第2話 お金もうけにはしる勇者
ダンジョンの中に満ちている悪しき魔力を浄化していると、勇者が声をかけてきた。
「おい、お前。支援魔法がきれてんじぇねーか。早くかけろ」
勇者はいつもこんな態度だ。
仲間達はとがめやしない。
またやってるよ、みたいな視線でこちらを眺めるばかり。
「はぁ。でも、先ほどからずっと戦闘続きで疲れているので、少し休憩させていただけませんか」
「は? 何偉そうな事言ってんだよ。自分の身も守れないくせに。誰が守ってやってると思ってんだよ。いいからかけろよ」
「おすすめできません。途中で魔力切れをおこしたら、貴方の身が危険にさらされますよ」
「誰が一人にかけろっつった」
勇者は、パーティー全員を視線で示した。
「全員にだ。俺達はもう進む。遅いやつになんて合わせてられっか。魔法かけたらちゃんとついてこいよ」
「本気ですか? どうなっても知りませんよ」
先ほどから、戦闘はぶっ続け。
それに付き合わされる私は、だいぶ疲れていた。
十分に疲労を回復しないままだと、まずいと判断したから言ったのに。
勇者は聞く耳を持ってはくらなかったようだ。
つい最近まで聖女をしていた私は、勇者パーティーの補佐として旅をサポートするように言われ、彼等についている。
けれど、勇者は魔王を倒すどころか、ダンジョンにこもって、お金儲けに精を出す有り様。
それで、儲けたお金で毎晩豪遊しているのだ。
勇者の力でダンジョンでお金もうけをするなんて聞いた事が無い。
国に言って、注意してもらおうと思っているのだが、彼等の監視が厳しくて一人で行動できない。
「チクったら承知しねぇからな」とクギを刺してくるという事は、つまり悪い事をしているという自覚はあるようだが。
一向に行動を改める気配がない。
勇者だけでなく、仲間達も今の状況を続けさせようとしているから、私以外は誰も現状のおかしさを指摘しない。
何とか、彼等を更生できれば良いのだが、良い案が思いつかないでいた。
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