第9話 姉の威厳

 さぞかし姉の凄さを思い知ったかと思いきや、

「えー、お姉ちゃんってストリッパーだったの?」

 愚妹カスミは、目を大きくして驚いていた。

「だれもストリッパーなんて言ってない。トリッパー。観光旅行者のこと」

「でも、トリッパーって、日帰り旅行者って意味だったような。日帰りで海外に行って戻れる国って限られてると思うけど」


 た、確かに。

 無難にトラベラーといえばよかったーっ。

 サクヤは頭を抱えて、うぬののののおおーっ、と叫びながら膝を床につけ泣き出す姿を思い浮かべながら、必死に耐えていた。


「か、カスミの英語力を、ちょっと試してみただけ。お姉ちゃんが家を留守にしてる間、ちゃんと勉強してるかチェックを兼ねて」

「もー、心配性なんだからお姉ちゃんは。それなりに勉強してるって」

「そのようだね。姉として、安心したよ」


 よしっ、なんとか乗り切った―っ。

 姉としての威厳は保てたサクヤは、両手を強く握っては突き上げるガッツポーズを頭の中で思い描くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る