第3話 全滅寸前の危機
そんな中で、トラブルが起きるのは必然だったのだろう。
自分の欲を優先して行動する勇者たちは、ある宝箱の前でもめにもめた。
「この宝箱の中身は勇者である俺の物だ!」
「いや、最初に発見した俺のもんだろ!」
「私の物よ。私がこの隠し部屋に気が付いたんだから!」
まったくまとまる気配のない諍い。
その声が、モンスターを引き寄せてしまったのだろう。
狭い部屋の中で、モンスターの大群を相手にしなければならなかった私達は、次第に追い詰められてしまった。
そして、彼等は一人、また一人とモンスター達の餌食になっていく。
「こっ、こんな所で死んでたまるか。俺は生き延びてやる!」
そんな惨状を見てパニックを起こした勇者は、一人で殺到するモンスターの群れの中に突っ込んで、それきり姿が見えなくなった。
性格はあれでも、実力は確かだった勇者。そんな彼が、モンスターに殺されてしまった。
それを見た私は死を覚悟した。
しかし、そこに助けの手が入った。
魔法の閃光が辺りを満たして、気が付くと目の前のモンスターの一部が消滅していた。
部屋の入口に、冒険者の恰好をした者達がいて、こちらに声をかけてくるところだった。
リーダーらしき剣士、そして攻撃魔法使いと弓使いがいる。
「今のうちに、こっちへ来るんだ。みんな、あの女性の援護を頼む!」
その中のリーダーらしき男性剣士が声をはりあげた。
三人グループのその冒険者達は、次々とモンスターの群れに向かって魔法や矢を放っていく。
勇者達には及ばないが、彼等はそこそこの実力者達だったらしい。
一撃で、数十体のモンスターが消し飛んだ。
しかし、それでも後から後からモンスター達がやってくることに変わりはない。
彼らの力添えを無駄にするわけにはいかないと、私は走り出した。
彼らの実力もあっただろうが結果的には運も良かったのだろう。
私は無事に生き延びる事ができた。
私は駆け付けてきてくれた冒険者達に感謝した。
、
「助けてくださってありがとうございます」
「いやいや、ダンジョンで困った時はお互い様さ」
この人たちの爪の赤を煎じて飲ませてやりたいと思った。
その冒険者達のリーダー・エルコンは、気持ちの良い笑顔で笑った後、
「たった一人でダンジョンの外まで戻るのはしんどいだろう。俺達が送ってってやるよ」
と言った。
ダンジョンの入り口に戻るまで、私は彼等と色々な話をした。
彼らの駆け出しの頃や、仲間が増えた頃の事。
それらの話は、冒険者らしい波乱に満ちたものだったが、胸が躍るようなものも多かった。
一方でこちらに出来る話は少ない。
お金につられてダンジョンに入る勇者、の話など口にしても誰も良い気にはならないだろうからだ。
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