第44話 入村

 ガーネット達が村に戻り数日が経過した、その間アストル達は自給自足しながら気長に待っていた、此方に一切の敵意がない事は数日も大人しく監視されていれば嫌でも分かって貰えたらしく日を追う毎に監視の人数も減っていき今では一人しか居ない


 そんな監視役の者も徐々に此方に気を許しだし今では一緒に飯を食べるようになっていた


「アストル達は服が欲しくてうちの村に来たいんだよな?」


「あぁ、知性ある者として流石に腰布一枚ではな、それに服だけではなくしっかりとした装備品もそろえたいと思っている」


「そっかー、そうだよなー確かに服は欲しいよな~、それに自給自足もいいけど道具をしっかり揃えて調理した方がこの料理ももっと旨くなるんだろうな~」


 すっかり打ち解けた様子の監視役は持参した酒なども飲み、既にへべれけ状態で楽しそうにしている、この後の展開も毎回同じで気持ちのいい状態のまま眠りにつき朝方見張りの交代が来る前に起こしてあげるの繰り返しだったりする


 最早見張りとしての役目を放棄している、自宅に居る奥さんが厳しいらしくここでじゃないと好きに酒も飲めないそう


「もうしばらくは待ってみるが、流石にこのままずっとは居られないからな、そろそろ真面目に今後の事を考えないとな…」


「それって、ここから出て行くってことか!?」


「何も村はここだけじゃないしな、別の所に行くのも一つの手だし自分で作ってもいい」


「えぇ~折角仲良くなれたし、お酒も沢山飲めるようになったのに残念だ~」


 最後の言葉が本音だろうと思いながらアストルも監視役の持ってきた酒を呷る、転生前は未成年の学生で酒を飲めなかった事もあり興味があった為すすめられるままに酒を飲んだ、すると種族的な特性なのか酔う事は一切なくうま味だけ味わう事ができた


(オーガって鬼みたいな見た目だし酒に強いのかもな)


 何て事を考えながら継ぎ足された酒を飲む、因みにオルトは酒に弱いらしく匂いを嗅いだだけで酔いつぶれてしまっていた


 暫く監視役と酒を飲み相手の家庭の愚痴を聞いているとやはり先に監視役の方が酔いつぶれ眠ってしまう、晩酌で散らかった物を片付けてからアストルも眠りにつく


「……おい………アストル起きろ……」


「………ガーネット…こんな朝早くにどうしたんだ」


 まだ朝日が昇り始めた周囲も薄暗い中アストルはガーネットに起こされる


「やっと頭の固い連中を説得できてな、入村の許可が出たぞ」


 ガーネットの言葉に眠気が一気に覚める、アストルは佇まいを直しガーネットの話しを真剣に聞く


「やっとか、そろそろ此方も諦めかけていたぞ」


「すまない、いくら意思疎通ができるとしてもオーガを信用できないとうるさい石頭どもが居てな、説得に時間が掛かった」


「…この時間に呼ぶのは住人に俺達の姿を見せたくないからか?」


「まぁ、確かにそうなのだがそれは貴殿も同じでは?」


「確かに…この姿で人前に出るのははばかれるな」


 冷静に考えると今の自分の恰好はよろしくない事を再確認、さっそくアストルはオルトを起して村へ行く準備をする、因みに酒飲み監視委員はガーネットと一緒に来た女性エルフに思いっきりシバかれていた


 村へ行く道中ガーネットに聞くと一緒に来た女性エルフさんは酒飲み監視委員の奥さんだった


「すみませんアストルさん、うちの馬鹿がご迷惑をおかけしたみたいで、私の名前はエイシャと申します、アストルさん達の服を用意させて頂く者です、ご要望があれば何でも仰ってください」


 申し訳なさげにはにかみながら頭を下げるエイシャさん、因みにダメ夫の方はハンスと言う名前である


 そうこうしていると村に着いた、なかなか立派な木の外壁と大きな門が目の前に広がる


「私だ!!門を開けてくれ!」


 ガーネットの呼び掛けに応じて目の前の門が音を立ててゆっくり開く、開かれた門の先には村人たちの家々が立ち並ぶ光景が映る、この世界に来て初めて見る村の光景に感動すら覚える


「さぁ、私たちの村へようこそ、歓迎する」


 未だ日が完全に出きっておらずガーネット達以外村人が居ない状況で歓迎と言われてもいまいち素直に喜べないアストルだった

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