第22話 ゼーゼマン家屋敷のモデル

 きれいに食べ終えたサクヤは、散歩がてらベルリーナ通りを歩いていく。


「口笛はなぜ~遠くまで聞こえるの~」


 おもわず口からでた鼻歌に、あるアニメを思い出す。

 幼いころ再放送でみた、あのアニメ。フランクフルトといえば、大富豪ゼーゼマン家のクララの遊び相手として、ハイジが過ごした街じゃないか。

 しかも、アルプスの少女ハイジにでてきたゼーゼマンの家屋敷のモデルになっているのが、文豪ゲーテの生家。しかも歩いてすぐ近くにあるとは、何たる僥倖。

 

「……なんてね。調べて来てるから、知ってたけど」


 サクヤは一人ツッコミをしながら時刻を確認し、路地へと入っていった。


 一七四九年、八月二十八日。皇帝顧問官であった父ヨハン・カスパール・ゲーテと、フランクフルト市長の娘であった母カトリーヌ・エリザベート・ゲーテの長男として、十二時の鐘の音とともにフランクフルトに彼は生まれた。

 青年期まで家族と過ごし、十六歳の時に法学を勉強するためライプツィヒへと旅立った。法律を勉強したのは父の意向であって、本人は文学を勉強したかったという。

 十七世紀に建てられてた建物はゲーテの祖母が買い取り、その後ゲーテの父が現在の四階建てに改装。第二次世界大戦の爆撃を受けて、建物は破壊されてしまった。

 だが戦後、忠実に復元。調製品は疎開させてあったため、戦火を免れることができたという。


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