第42話 救出と強襲
悲鳴の聞こえた方へに向かうとそこには絶賛狼に襲われている
(会話する時間はないな、とりあえずこの狼を片付けよう)
命の危険があるのに悠長な会話など出来ないと判断したアストルは原因の狼から対処しようと決め、エルフと狼の間に割って入り思い切り狼を蹴り飛ばす
狼は衝撃と痛みで悲鳴を上げて吹き飛ぶ、申し訳なく思うが人間に似た姿の女性で劣勢な方を助けたく思った、本音を言うのなら本能で生きる狼より理性あるエルフの方が会話しやすそうなのと、勝ちが見えてる優勢側よりも藁にもすがりたいであろう劣勢側を救った方が色々と後が楽だと考えたからだ
(これで引いてくれれば良いんだが…)
蹴り飛ばされた狼は直ぐに起き上がりこちらを睨みつけてくる、だが余程さっきの蹴りが効いたのか若干の怯えが見える
数秒見つめあった後狼の方が後退していき瞬時に身を翻すとそのまま林の中に駆け込んでいった、気配もどんどん遠ざかって行ったので逃げたことが分かる
(…行ったか…さて、それじゃ今度はこっちの番だな)
狼が去った事を確認し終えると後ろに振り返り襲われていたエルフと向き合う、エルフは真っ青な顔でこちらを警戒しながら怯えている、余りに痛々しい姿なのでアストルは回復魔法をかける事にする
「動くな、今治してやる」
「!!」
エルフに伝わるよう一言添えてから手をかざし光魔法の中にある初級の回復魔法を行使する、すると先程まであった傷がみるみる無くなっていき元の傷一つない綺麗な状態に戻る
「こ、これっていったい…」
先程まで狼に襲われ死を覚悟した矢先にオーガに助けられ、野蛮なはずのオーガに回復魔法をかけられる訳の分からない状況に混乱の境地に立たされる
「これでもう大丈夫だろう、それで少し聞きたいんだが…いいか?」
「!?…何でオーガが言葉を話せるのかとか、何でオーガが魔法を…それも光の回復魔法を使えるのとか、色々聞きたい事が多過ぎるんだけど!…まずは助けてくれてありがとう、あのままだったら確実に私は死んでいたから本当に感謝している、私に分かる事なら出来るだけ答える」
最初は混乱で一杯だった頭も冷静かつ知的なオーガの態度にいったん落ち着きを取り戻し治療の感謝を述べるエルフの女性、これで話し合いの第一段階は完了した
「まずは自己紹介から始めよう、俺の名前はアストル、もう一人の仲間と旅をしている者だ」
「アストル…ネームドなのね…私の名前はネーシャ、ここより少し進んだ所にある村に住むエルフよ」
因みにエルフは世界樹の加護によって生まれた時に名前を授かる、なので名前がある事が標準でわざわざネームドとは呼ばれない、ドワーフ等も似た理由で名持が当たり前
「ネーシャ…覚えた、それで聞きたい事なんだが君の住む村に招待してくれないか?」
「…理由を聞いても?」
「見ての通り俺の装備はこの腰布だけでな、出来ればちゃんとした装備が欲しい、普通の服でも構わないといった理由だ」
「そう…助けてもらったのに申し訳ないんだけど私一人の判断で貴方を村に連れてはいけない…ごめんなさい…」
アストルの申し出に少し考え申し訳なさそうに断るネーシャ、断られるのは予想できていたアストルとしても納得の出来る答えと態度に好感が持てた
「謝る必要はない、いくら命の恩人だからと言って仲間の居る大切な村に見ず知らずのオーガを連れて行く方がおかしいしな、けど此方としても結構な死活問題なんだ、一度ネーシャに村へ帰ってもらい村の人に事情を話して何とか受け入れられるようにしてもらえないか?」
「う~ん、私が話しても説得できるとは限らないですよ?」
「構わない、もし話し合ったうえでダメだったのならあきらめよう…ん?」
しっかりと話しても断られるのなら仕方ないとアストルが考えていると、こちらに近づく多数の気配を感知し、それがネーシャの仲間であろう事は予想できこの後の展開も自ずと導かれる
「ネーシャ!!逃げろ!!」
「え!?ちょっと!」
ネーシャは襟首を思い切り引かれアストルとの距離を強制的に離される、それと変わって四方八方から矢が飛んできてアストルを襲う、そんな状況を心の中でやっぱりこうなったかと冷静に考えるのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます