いことにこの世界は、必ず誰かが得をして、必ず誰かが割を食う仕組みになっているのです。
また、「中心」の国々の間にも、力関係が生まれます。「中心」の国々の中で最も力が強く主導的な、「覇権国家」が出現することが、歴史上にはあるのです。
覇権を手にする国は時代によって違います。諸説ありますが、ここでは順番に以下のように記しておきます。
大航海時代のスペインとポルトガル、重商主義で成功したオランダ、世界帝国を作ったイギリス、世界大戦を経て力を付けたアメリカ。特にイギリスやアメリカは、「パクス・ブリタニカ」「パクス・アメリカーナ」という言葉ができるほど、強い力を持っていました。
それ以外にも、突出した覇権国家のない「勢力均衡」の時期も訪れています。
……まあ、「中心」の中での勢力図がどうであろうと、「中心」「半周縁」「周縁」の関係性が変わることはありません。
この近代世界システム論は、1970年代にウォーラーステインという人が唱えたものです。歴史を各国・各時代ごとに焦点を当てて考えるのではなく、世界全体・歴史全体を見て考えたという点で、評価されています。批判も数多くあり、色々と議論が行われているようです。
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