第11話 夢の中で
誰か…いる。
床も壁も天井も境目が分からないぐらい真っ暗な空間。そこには二人…いや、三人の男女がいた。顔はまるでクレヨンか何かで塗りつぶされたような線を重ねてあり体つきでかろうじて性別がわかるぐらいだ。赤色で塗りつぶされた少女と青色で塗りつぶされた男性が立っている、緑色で塗りつぶされた…少女? 少年? 中性的な雰囲気の子が鎖でぐるぐる巻きにされており顔色は伺えないが獣のような唸り声が聞こえる。
長髪であるおかげか線からはみ出ており赤髪であることが分かる少女の方はどことなくボクに似ている気がする。近づいてみると二人がこちらに気付き、ボクの方を向いた…気がした。
「おや、思ったよりにここにくるのが早かったね。私としてはもうしばらく後になると思っていたのだが」
「
「いやぁ、私も驚いたよ」
そういいながら男性は頭をかく、どういうことだろう。全く意味が分からない。この人達は誰だ?
「あの…ここはいったいどこなんですか?」
「どこか…か…、説明が難しいね。私もここでは新参だから何とも言えないが君はどうだい?」
「
と体の方を緑色の子に向ける。緑の子は唸り声をあげて鎖をガチャガチャ鳴らすだけで返答はない、見えないけど口枷でもしているのだろうか。少女はやれやれとリアクションを取りこちらに向き直る。
「とまぁどういう空間かは
「え、えっと…シェリーと呼ばれています…」
「…ほう、そちらではそう名乗っておるのか。
「私は■■■■だよ、あの子は■■■■だね」
名前を言ったらしいがノイズのような音で何も聞こえない。
「…おや、もしかして聞こえないのかい? もしや私達の顔も見えていない?」
こくりと頷くと手を額に当てたようなポーズを取る、あちゃーみたいな。
すると少女がボクの頭に手を当てた、するとだんだんと意識が薄れていく。
「どうせ戻っても
「でも何かあったら…これはまだ言わない方がいいか。では一つだけ」
忘れていてもいいが…私達は君だけの味方だ。
「…んん?」
ぱちりと目を開ける、目覚めはあんまりよくないようでまだぼんやりしていて…何を夢を見ていた気がする。視界に入るのは見覚えのない木造の天井、ここはどこだと思ったがそういえばと昨日のことを思い出した。
思えば昨日起こった出来事の密度凄かったなぁ…。
と体を起こそうとすると何かに引っかかる。
「あれ?」
何だと確認してみると腹部に誰かの腕が…あ、セシリアさんか。
寝間着姿のセシリアさんがボクに抱き着くように寝ている。ボクが体を起こした時に反応したようでゆっくりと目を開けた。
「おはようございます、セシリアさんぎゅっ!?」
セシリアさんがボクを視認すると同時に両手で顔を挟まれた。そのまま顔をじっと見られる、言葉も挟めずしばらくそのままにしているとセシリアさんはほっとしたようにボクの顔から手を離した。
「ど、どうしたんですかセシリアさん?」
「い、いや。なんでもないよ…おはようシェリーちゃん」
セシリアさんは笑みを浮かべるとベッドから出て着替えを始めた、慌てて視線を逸らしてボクも寝巻から着替える。寝巻を畳んで昨日着ていた衣服に身を包む、綺麗にする魔法もあるため汚れとかは大丈夫だと思うけどなんとなく気分的には洗濯とかをしたい。前世の僕は綺麗好きだったのかもしれない。
部屋を出るとキールさんとギンリュウさんはすでに部屋を出たらしく開けっ放しのまま放置されている、どうやら宿を出る時には部屋のドアを開けっぱなしにしてもう中にいないことを知らせる必要があるらしい。そんなシステムあるんだなぁと受付へと降りると併設されているカフェのようなところで二人は軽食を取っていた。キールさんはサンドイッチでギンリュウさんはおにぎりだった。この国西洋だけど普通にお米あるんだ。
「おう、遅かったな」
「お先にいただいてますよ」
流れるように席につき、ボク達も朝食を頼んだ。トースト目玉焼きウィンナーサラダという王道な朝食、ヴルストとかエッグ何とかみたいな名前だったけどまぁ見た感じそのままの料理だ。美味しい食事を楽しみながら今日は何をするのか話始める。
「今日はシェリーちゃんが来たことですしいつもよりワンランク下で日帰り出来る依頼を受けようと思っています。Eランクの依頼ですね。討伐系でもいいのですが最初ですから採取系の依頼にしようと思っています」
「いいんじゃねぇの? いきなり討伐やっても武器もないしな」
「生き物を殺すのは慣れないものですからねぇ最初」
そういえばそうだ、ボクは生き物を殺したことは記憶の中にない、スライムとかそういう異形系だったら大丈夫かもしれないけど狼みたいな動物系だったら躊躇してしまうかもしれない。
「ではこのあとギルドに行って依頼を確認するってことで」
セシリアさんの言葉で決まり、別の用事があるギンリュウさん以外はギルドに向かうことにした。
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