第39話 一時停止

 暗い森の中に響く音、何かを叩きつける音、何かを切り裂く音、木が倒れた後の地響き、森に住む者たちは皆得体の知れない音に恐怖した、世もやどこぞの誰かが竜の尾を踏んだのではないのかと



『そっちに行ったぞオルト』


『了解』


 ドカンッと響く炸裂音、当然この響き渡る音の正体はアストル達二人の物だった


 二人は森の中に入ってからずっと己のレベルを上げるため魔物を倒しながら進んできた、最初こそ魔物達は際限なく襲ってきたが狩っていく内、逆に逃げ出すようになってしまった、仕方なくアストルは探知魔法を使って容赦なく見つけ出して狩っていく


『レベルの方も大分上がってそろそろ次の進化が見えてきたな』


『おらも進化出来そう』


 そうして二人ともウキウキしながら森を進み殺戮を繰り返すそんな事をしていれば上位の魔物に目を付けられるもの致し方なく、接敵するのも当然と言える


『お前達か、俺の眠りを妨げる野郎どもは』


 アストル達の目の前に現れたのは丸太を肩に担いだ一つ目の巨人だった


『一つ目の巨人、爺さんの図鑑で見たサイクロプス…いや、少し小さいからレッサーかな』


『でも、おら達より大きい』


『そうだな』


 アストル、オルト両名とも既に臨戦態勢に入っておりいつでも飛び掛かれる状態になる


『お前を倒したら丁度次の進化に行けそうだし、大人しく糧となってくれ』


『ちびオーガとヘンテコオークがこの俺に勝てると思ってるのか!』


 そういうや否やサイクロプスは肩に担いでいた丸太を思い切り振り下ろす、二人は左右に飛んで回避し瞬時に体勢を立て直す


 振り下ろされた丸太は地面に当たり土煙をまき散らす、それでもお構いなしに丸太を振り回すサイクロプス


『オラオラ、逃げ回ってんじゃねぇぞ虫けら共!!』


 何も言い返してこないアストル達に自分の怪力に恐れをなしたと勘違いしたサイクロプスはさらに煽り立てる


『どうした!避けてばかりで攻撃しないのか?怖くてできないのか!ガハハハッ』


 どんなに煽られてもアストル達は一切動じず冷静に相手を観察した、相手の弱点、攻撃のリズム、懐に潜り込む隙等を探し出していつでも動けるように我慢強く待った


『はぁ…はぁ…クソッ、ちょこまかちょこまか避けんじゃ…ねぇ!!!』


 スタミナが切れ苛立ったサイクロプスは力任せに丸太を振り下ろし地面に叩き付ける、そうすると当然先程以上に土煙が立ちサイクロプスをすっぽり覆う、その瞬間にアストル達は煙の中に自ら入りサイクロプスに接近する


 サイクロプスの足元に辿り着いたアストルとオルトは思い切り腰の入った拳を左右の足それぞれに叩き込んだ


『ぐがあああ』


 メキメキッと骨の砕ける音と共に体が崩れ落ちる、そこへ逃さず顔面に蹴りをくらわす、弱点であろう目玉を狙い蹴とばした頭は簡単に弾け飛んだ


 土煙の晴れたそこには無残にも両足を砕かれ口から上が弾け飛んだ巨大な死体が転がっていた


『ふぅ、案外楽に倒せたな』


『レベルMAXになったまた進化できる』


 そう言ってオルトがステータスを見せてくる、今回の戦闘でレベルMAXになったのは確かでステータス画面にも進化可能と表示されていた、アストルも自分のステータスを確認する


 名 アストル   種 オーガ

 Lv 50/50 (一時進化停止)

 HP:50000/50000 MP;65000/65000

 力:B 守:C+ 速:C+ 技:Ⅾ+ 魔:B-

【スキル】

 物理攻撃耐性(特)状態異常耐性(特)身体強化(特)

 フォース Lv5

【魔法】

 変化なし

【称号】

 変化なし

【加護】

 変化なし


 何故か自分にのステータスには進化出来ないと記されている事に驚きを隠せないアストルは何度もステータス画面を出したり消したりを繰り返して確認するのだった

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