第4話 冒険者
自己紹介が終わったあとボクは三人の事情を聞いていた。なんでも依頼を受けた帰りだったらしく何かの気配を感じてボクの所へ来たらしい。それで僕がいた、ということだそうだ。どうやら拠点にしている街に向かうらしいので近くにかけてあったローブを羽織るとセシリアさんが疑問に思ったように問いかけてきた。
「そのローブ、全身をすっぽりと覆うぐらい大きいですけど見づらかった歩きづらかったりしませんか?」
「えっと…ボク日に当たるのが苦手でして…ちょっとでもあたると体調が悪くなってしまうんです…」
影が消えて日が少し出てきたのでフードを深くかぶりなおす。するとセシリアさんが屈んでボクの顔を覗き込みながら言う、ボクの返答を聞くとギンリュウさんは納得したように声を上げた。
「なるほど、やけに肌や髪の色が白いと思いましたら。アルビノというものですね」
「あるびの?」
「また聞いたことねぇ名前だな」
「まぁ簡単に言いますと肌が非常に弱い体質と思っていただければいいですよ。影でも危ないと思うのですが水浴びをしても大丈夫なのでしょうか?」
「ちょ、直接日の光に当たらなければ大丈夫ですので…」
どうやらボクは喋るのがあんまり得意ではないようで時折詰まってしまう。どうにかしないとなぁ…とキールさんの腰で揺れる二本のナイフを見ながらふと思う、そういえばさっき剣士や聖職者や斥候と出てきたがこの三人は所謂冒険者と言うものだろうか。あからさまに武器を携帯していたのにファンタジーだからとついスルーしてしまった、普通に考えて危険がないなら武器を持つ必要はないし野盗や魔物の類が出るということだろうか。
そういう風に武器を眺めているとキールさんがこちらを向く。何だと首を捻っていたがふと思い出したかのように表情を緩める。
「そういえば記憶がないんだったか、ってことは冒険者のことも知らないのか?」
「…冒険者、ですか」
一般的なイメージだと依頼とかを受けてモンスターとかを倒しに行く人達って感じだろうか、といってもこの世界のことはさっぱりなのでよく分からないと返しておこう。そう返すとまぁそうだよなと説明をしてくれた。
「簡単に言うとギルドって所で依頼を受けてその依頼を解決し、金を貰う仕事だ。依頼には色々あるが、今回俺達が受けた依頼は『グレーウルフ』の討伐、村の近くで群れが確認されたから被害が出る前の討伐って訳だ」
「あっ、それと依頼というものはランクと言うもので分けられていましてこの依頼はDランク、ランクはAからFランク、そして特別任務と呼ばれるSランクというものがあるんですよ」
「特別任務、ですか?」
「えぇ、特別任務とは冒険者の階級に関わらず受けることの出来る任務で基本は30~100人単位で受けるような任務ですね。ちなみに自分達はDランクの冒険者と分類されています」
冒険者カードという身分証明の代わりになるカードを見せてもらった。パッと見は免許証である。レリーフのようになっている顔写真と名前、あとは経験したクエストをランクごとに書いてある。あとは武器の適正なども書かれていた。
こういうものって身元不明のボクでも作れるのだろうか。ギンリュウさんのカードは『ギンリュウ』とだけ書いてある。いかにも偽名って感じだけど大丈夫なのだろうか。
「あぁ、ちなみにですが偽名や身元不明でもカードを作ることは可能です。作る際に少し多めにお金がかかるのと最低ランクから始まることになりますが。あ、それとカードを作らなくても依頼を受けることも可能ですね。まぁ依頼料が減るので借金してカードを作ってから受ける方が多いですが」
どうやらボクでも冒険者カードを作ることは可能なようだ。依頼に関しては討伐の他に荷物運びや畑仕事など多種多様な仕事があるらしくいわゆる孤児などはほとんど存在しないようだ、冒険者用に安価な宿泊施設もあるらしくどうやらボクが路頭に迷うことはなさそう。
「シェリーちゃんは街についたらどうします?」
「そうですね…冒険者カードを作ろうかと思っています。その後は簡単な依頼でも受けて…まだあまり考えていません」
「だったら…私達と一緒に冒険しませんか?」
セシリアさんがそうボクへと誘ってくれる。いいのだろうか、それならとても嬉しいけど…。
「おい何を勝手に…」
「このパーティーのリーダーは私ですからメンバーを決めるのも私が決めまーす」
おや意外、彼女がこのパーティーのリーダーだったようだ。さっきから道を先導していたり言動からてっきりキールさんがリーダーだと思っていたのだが…。
その視線に気づいたのかギンリュウさんが耳打ちしてくれる。
「キール君は年齢によりまだ正規の冒険者になれないんですよ。つまり冒険者見習いってことですね、本来冒険者は14歳からなのですが14歳以上の冒険者が同伴することで同じく冒険者として依頼を受けることが可能なのです。自分は二人が組んだ後途中からパーティーに参加したのでこのパーティーのリーダーはセシリアさんなんです」
「そうなんですね」
なるほどそういうことなのか…ボクは何歳なのだろうか…まぁそれはギルドに行ってから決めることにしようかな。
そんなことを考えながら歩いていると森を抜け街道とその先に街が見えた。どうやらあの街がボク達が今向かっているところのようだ。
「あっ、見えてきましたね。では日が暮れる前に向かいましょう! 旅人の街『イーグント』へ!」
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