第41話 遭遇

「はぁ…はぁ…こっち来ないで!」


 私は残り少ない矢を番えながら目の前の敵へ警告する、しかしこちらの警告など一切気にせず一歩一歩近づいてくる


 相手はフォレストウルフ、この森に生息する狼の魔物だ、狼の魔物は皆一様に素早く弓との相性は最悪、狩りの帰りで薬草を摘むために仲間と離れていた事も災いしてこんな事になっていた


「くっ…ッ!」


 警告と言う名の威嚇をしてもこちらに近づいてくる敵に向かって番えた矢を放つ、しかし放たれた矢は空を切り先程までフォレストウルフの居た地面に刺さる、次の矢を番える暇もなくフォレストウルフの牙が目の前まで迫って来ていた


 咄嗟に手に持っていた弓を噛ませて防ぐ、長年使ってきた大切な弓がミシミシと嫌な音を立てている、心の中で何度も折れないように祈りながら必死に耐える


 木を背にして腕を前に突き出して必死に耐えているが暴れる狼から完全に身を守る事は難しく爪などが先程から何度も当たって出血していた、その出血による血の匂いで更に興奮したフォレストウルフがさらに暴れる


(みんな!助けて!!)


 最初に襲われた時に大きな声で悲鳴を上げた、自分の仲間達ならばその悲鳴を聞きつけてこの窮地に駆けつけてくれる事を願いながら


「グルルガァ!」


「きゃっ!!」


 しばらく続く押し問答にしびれを切らしたフォレストウルフが強引に咥えていた弓ごとかぶりを振って所有者もろとも放り投げる、数舜宙を舞った後地面を転がる


 身を起そうとするが出血による体力の低下で思うように体を動かせない、フォレストウルフは油断なく相手の様子を伺い追撃の準備をしている


 相手に余力がない事を確かめたフォレストウルフは再び牙をむき出しにしてこちらに寄ってくる、もう一度迎え撃つべく弓を掲げるがそこでようやく弓が折れている事に気が付く、大切な弓が折れた事っを悲しむ隙もなくフォレストウルフが地面を蹴り駆け出す


(あぁ、もうダメ…ここで私死ぬんだ…ごめんなさいお父さん、お母さん…さようなら)


 もう成す術が無くなり覚悟を決め目を閉じる、親よりも早くに死ぬ一番の親不孝に謝り、他愛もない日常が走馬灯のように一気に思い出され懐かしく思う


 ドンッ


「キャイン!」


 目を閉じ走馬灯を見ながら来る死を待っていた自分の耳に聞こえてきたのが自分の物ではない悲鳴だった、何が起きたのか恐る恐る目を開けて確認してみると自分の目の前にはフォレストウルフではなく赤黒い大きな背中だった


「オーガ?」


 この森では珍しい魔物のオーガ、それが自分とフォレストウルフとの間に仁王立ちしていた、まるでこちらを守るかのように

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