第10話 二つの月の下で
…公衆浴場、思ったよりも銭湯って感じだった。
あれだけお湯を自由に使えるだなぁと街の雰囲気とのギャップに違和感が残る。
他にもシャンプーなども普通にあったことに驚いた、たまに見る油のようなシャンプーではなくちゃんと泡立つタイプのシャンプーでボディーソープもちゃんと用意されてあった。ファンタジーだから錬金術? かな、それで作られたものなのかもしれない。あれ、錬金術って科学だっけ…? まぁいいか。
というよりもセシリアさんのスキンシップが辛かった。セシリアさんはやたらと距離が近い、同じパーティーに女の子がいなかったからかボクの世話をやたらと焼く。髪や体を洗ってもらいトリートメントのやり方も色々教えてもらった。自分の裸はどうってことなかったが人の裸は流石に恥ずかしい、今のボクって性同一性障害みたいなものなんだろうか。
ちなみに持っている150ギオを渡そうと思ったが断られてしまった。お金を稼げるようになってから返して欲しいとのこと。それと色々なところで値段表記を見たのだがどんぶり勘定だけど1ギオ=100円ほどということが分かった。人が生活するのにどのぐらいのお金が必要かはまだよく分からないが少なくとも30ギオほどあれば1日は問題なく過ごせると思う。
いまは宿にいる、なんと公衆浴場の隣にありまだホカホカと湯気が立っていて湯冷めもしなくていいな。ベッドは薄いマットに薄いシーツのような掛け布団、ベッドの上に布団を置いたって感じだ。
二部屋取り、部屋は当然だけどセシリアさんと同室になった。まぁ性別だけなら男2人と女2人だからね。だけど本日は部屋が埋まっていたらしく一人部屋と二人部屋しか取ることが出来なかった。とまぁ比較的小柄なボクとセシリアさんが一人部屋になることになった、ボクとしてはお金を出してもらっているわけだし長椅子で寝るとかでもよかったのだけど子供の見た目であるボクを差し置いてベッドで寝るのは居心地が悪いのこと。セシリアさんスタイルいいから抱き着かれたりすると恥ずかしいんだよなぁ……。とりあえず明日のこともあるし早く寝よう、うん。
「……ん」
私はふと意識を覚醒させ、目を開ける。辺りは暗いが月明かりのおかげで視界には問題はない。体を起こすと寝る前にはあった感覚がないことに気が付いた。
「あれ…シェリーちゃん?」
抱きしめていたはずのシェリーちゃんがいなくなっていた。辺りを見渡すとベランダへと続く窓が開いているのに気づき、ベッドから体を起こしのぞき込むとシェリーちゃんがベランダの手すりに手をかけてぼーっと月を見ていた。『欠け月』と『色月』、今日は三日月で色月は青だから今日はとても落ち着いた夜になりそうだ。
「シェr…ッ!?」
声をかけようかと近づいた瞬間、ぞわりと背筋に氷でも入れられたかのような悪寒が走る。シェリーちゃんの見た目も魔力も特におかしい所はない、手が僅かに震えた。原因不明の感覚に恐怖を覚え声をかけていいものか武器である杖がそばにないことに何故か不安を覚えるほどだ。すると私の声が聞こえたのかシェリーちゃんがこちらを振り向く、少しだけいつもと雰囲気が違う感じがした気がする。
シェリーちゃんは微笑みを浮かべると何でもないような声色で私に話しかけた。
「…どうしたんですかセシリアさん?」
「えっ、あっ。シェリーちゃんがいなくなっていたからどこに行ったのかなぁって思いまして」
「…それはすみません。月をみていたんです、記憶にはないんですけど綺麗だなぁって」
そう言って月を見るシェリーちゃんは何故か大人びて見えた気がした。なんというか…中身が変わったかのような…。いや、気のせいだよね。
「そろそろ肌寒くなってきちゃったしそろそろ部屋に戻ろう?」
聞くのも変だし明日のこともあるから寝ようと思いシェリーちゃんに声をかけた、ちょっと変わったシェリーちゃんにあんまり突っ込みたくなかったのもある。
そういうとシェリーちゃんはにっこりと笑いながら部屋へと歩を進め。
「そうですね私もそろそろ眠くなってきましたし寝ましょう」
そう私に向けて言った
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