第6話 いつか配り回る日のために

「どうしてバウムクーヘンなのかな」


 カスミは不思議そうに箱の中を覗き込む。


「ドイツ語でバウムは木、クーヘンはケーキ。切り口が木を切ったときの年輪に似ているとこから名付けられたもの。年輪は繁栄や長寿を意味してる。つまり二人の繁栄と幸せが長く続くようにという意味が込められていて、それをおすそ分けする意味で人気がある」


 新手の拷問を受け続けるサクヤは、涙ぐまずにはいられなかった。

 いまにみてろ、いつかバウムクーヘンを配り回る立場になって嫌がらせ……ではなく幸せの押し売りをしてやる~っ。

 サクヤは熱い誓いを胸に秘めるのだった。


「日本で初めて焼いたのは、カール・ユーハイム。関西圏、とくに神戸人には馴染み深いあのユーハイムの創始者である」

「あのユーハイムが、日本初なんだ」

 へえ~、とカスミは声を上げた。

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