第8話 ユッフハイム

「バウムクーヘンに、そんな歴史があったとはっ」


 口元に手を当てむせび泣くカスミに釣られて、サクヤも目頭が熱くなる。


「そうなのよ。ほんでその後、カールの意志は受け継がれていったわけよ。日本語での呼びやすさを考慮して『ユーハイム』となってるけど、『ユッフハイム』としたほうが原語の発音により近いんだよ」

「お姉ちゃん、くわしいな。そんなにユーハイム好きだったなんて知らなかった」

「これくらい常識やで。わたしを誰だと思ってる。さすらいのトリッパー、プリティーサクヤちゃんだぞ。旅するたびに、知らない世界が減っていくのさ」


 ふふん、どうだ妹よ。お姉ちゃんの凄さを思い知ったか。

 得意満面の笑みを浮かべるサクヤであったが、気づかれないようスマホを使って調べ、カスミに読み聞かせていただけである。

 まったく、姉の威厳を保つのも疲れるものだ……。


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