閑話
私の名前は
正直うんざりである、人の事を知りもしないで勝手に神聖視して祭り上げて、そのせいで去年はやりたくもない学級委員なんかも押し付けられ貴重な時間を無駄に浪費した、今年もやらされそうになったが何とか回避して無事難を逃れられた
私は他人が思うほどいい子じゃない、普通に面倒な事はやりたくないし、何でも知っている訳でもない、好き嫌いだってするし嫌いな人にはそもそも近づきたもくない
なのに何も知らない人は「白岸さんは責任感が強いし勉強もできるから学級委員に相応しい!」「白岸さんは何でも知ってそうだし相談に乗ってほしい!」「白岸さんって本当に皆に分け隔てなくて素敵だよな、俺にもワンチャンありそう」
ねぇよ!!名前も知らない顔もうろ覚えの赤の他人にチャンス何てある訳無いでしょ!ふざけんな!
それなのにやっかむ者の多い事多い事、やれ堅物だの、やれ見下してるだの、やれ八方美人のアバズレだのと裏でこそこそ悪口言っちゃってさ、私が何をしたって言うのよ
そんなこんなでうんざりしながらも毎日を過ごし、今日も夏休みだというのに行きたくもない学校に夏期講習へ行って真面目に勉強して一人本を片手に下校する
学校から出ても私の気苦労は絶えない、夏の日差しが肌に刺さる猛暑の中暑いの我慢してブラウスを必ず着用しなければならない、当然理由は異性からの邪な視線をなるべく避けるためだ、学校内外の様々な男からの不躾な気持ちの悪い視線に辟易する
今更気にしても仕方ないから信号待ちの間本を読み気を紛らす、すると私の横に同じ制服の男子が並ぶ、その男子には見覚えがあった、夏休み前の全校集会で表彰されていた剣道部の主将さんだったかしら、同じクラスになった事も無いしちょくちょくある表彰式で見る事があるだけ
この人も私が目的でここに来たのかと身構えたが話かける事も無く不躾な視線を向ける事も無かった、私は自分の自意識過剰さに恥ずかしくなり猛暑とは関係なく顔が火照るのを感じる、居た堪れない私はさっさと信号が変わらないかと考えていた
そんな自責の念に囚われていた私の腕をいきなり強い力で掴まれ信じられない勢いで後方へ投げ飛ばされる、私を投げ飛ばした張本人は何故か穏やかな顔で安心した様に微笑んでいた、人を投げといてどうしてそんな顔をするのか瞬時に理解できない
だがそんな私を置き去りに現実は残酷に突き進む、瞬きをする瞬間には彼はトラックに跳ね飛ばされていた…
「きゃゃぁぁー!!!」
目の前に広がる惨状にただただ叫び声を上げる事しかできない、猛スピードで突っ込んできたトラックは彼を数メートル弾き飛ばしそのまま近くの電柱に衝突し動きを止める、地面に転がる彼は血だまりを作りピクリとも動かずぐったりしている
それから私は何をするでもなくその場にへたり込んで呆けていた、近くにいた大人が私に駆け寄ってきて安否確認を行う、それに私はうまく答える事ができない、何故彼でなく私の心配をしているのかも理解できない
時間が経つにつれ私の意識もはっきりしてくる、受け答えにも問題がなくなり落ち着いてきた、その頃には警察や救急も現着し現場調査を行っている、現場に居合わせていた私も事情聴取される
そこからは私の意思とは関係なく話はどんどん進む、猛スピードで突っ込んできたトラックの運転手は当時発作を起こしていてアクセルを踏んだ状態で気を失っていたそうだ、そして電柱にぶつかった際に亡くなっていた様だった
私を庇って轢かれた彼、鬼島零治くんは恐らく即死であっただろうと聞かされた、親しい友人であった訳ではないが自分のせいで人が亡くなった事に私は1か月寝込んだ、寝込んだといっても寝る度に情景が蘇り満足に睡眠をとる事もできなかった
日々やつれていく私を心配した両親は私にカウンセリングを受けさせたり食事を私の好物にしたり出来得る限りのケアを施した、そのお陰で何とか3か月後には学校に復学する事ができた
久しぶりの学校は以前にも増して居心地が悪かった、3か月前に起こった出来事に対しての好奇の目が集まる、流石に聞きに来る常識知らずは居らずその点は良かったがこれからの学校生活を憂う
そんな私を知ってか知らずか私の居るクラス全体が強烈な光に包まれる
「ようこそ、異世界人たちよ歓迎する」
光が収まるとそこは薄暗い石畳の部屋だった、クラスにいた生徒全員が同じ部屋にいる、そして横柄な態度で此方を見下すこの状況を作り出したであろう人物がいやらしく笑ってここにいる全員を見渡していた
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