第23話 まじもんのぼんぼん

 入館料を払ったサクヤは、イヤホンガイドを追加で支払った。

 ゲーテ博物館とセットになっているゲーテハウスへ、イヤホンを耳に入れながら進んでいく。

 一階にはキッチンのほか、『青の間』と呼ばれる食堂、『黄色の間』と呼ばれる応接室があった。

 二階にも様々な部屋があり、『北京の間』と呼ばれる一段と豪華な装飾がされていた部屋があった。家族の祝い事や高貴な客人を迎える際に使用されていたという。

 三階にある、書斎へ続く部屋には、ゲーテパパが収集したフランクフルトの画家の作品がずらりと飾られていた。奥の書斎の本棚には二千冊も学術書がならんでいる。幼いゲーテはこの部屋で、ゲーテパパから教育を受けていたらしい。

 絵画が飾られている部屋の隣にはゲーテママの部屋がある。壁紙も華やかで、どんな人が使っていたのか想像するのを助けてくれる。

 四階にある部屋が『詩人の間』。ここでは『ファウスト』の初稿やデビュー作の『鉄の手のゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』、『若きヴェルテルの悩み』を執筆したとされる。

 ゲーテ愛用の机の上には、ゲーテと『若きウェルテルの悩み』の永遠のヒロイン・ロッテのシルエットが飾られている。


「ゲーテって、まじもんのぼんぼんやったんやな……」


 サクヤは、ゲーテハウスの外観を感慨深くしみじみと眺めてから、ホテルへと戻った。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る