第14話 ギンリュウ

「そういえば薬草を見たことないんですけど、どういうものなんでしょうか?」


薬草を見分けることが出来るのが不安だったのでセシリアさんに聞いてみると彼女はポーチからごそごそと草を取り出した。見てみる分にはただの雑草と変わらない気がするが...。


「これをよーく見てください。目に魔力を纏わせる感じで」


言われて試してみるが正直分かるとは…。

と魔力を纏わせるように凝視してみると薬草が淡く光り始めた。それに驚くとその光は消える、再度凝視すると光始めた。


「ふふっ、びっくりしました? 薬草など魔力を帯びたものはよく目を凝らすと淡く光って見えるんです。鉱石を探したりするのにも役に立つんですよ」

「人なども見れるので暗闇でも輪郭ぐらいは見つけられますがじっと集中する必要があるので戦闘にはあまり役に立てませんね」


どうやらギンリュウさんやキールさんも見ることが出来るようで説明の追記をしてくれる。物を探す時にはいいが暗闇での戦闘だと立ち止まって凝視する必要があるせいか使うのは難しそうだ。実際薬草を動かされたら輪郭がぼやけていったし止まっている物を視認するのにしか使えなさそう。


「薬草の葉もよく覚えててくださいね、似たものは少ないですけど毒草も存在するので」


その言葉にこくりと頷き歩を進める、大体1時間ほど雑談しながら歩くとボクがいた教会のある森にたどり着いた。相変わらず日があまり差さずに薄暗い雰囲気、フードを被らないで済むのはいいけど。早速入り口付近で凝視してみるが特に薬草の類は見つからない、入り口付近はやっぱりみんな取っていくのかな。


「では早速行きましょうか、まとまっていくのもあれですし二手に分かれましょう。戦力的には自分とシェリーさん、セシリアさんとキールくんに分かれましょうか」

「そうだな、それが妥当だろ」

「では行きましょうかキール君」


そう言ってボクは二人と分かれギンリュウさんの後ろをついて行く、ギンリュウさんはいつもにこやかに微笑んでいるけど何というか…ちょっと怖く感じるな…

糸目がそうさせるのかもしれない。そういえば着ている服も和服だし刀差してるしあった時に極東がどうこう言っていた気がする。極東って言う国が日本に当たる国になるのだろうか。


「その…ギンリュウさんはどこの出身なのでしょうか…? 極東って言う場所ではないとは聞きました…けど」

「自分ですか? 自分はブリリスというこの大陸の隣にある島国の出身です。ちなみに極東とはかなり遠くにある小さな島国であり極東は通称で正式には【ヒナワ】という国ですね。侍もその国が発祥です」


ギンリュウさんは木の枝を手に取り地面に簡易的な地図を描いてくれた。

パッと見は世界地図に近いけど微妙に違う。国がいくつか無くなっていたり知らない国が追加されていたり。ギンリュウさんの出身地は……イギリスかなこれ。

ヒナワはまんま日本、形は大体同じっぽいけど


「ヒナワという国…です、か…その武器も?」


ボクは刀を見ながら聞く、イーグントで色々な人の武器を移動しながら見ていたが刀を持っていたのはギンリュウさんだけ。それどころかみんな少しギンリュウさんを見て驚くというか畏怖しているような雰囲気があった。何故だろうか。

ギンリュウさんは刀から少し刃を出して見せる。


「そうですね、この刀という武器もヒナワで生まれた武器です。切れ味はいいのですがかなり脆いので受け止めるということは出来ません、なので避けることが必要となります。自分の服が和服と呼ばれるこのような薄い素材なのもそれが理由です」

「町の人たちが怖がって…いるみたいでしたけど…」

「あー」


そういうとギンリュウさんは頭に手を当てて少し困ったような顔をする。


「えーっと、簡単に言いますとヒナワの人達は...狂人...えっと…とても個性的な方が多くて…」


今狂人って言ったな。


「まぁあの小さな島国で1300年間も内戦を続けていた国ですからね…」

「1300年…」


まって、戦国時代とかそういう戦って800年ぐらいじゃなかったっけ…?

1300年? そんな長々と内戦してたの? 現代で言うと2000年ぐらいまでじゃない?

狂戦士しかいなかったあの時代がずっと続いているの? 本当にやばそう。


「おっと薬草探しを続けましょうか」

「あ…わ、分かりました」


私はギンリュウさんの背中を追って森の奥へと進んだ。

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