第38話 肉体改造

 目下の脅威が無くなったアストル達はオルトの肥大化に伴いじっくりと鍛錬をすることに決めた


『まずは、進化したこの体に慣れる為に基本的な運動から始めよう』


『分かった』


 まず、腕立て、腹筋、スクワット、ランニングと軽く流す程度に行う、するとアストルは自分のこのオーガの肉体のスペックが大まかに分かってきた


『運動性能は馬鹿みたいに良いな、運動神経抜群ってこんな感じなんだろう、初めのレッサーゴブリンと比べると笑える程の違いだな』


 体に動き一つ一つで今までの物より優れているのが分かる、一番初めに転生したレッサーゴブリンの体がどれ程酷いのかが理解できた


『はぁ…はぁ…はぁ…』


『…大丈夫か?』


 体の性能が良く運動神経抜群のアストルとは対照的に案の定、運動機能全般に難があるオルトの体はこの軽い運動にも息が絶え絶えになっていた


『でもこれはお前の選んだ道だ、今更後には戻れない、最大限サポートはしてやるから諦めるなよ』


『はぁ…ふぅ…当然…頑張る!』


 息は未だ上がっているが瞳の奥に闘志を燃やしているのがアストルにはわかった


『いらないお節介だったな、よっしゃ地獄のダイエットの始まりだ!!』


『…おぉ!!』




 意気込んで始めたダイエットは辛く苦しい日々で1年も続いた、そんな1年の内容は毎日毎日オルトが血反吐を吐き気絶しても叩き起こして更に追い込み続け、何回も川を渡りかける地獄と言うのも納得の日々であった


 そんな日々を続ければ嫌でも痩せていった、重く垂れさがった腹は徐々にしぼんでいき逆に筋肉が今度は皮膚を押し上げていた、顔の輪郭も胴体と一体化していて分かり辛かったのが今は見事に分かれて見える


 最大の変化は手足が伸び見事な八頭身になった事だろう、もともとオークは普通の手足をしていたのだろう、肉に埋もれて分からなくなっていただけで


『この一年よく頑張った、あんなにぶくぶく太っていた体が嘘の様にいい体に仕上がった』


『ありがとう、こうなれたのもアストルのおかげだ』


『…もうこれはオークとは別物だろステータス確認したら種族変わってたりして』


『…変わってないみたい、ただ種族の横に”変異種”って書いてある』


『それはまた安直な…まぁ実際普通のオークと大きく違うし間違ってはないな』


『これからどうするんだ?』


『そうだな、レベル上げでも再開するか』


 風見謙吾と言う脅威は居なくなったがいつ奴以上の敵が現れるか分からないから気を緩める訳にはいかない、この弱肉強食の世界で何の不自由なく生きていく為にも強くなる必要がある


『とりあえずあと一、二回進化する事がこれからの目標だな』


『おう!』


 新たな目標を決め二人は森の奥に獲物を求めて進んでいった

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