第3話 その名前の意味は
少年に水の塊をぶつけて吹き飛ばした後、魔法で水気を飛ばしついでに洗っていた服を急いで着る。少年は倒れている状態から体を起こし頭を振るっていた、全身びしょぬれだが最悪ボクが乾かせばいいだろう。
少年の容姿を見てみると年齢は今の僕と同じぐらいの14歳前後、毛先数センチだけ墨汁で染めた筆のように黒い白髪に赤い眼をしている。顔はかなり整っておりまだ幼さがあるがだいぶカッコいい、これはもてるな。
少年は凄い気まずそうな顔をしてこちらを見ている。そりゃ人がいないと思ってきたら少女が全裸で水浴びをしていたのだ。気まずくもなる、ボクだって結構恥ずかしい。
どうしようかと思うと少し先から二人の男女がこちらに駆け寄ってきた。
一人は十代後半辺りの神官のような服を着て杖のような物を持っている金髪の優しそうな女性。もう一人は動きやすそうな黒い着流しを着た少しくすんだ銀髪のいかにも侍ですと言った感じの糸目の青年である。腰には刀を差しているがきらびやかな装飾のついた直剣も差している、あれは何だろうか。
青年の方はびしょ濡れの少年とまだ少し髪が濡れているボクをみるとにんまりと口許を緩めてからかうような口調で少年に語り書ける。
「おやおやぁ、キール君。もしかして彼女の水浴びを覗いちゃったりしちゃいましたか?」
「き、キールくん! そういうのはいけないですよ!!」
「わざと覗いたわけじゃねぇ!」
三人でそういう言い合いを初めてしまったのでボクはごほんっと咳払いをする。三人の視線がこちらに向きキールと呼ばれた少年は申し訳なさそうに頭をかきながらボクに向き直る。
「あー、放置して悪いな。わざとじゃないとはいえ覗いちまって悪い」
「…いえ、ボクも突然とはいえ水をぶつけてしまい申し訳ありません。怪我はないですか?」
「あ、あぁ大丈夫だ」
キールさんから水を取って乾かすと青年がほう…と息を吐く。
「魔力操作が随分お上手ですね。君はいったい…おっと名乗らせるなら自分から名乗らなければいけませんね。自分の名前はギンリュウと言います。見ての通り剣士です、侍と呼んでいただけると嬉しいですがね。あぁ、このような身なりですが極東出身ではありませんよ」
「俺はキール・ウォルター。役割は斥候だ」
「あ、私の名前はセシリア・マンハッタンと申します。私はせいj…聖職者です、よろしくお願いしますね。あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
そうだ、名前だ。ボクの名前はなんだ? 前が男だったことは覚えている、恐らく日本人だったであろうことも分かる。だけども名前が分からない。普通な名前だったのだろうか。それともキラキラネームというものだったのだったのだろうか。
まぁそれを考えても今のボクには分からない。適当に名前を作ってボロが出るより正直に言った方がいいかもしれない。
「実は…」
ボクは薄らな男としての記憶を伏せ、気が付いたらあの廃墟で寝ており過去に何をしていたか。名前すらも全く思い出せないこと、気が付いたらあの廃墟で寝ておりふらふらと出てきたが体の汚れが気になりここで水浴びをしていて…。と事実を混ぜた嘘を伝える、まあほとんど真実だけど。
そのことを伝えるとセシリアは分かりやすいほどに憐れむような悲しむような表情を取る。
「ともかく名前がないのは不便ですね…何か呼びやすい名前があったらそう呼んでください」
「と、突然そんなこと言われましても…」
「うーん、では『シェリー』はどうでしょう?」
ギンリュウさんは手をぽんっと叩き、そう呟く。
シェリー、何かの言葉だろうか。こっちだとお酒の名前とかだった気がする。
「シェリー? 何かの意味がある言葉ですか?」
「シェリー…何か元があるのか? 聞いたことねぇが」
この世界にはシェリーというお酒が存在しないのだろうか。いや、確かお酒の名前ってその国とかで付くことが多いだろうしそりゃ国が違うならないか。ゴーティア国なんてボクがいた世界にはなかっただろうし。
「シェリーという言葉はとある所の言葉で『楽しい時間』を意味する言葉でこれから君にはそういう時間を歩んで欲しいって意味です。と、初対面でこれは馴れ馴れしすぎましたかね?」
「シェリー…シェリーね、何かすっきりするな」
「そうですね、よろしければこれからそう呼んでもよろしいでしょうか?」
シェリー確かに見た目には合っている名前だ。ではこれからボクの名前はシェリーだ、変に細かく名前を考えるよりいいだろう。
「ではこれからボクはシェリーと名乗らせていただきます。よろしくお願いいたしますね。皆さん」
ボクはにっこりと笑ってそういった。
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少し遅くなってしまいました。ワクチンの副作用でダウンしておりました。
展開がゆっくりですがどうにか進めていきたいです。
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