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 「箱とびらゲーム」のルールは簡単だった。


・合言葉を知っていなければ開かない箱に、互いのマスターは大事なものを封じておく

・マスターは自分の奴隷に合言葉を伝える

・マスターは相手の奴隷から合言葉を聞き出す

・奴隷がマスターから預かった秘密の合言葉を相手のマスターに喋ったら敗け


これだけのゲーム。つまり、「先に箱を開けられたほうが敗け」。

敵に合言葉を知られると、自分たちの財宝が入った箱が開けられてしまうから、奴隷は敵からそれを守り通す。反対に、主人は敵の奴隷からそれを聞き出そうとする。先に箱を開けたほうが勝ちなのだけれど、忠誠度の高い奴隷はマスターから預かった秘密の合言葉を絶対に他人には喋らないから、敗北しない。


 どちらの奴隷の忠誠が上かを確かめるためのシンプルなゲーム。相手は、暇を持て余したどこかの貴族。彼も奴隷を持っていて、忠誠心があると誇っている。審判は、実行委員会から送られてきた2人の公証人。このゲームは巷で流行していて、どこかの大貴族たちによって専門組織が作られたらしい。


 でも、審判は尋問の行われる密室には一切入ってこない。このゲームのルールを監視する審判は上でずっと箱を守っていて、密室を覗く必要はない。なぜなら、密室の中で行われる事に一切のルール違反は無いから。

…恐ろしいゲームだと思う。

ほんとうに、聞き間違えでなければ、何をやってもルール違反にならないというのだ。厳密には例外があって、もしも尋問中に相手の奴隷を殺してしまったら、その時点で殺してしまった方の負けになる。だけど、死んだ人間を生き返らせることはできないから、このルール違反は誤魔化せないし、監視する必要はない。

 逆に言えば、私は殺されることだけは無いといってよかった。だって、殺してしまえば、何にせよ相手は敗けてしまう。『死人に口なし』、奴隷から合言葉を聞き出すことが永遠に出来なくなってしまうのだから――

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