第31話 蜘蛛
薄暗い土の中、まどろみながらも目を覚ますアストル、隣ではいまだ眠るオルトの姿があった
『おいオルト、起きろ!』
『ん…う~ん…』
アストルの声に反応して起き上がるも目が明いておらず寝ぼけた状態なのは一目見てわかる
『ほらちゃんと目を覚まさないと怪我するぞ』
『う~ん、ケガ?』
まだ寝ぼけているオルトを気にしながらも魔法を発動して土の中から外に出る、流石のオルトも地面が動けば驚き目が一気に覚める
『飯にしよう、枯れ木とか集めよう』
『分かった』
それから枯れた木の枝や枯れ葉等の燃えやすい物を集めて焚火を灯す、昨夜と同様蛇肉を適当に焼いて食べる、やはり調味料が使われていない蛇肉が味気なく既に飽きつつある、そんなアストルを尻目にオルトは美味しそうにニコニコしながら頬張っていた
『さて、飯も食ったし出発するか』
『分かった!』
腹も膨れて気力十分なオルトは元気一杯の返事に微笑ましくも苦笑いする
他愛のない話をしつつオルトに色々教えていく、歩き方から始まり様々な体の動かし方を教えていく、素直なオルトは真面目に取り組みどんどん吸収していく、その成果で見違える程姿勢が良くなり身のこなしに無駄が減った
『大分良くなったな、次は戦い方を教える』
『分かった』
流石に歩きながらでは教えられないのでその場に泊まり教え始める、他人に教える事で自分にもプラスになるのは有名な話だがアストルにも当てはまり自分の戦闘技術にも改善点が見つかり互いに有意義な時間になった
『じゃ次は実戦で学んだ事をやってみよう』
『おう!』
二人は再び歩き始め獲物を探す、しかし幾ら森の奥に進んでも敵が出てこずやる気が削がれる、それからしばらく歩くとやっと次の獲物に出会う
その魔物は巨大な蜘蛛の姿をしていた、巨体に見合う大きな巣を作っており周囲には食料として別の魔物が糸で簀巻きにされていた
『気合い入れろよオルト、油断してると俺達もあんな風に簀巻きにされるぞ』
『分かった!』
元気よく返事をしながらオルトはアストルと逆方向へ回り込むように動く、アストルもオルト同様蜘蛛を中心にして一直線になるよう動く、二人の手には木と蛇の牙で作った簡素な槍が握られていた
『行くぞオルト、戦闘開始だ!』
『おお!』
アストルの掛け声と同時に動き出すオルト、二人で距離を詰め槍で攻撃する、しかし相手が何もせずただ攻撃を受けるはずもなく容易に躱されてしまう
オルトは慌てる事無く瞬時に方向転換して突撃を再び仕掛ける、逆にアストルはその場に残り魔法の準備に取り掛かる
森の中で火の魔法は使うのは危険なので除外され、風魔法と水魔法は周囲の被害が無駄に広がるのでこれも除外、よって使い勝手が良く周囲の被害も抑えられる土魔法が頻繁に使われる
「土壁」
蜘蛛の真後ろに壁を作り逃げ道を減らす、それでも壁にぶつかる事無く留まり冷静に状況を観察していた
『せいっ!』
「
「キシャァァァ!!」
オルトが横から槍を突き出し攻撃を仕掛ける、当然蜘蛛は攻撃を避けオルトとは反対側に飛ぶ、しかしそこへアストルが土魔法を合わせて地面から無数の棘を出す、それが見事に蜘蛛の腹に当たり風穴を開ける
『畳み掛けるぞ!』
『おう!』
二人で近づき中距離から槍で攻撃する、蜘蛛も堪らず攻撃してくるが腹に棘が刺さり身動きの取れない蜘蛛の攻撃など二人は余裕をもって避けられた
『あと少しだけど油断するなよ!』
『分かった!』
ラストスパート前に激を飛ばしオルトが答え終えるのとほぼ同時に最後の足搔きと暴れだす、事前に伝えていた事もありギリギリで離れられ事なきを得られた
しかし、最後の足掻きで蜘蛛の胴体が千切れ拘束が解かれる、当然蜘蛛も無事では済まないがこちらを道連れにしてやろうと気迫に溢れている、そこから最初に動いたのは蜘蛛の方で俊敏な動きで襲い来る
蜘蛛の攻撃を地面を転がる様に回避して攻撃直後の隙を突き手に持つ槍で蜘蛛の横っ面を思い切り殴りつける、思わぬ反撃にその場でたたらを踏む、その隙を逃す事無くオルトが続けて攻撃を加える
繰り返し繰り返しアストルとオルトが順番に攻撃をして時々来る蜘蛛からの反撃を冷静に避ける、この攻防を30分程続けるとようやく蜘蛛の動きが止まる
『ようやくか、随分としぶとかった』
『疲れた…』
流石のオルトも今の戦闘で相当の疲労が溜まった様でその場でへたり込む、アストルも予想以上の交戦で疲弊していた、忍び寄る陰に気付く事が出来ない程に…
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