第30話 よろしおすなあ

「どのバウムクーヘンも、よろしおすなあ」


 えへっ、とカスミは可愛く笑ってみせる。


「こらっ、どっちゃの意味でも使える言葉で感想をいうんやない。それにビールとつまみはどうしたっ」

「お姉ちゃんは、ビールが飲みたいだけやないの」


 ぼやきつつ、カスミは冷蔵庫から青島の缶ビールを取り出し、『サクヤちゃんご愛用』と書かれた有田焼プレミアムビアグラスを棚から持ってきた。


「それそれ。そのグラスやないと、まろやかでクリーミーな泡にならへんのよ。グラスも冷やしといてくれてたらよかったんやけど、まあいいわ。一気に注ぐんやない、三回にわけるんやで」

「はいはい、わかってるってば」


 軽い音とともに蓋を開け、カスミはなれた手付きで三度にわけてグラスへと注ぎ入れる。

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