第32話 ロード

「グギャッ!!」


 戦闘後で気を抜いていたアストルの耳に悲鳴が飛び込む、突然の事に驚きながらも悲鳴の方に視線を向けるとそこには地面に倒れるオルトとそのオルトの頭に何度も何度も棍棒を振り下ろして凶悪な笑みを浮かべるが居た


「死ね!死ね!死ね!!!」


 足で動かないように踏みつけながら頭だった場所を何度も殴りつけ笑っている、既に死んでいることは明らかなのに殴りつけるのをやめない


(…オルト?…人間?…何故?…どうして?)


 目の前の光景に驚き呆気にとられる、今まで一緒にいた相棒のオルトが殺され屍になった今尚なぶられ続けている事に混乱する


(あぁ、そうか…俺達は魔物で、人間にとっては敵でしかないんだ…)


 混乱の中ふと冷静になり状況が呑み込めてくる、目の前の惨状を理解してしまう


(だが…何故こんな目に合わなくちゃならない…オルトが何をした…)


 冷静になった事で今度はこの理不尽な状況に怒りが込み上げてくる


「グギャオ!!!(ふざけるな!!!)」


 込み上げた怒りで声を上げ槍を持ち邪悪な笑みを浮かべる男に攻撃を仕掛ける、しかし男は攻撃を易々と避けると蹴りをカウンター気味で合わせる


「おっと、危ぇなぁ!!」


「グフッ」


 アストルは軽々と吹き飛び木の幹にぶつかり地面に転がる、男はにやにやと薄ら笑いを浮かべてゆっくり近づいてくる


「やっぱゴブリンは雑魚モンスターだよなぁ~最初はあのクソ女に森の中へ飛ばされてムカついたがこう言う事なら大歓迎だわ♪」


 男は徐々に近づきながらぺらぺらと何か話している、アストルは立ち上がろうとするが思うように体が動かずその場に蹲る事しかできない


「このチートさえあれば余裕で生き残れるし逆にどんどん強くなって世界最強になれば俺様の国作って好きに女食いまくってやりたい放題しまくりじゃね?うはぁ俺様天才!いずれはあのクソ女もモノにしてヒィヒィ言わしてやるぜ…」


 男は気持ちの悪い顔で都合のいい妄想をして悦に浸っている、そんな男を見ながらある事に気が付く


 この男の風貌、容姿や衣服がアストルの…零治の良く知る現代日本人そのものだった、根元まで染め切れていない所謂プリン頭の頭髪、ジャラジャラと付け散らかってるピアス、凹凸の無いのっぺりとした顔、身に着ける衣服は日本の街中を歩いていそうなカジュアルな物、どれを見てもこの世界の物とは違っていた


(それにさっきからこいつが話してるの日本語じゃねぇか)


 ますます訳が分からなかった、何故日本人がここに居るのか、自分以外にこの世界に来ていたのか、他にも居るのか、何故この男は魔物じゃないのか、疑問が尽きないがしかし聞いたところでこの男が素直に教えてくれるはずもないと言う事だけは分かった


「さて、さっさとこの雑魚を殺して能力奪うか」


 男は蹲るアストルを足で蹴り転がし仰向けにする、そしてわざわざ屈んで首に手をやりそのまま締め上げる、今目の前には首を絞めながら嬉しそうに涎を垂らす男の顔がはっきり見える


(異常者かこいつ…そう言えばオルトを殴っていた時も嬉しそうにしてたっけ…)


 首を絞められながらも冷静に状況分析をするアストル、抵抗しようにも最初のカウンター気味の蹴りでやられており身動き一つできない


(ちょうどいいやただでやられるのは趣味じゃないお前の事見させてもらう【鑑定】)



 名 風見 健吾   種 ヒューマン

 Lv 13/80

 HP:5000/5000 MP;3600/3600

 力:E 守:E- 速:E 技:E 魔:E

【スキル】

 強欲 Lv5 気配察知 Lv1 絶論 Lv1 噛みつき Lv1 逃げ足 Lv1

【魔法】

 火(小)闇(小)

【称号】

 転生者 奪う者 異常者 殺戮者 乱暴者 変態 女神からの嫌悪 邪神の観察対象

【加護】

 邪神の祝福


(なるほどね…覚えたからな風見健吾…次に会う時を楽しみにしてる)


 薄れゆく意識の中怨敵の名前をしっかりと目に焼き付け次の邂逅に向け思いを馳せる


【対象の死を確認……ロードを開始します…】

【対象の死因“扼殺”と断定…】

【対象の行動パターンを分析…行動に沿うスキルを獲得します】

【集団戦闘を確認、スキル指揮(小)を獲得します】

【他者への指導を確認、スキル指導(小)を獲得します】

【道具の製作を確認、スキル工作を獲得します】

【窒息での死を確認、スキル息貯めを獲得します】

【一定以上の闘志を確認、スキルオーラを獲得します】

【セーブデータを確認……1と2を確認…2を選択をロードします……】

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